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メルシャン株式会社(社長 横山清)は、キリン株式会社(社長 磯崎功典)のワイン技術研究所、健康技術研究所と共同で、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールの二量体※1である「イプシロン-ビニフェリン」の肥満抑制効果を世界で初めて明らかにしました。この研究成果は2015年12月25日(金)に米国科学誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。
※1 同一の成分が二つ結合したものを「二量体」と呼ぶ。-ビニフェリンはレスベラトロールが二つ結合した化合物である。
以前から赤ワインに含まれる機能性成分としてレスベラトロール※2が知られていますが、同様に赤ワインに含まれるポリフェノールの一種である「イプシロン-ビニフェリン」については、これまで肥満に対する効果について明らかになっていませんでした。
当社は、今回の研究で「イプシロン-ビニフェリン」が高脂肪食により引き起こされる肥満を抑制することとともに、そのメカニズムがレスベラトロールとは異なることを明らかにしました。
※2 「赤ワインに含まれるポリフェノールの一種・レスベラトロールによる内臓脂肪蓄積抑制のメカニズムを解明」
(2015年6月26日「第127回 日本薬理学会近畿部会大会」で発表)
「赤ワインに含まれるポリフェノールの一種レスベラトロール配糖体による褐色脂肪細胞内の温度上昇効果を発見」
(2015年12月1日「第38回 日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会」で発表)
「赤ワインに含まれるポリフェノールの一種レスベラトロールの長期摂取による抗動脈硬化作用を確認」
(2015年12月2日「第88回 日本生化学会大会・第38回 日本分子生物学会大会合同大会」で発表)
●研究の概要
赤ワインに含まれている、レスベラトロール二量体である「イプシロン-ビニフェリン」の脂肪細胞に対する効果と、高脂肪食を与えたマウスへの効果を調べました。
●結果
「イプシロン-ビニフェリン」を脂肪細胞のモデルである3T3-L1細胞に添加したところ、脂肪細胞のマーカー遺伝子であるPPARγの発現が抑制され、脂肪の蓄積を低減させることが分かりました。
高脂肪食に「イプシロン-ビニフェリン」を含ませて与えたマウスでは、内臓脂肪の蓄積量が有意に減少することが分かり、肥満により生じる炎症も抑えられていました。
●考察
・今回の実験結果から、レスベラトロールの摂取が肥満に伴い脂肪細胞で活性化するヒストンアセチル基転移酵素(EP300)を制御することで、内臓脂肪の蓄積抑制と減少につながるのに対し、「イプシロン-ビニフェリン」は脂肪細胞のマーカー遺伝子であるPPARγの発現を抑制することで脂肪蓄積を抑制することが分かり、高脂肪食による肥満を抑制する効果があることが示されました。
<ワイン技術研究所について>
ワイン技術研究所は2016年1月1日に新設されました。当研究所はワイン・梅酒・焼酎で培った技術と、ビール・清涼飲料関連技術の融合により新しい価値創造につなげること、ワイン事業のさらなる成長につながる中長期視点での研究開発推進を目的に、メルシャンの商品開発研究所をキリンのR&D本部に機能統合したものです。今回の、赤ワインに含まれるポリフェノールの研究は、メルシャンが長年にわたり注目して行ってきた研究を継承したものです。
メルシャンは、今後もキリンのワイン技術研究所とともに研究を発展させ、さらなる商品・ブランド価値の向上につなげていきます。
【論文掲載の概要】
1.論文名:ε-Viniferin, a resveratrol dimer, prevents diet-induced obesity in mice.
2.雑誌名:Biochemical and Biophysical Research Communications (米国科学雑誌)
3.DOI番号:10.1016/j.bbrc.2015.11.047
4.著者 Kazuaki Ohara, Kaori Kusano, Sayoko Kitao, Takaaki Yanai, Ryoji Takata, Osamu Kanauchi