SASグローバル調査:AIが保険業界を段階的に変革
データとAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下、SAS)は、Economist Impactと実施した調査レポート( https://www.sas.com/en/whitepapers/underwriting-the-future-the-role-of-artificial-intelligence-in-insurance.html )を発表しました。保険業界のリーダーは、人工知能(AI)が熱狂の段階から実稼働の段階へと進んでいることを示しています。生成AIなどの新興技術は業界に大きな変革を起こす段階には至っていないものの、生産性向上に寄与していることが明らかになっています。
保険業界のリーダーたちは、特にエージェンティックAI( https://www.sas.com/en_us/solutions/ai/agentic-ai.html )(高度なタスクをほぼ自律的に遂行可能なシステム)が担う重要な役割に期待しています。近い将来、保険会社では、引受業務、商品開発、請求処理などにおいて、人間とAIが協働するハイブリッド型の労働環境が実現すると予測されています。
マニュライフ社のグローバル最高分析責任者のジョディ・ウォリス(Jodie Wallis)氏は、次のように述べています。「保険会社は、従業員とAIエージェントが緊密に協働するハイブリッド型へと変化し、一部のAIエージェントは、人間の監督下でほぼ自律的に業務を遂行することになるでしょう」
AIは価値を創出する一方、利益拡大には直結せず
「Underwriting the Future: The role of artificial intelligence in insurance draws(未来を担う:保険業務におけるAIの役割)」は、世界各国の保険会社のリーダーを対象に実施した討論会や詳細なインタビューを通じて得られたインサイトを基にまとめられています。本レポートは、2月に発表された「Revealing the paths to 2040: Global insurance survey report(2040年への道を探る:グローバル保険調査レポート)」に基づいており、世界17か国500名以上の経営幹部を対象とした保険業界の未来像( https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2025/february/insurance-survey-2040.html )に関するアンケート回答も含まれます。
本レポートは、チューリッヒ・ノースアメリカ社、HDI Global社、東京海上社、マニュライフ社を代表する専門家の知見をもとに、AIによる生産性の向上、リスクモデリングの改善、グローバルな補償ギャップの解消につながるAIの可能性について、業界は慎重ながらも前向きな期待を抱いていることを明らかにしています。一方で経営幹部は、構造、文化、規制上の課題が残されていることを認識しており、本レポートでは、注目すべき3つのポイントを示しています。
1. AIのメリットは変革的より漸進的
従来AIは、引受業務や不正検出の分野で活用されてきましたが、最近は、生成AIの進化に伴い投資が拡大し、経営層の注目を集めています。経営幹部は、生成AIによってコーディング業務が30~50%効率化し、カスタマーサービスの合理化、サイバーリスクや気候リスクのリアルタイム分析が可能になったと述べています。しかし、業界全体での導入状況にはばらつきがあり、インシュアテック企業(特にサイバー保険分野において)がAI統合システムの活用で最も先行している一方、レガシーシステムに依存している企業は遅れをとっています。多くの保険会社は、未だAIを全社的に導入するのではなく、特定のユースケースに合わせて活用している段階にあります。
2. AIによる生産性の向上=即座のコスト削減とはならない
AIによる効率化は、必ずしも即座にコスト削減につながらず多くの企業は余剰リソースを新しいツールの開発や、請求処理を強化するために再投資を行っています。AIよりも人間が優れている分野(営業など)に関しては従業員への継続的な教育を行う必要がありますが、時間がかかり、即効性は低くなります。一方、包括的なエージェンティックAIプラットフォームを導入することで、ニーズの変化に合わせてAIエージェントを柔軟に適応させ、従来の長期的かつ大規模なソフトウェアプロジェクトへの依存を軽減することができます。AI投資は、今や競争上の差別化要因から、業界内での必須条件へと変わりつつあります。
3. 組織の機敏性は不可欠
AIを取り巻くテクノロジー、ガバナンス、規制は急速に変化しています。保険会社は、自社のシステムやプロセスを適応させ、チェンジマネジメントを優先する必要があります。特にグローバル企業は、国ごとに大きく異なる規制への対応が大きな課題となっています。
SASのプリンシパル・グローバル保険アドバイザーのトーステン・ハイン(Thorsten Hein)は、次のように述べています。「エージェンティックAIの能力について語ると、すでにあらゆる複雑な業務をこなせるかのような印象を抱いてしまいがちですが、現状はそうではありません。エージェンティックAIは、反復的でデータ集約的な業務を得意とし、特に他のエージェンティックAIと連携して活用すると非常に効果的です。一方で、複雑なリスクモデルの計算など、高度な業務では、依然として業界特化型ソリューションや人の専門知識との融合が不可欠です。1つだけ変わらないことがあります。AIにとって、これまでも、これからも『データが不可欠である』ということです。AIの可能性を最大限に引き出すためには、高品質なデータを利活用するだけではなく、他の関連情報やデータポイントと迅速且つ効率的に組み合わせることが必要になってきます」
今後の展望
AIがもたらす保険業界の未来はどうなるのでしょうか。業界は、AI技術の導入を加速させています。まだ革命とは言えませんが、各社は競争に遅れをとらないためにも、引き続き投資を行い、新たな活用方法を模索しています。
SASのプリンシパル・グローバル保険アドバイザーであるフランクリン・マンチェスター(Franklin Manchester)は、次のように述べています。「保険会社はAIの価値を認識しており、さまざまなユースケースにおいて試行錯誤を続けています。AI、特にエージェンティックAIは、多くの業務を自律的に、あるいは人の監督のもとで実行できるようになる可能性を秘めています。最終的には、サービスの迅速化、コスト削減につながり、従業員がより付加価値の高い業務に取り組めるようになることでしょう」
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*2025年9月18日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリース( https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2025/september/economist-ai-underwriting-future-insurance.html )の抄訳です。本プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。
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*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。