松村浩由(生命科学部・教授)は、大阪大学大学院工学研究科の藤田 純三博士後期課程3年生と、アメリカラトガース大学のDaniel S. Pilch准教授らとともに、薬が効きにくくなった耐性菌MRSAに効く薬を開発し、このほどオンライン総合科学誌「ACS Chemical Biology」に掲載された。
MRSAは、薬(抗生物質)を使いすぎた結果生まれた、薬が効きにくくなった耐性菌。薬が効きにくいために、この感染症の治療は患者の抵抗力に頼ることになる。したがって、抵抗力が落ちている患者に感染した場合に、この感染症は特に重症になることが知られている。
以前、本研究グループは新しいMRSA感染症の治療薬として、MRSAが持っているFtsZというタンパク質にくっつく薬を開発した。FtsZは、MRSAが増殖するときに働くタンパク質。薬がFtsZにくっつくとFtsZの働きがにぶり、結果としてMRSAは増殖できなくなる。MRSAが増殖できなくなるということはMRSAの死滅を意味し、実際マウスを使った実験によると、この薬はMRSA感染症に対してとても効果があった。しかし、この薬を使用し続けてみると、MRSAはこの薬にも耐性を持つようになってしまった。
そこでこの研究では、この薬が効かなくなったMRSAにも効く薬を開発した。さらに「古い薬がなぜMRSAに効かなくなってしまったのか?」「新しい薬がなぜ効くようになったのか?」を調べてみたところ「薬のやわらかさ」が重要であることがわかった。
本研究によりMRSAの耐性化の仕組みとその対策が明らかになったことから、今後、MRSA感染症に対する効果的な薬が開発されることが期待される。
本研究は、立命館大学、大阪大学、ラトガース大学と共同で行ったものである。
<発表論文>
●Structural Flexibility of an Inhibitor Overcomes Drug Resistance Mutations in Staphylococcus aureus FtsZ
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acschembio.7b00323
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