ヤマハ発動機販売株式会社は、7月2日にヤマハ発動機本社内YTAグローバルトレーニングセンターにて、「第9回Yamaha National Technician Grand Prix(ヤマハ・ナショナル・テクニシャン・グランプリ)」を開催し、YSP八戸の清野 貴裕(せいの たかひろ)さんが優勝しました。
ヤマハでは、“One to One Service(プロの整備技術でひとりひとりのお客さまとのより良い関係づくり)”を合い言葉に、「世界中のヤマハディーラーで、どこでも均一かつ高品質なサービスが受けられること」を理想に掲げ、お客さまの期待を超えるカスタマーサービスを実践しようと、独自の整備士教育プログラム「ヤマハ・テクニカル・アカデミー(YTA)」を2001年から全世界で展開。世界24拠点・3万4,600人がYTA認定整備士としての資格を有し、各国地域で活躍しています。そしてYTA教育プログラムの集大成として、2002年より2年に1度行っているのが、「Yamaha World Technician Grand Prix(ヤマハ・ワールド・テクニシャン・グランプリ:ヤマハ世界整備士コンテスト)」です。日々磨き上げているサービス技術力を、お客さま視点で客観的に厳しく審査し、世界No.1のヤマハメカニックを決定する大会です。
その「Yamaha World Technician Grand Prix」に日本代表として出場する国内のヤマハメカニックNo.1を決定する大会が、「Yamaha National Technician Grand Prix」です。コロナの影響により、2018年以来7年ぶりに開催した今大会は、YTAの最高位資格“ゴールド”を国内で導入しているのがヤマハモーターサイクル専門店「YSP(YAMAHA MOTORCYCLE SPORTS PLAZA)」のみであることから、YSPのメカニックのみなさんによる予選大会を2月に実施。学科競技を行い、その成績上位16名が今回の「Yamaha National Technician Grand Prix」に出場し、整備実技と接客応対の競技を行いました。
学科・実技・接客の3競技で総合トップの成績を収め優勝したYSP八戸の清野さんは、本年11月19日に行われる「Yamaha World Technician Grand Prix」に日本代表メカニックとして参戦します。
Yamaha National Technician Grand Prixに参戦したYSPメカニックのみなさん
第9回Yamaha National Technician Grand Prix概要
「第9回Yamaha National Technician Grand Prix」開催に先立ち、
その予選大会を2月に実施。「掴み獲れ!ナンバーワンYSPメカニック」のスローガンの下、YTAの最上位資格“ゴールド”を有するYSP全77店89名の整備士のみなさんが、学科競技に挑みました。二輪車整備士としての幅広い専門知識やお客さまと接する際の心構えはもちろん、先行車に追従走行する機能「ACC(Adaptive Cruise Control)」や変速操作を自動化する電子制御シフト機構「Y-AMT(Yamaha Automated Transmission)」など、ここ最近のヤマハ車に新たに搭載された最新技術についての問題をはじめ、電子制御化が進むヤマハ車を素早く正確に診断できる「ヤマハダイアグノスティックツール(YDT)」、“液体パーツ”と位置づける純正オイル「YAMALUBE」についてなど、ヤマハバイクの専門店「YSP」として熟知しておくべきヤマハ車に特化した内容も多数出題されました。
この学科競技の成績上位16名が「Yamaha National Technician Grand Prix」」に出場。
車両を点検・修理する実技と接客の競技を行いました。実技競技では、故障診断ツール「YDT」を使ってフラッグシップモデル「YZF-R1」の故障を論理的に探求する競技と、原付二種スクーター「AXIS Z」の部品交換と完成検査を45分内に行うタイムトライアル競技を実施しました。いずれも決して難しい内容ではありませんでしたが、経験やノウハウを活かしながら基本に則って限られた時間内に冷静・的確に状況を判断し、素早く正確な整備作業を行うことに加えて、YTAゴールド資格にふさわしい、店舗を預かる立場のメカニックとして、お客さまからお預かりした車両に対する責任と気配りまでもが問われました。
一方接客競技は、保証修理のお客さまをお迎えしている想定で行われました。
どんな箇所にどのような症状がいつからどれくらいの頻度で発生しているのかなど、お客さまから必要情報をしっかり聞き出して報告ツールに漏れなく入力するとともに、その箇所を修理し終わって引き渡す際のお客さまへの対応が審査されました。
実技・接客競技ともに、単なる技術力の高さや経験値、知識量だけでは勝ち抜けません。大勢のヤマハ社員が入れ替わり立ち替わり見守る特殊な環境の下、限られた時間内で、お客さまにいかに納得して満足いただけるのか、YTAゴールド資格のYSPサービスメカニックとしてヤマハブランドを高める総合力が問われる内容となりました。
第9回Yamaha National Technician Grand Prix上位入賞者コメント
優勝YSP八戸・清野 貴裕さん
「メカニックとして16年、17年とやってきました。
今回Yamaha National Technician Grand Prixへの挑戦2回目にして、優勝することができて本当に嬉しい。報われる思いです。どんな問題が出されるのか全くわからなかったので、最新モデルのマニュアルを全て読み込んだり、お客さまに協力いただいて愛車をお借りしながら、YDTを使って最新機種について学んだり、できうる限り勉強して今回の大会に臨みました。
緊張していた割には身体が動いて実技競技を行えたものの、普段の実力を出し切れず、やりきれなかった部分への悔しい気持ちがありましたし、接客競技でパソコンに情報入力する際、緊張のあまり手が震えて上手くタイピングできなかったり、何をどこまで説明したのか頭が白くなってしまう場面もあって、優勝できるとは思ってもみませんでした。
優勝への実感がまだわかず、上手く言葉が出てきませんが、実は実技競技に集中しているうちにどんどん楽しくなってきちゃって、“やっぱり整備って面白い!”と改めて感じたので、世界大会へのチャレンジを通じて、整備士の楽しさ、魅力を広く色々な人に訴求したいですね。
また、今回の競技を通じて色々気づくことがありました。店に戻って他のスタッフと今回の経験を共有することで、お客さまに対してサービスの満足をさらに高めて行こうと思います。
日々常に何事も勉強です。日頃の業務を通じて、さらに学べることはどんどん習得し、自分に不足しているものを探して補い、日本を代表して世界大会でも優勝目指してがんばります。みなさん、引き続き応援、よろしくお願いします」
2位YSP千葉中央・斎藤 惇平さん
「Yamaha National Technician Grand Prixへは、初めての参加です。
めちゃくちゃ緊張しました。いざ競技が始まると余裕がなくなって平常心でいられず、いつもはしないミスをおかして時間を取られてしまったり、一つのトラブルならなんてことはないけれど、複合的なトラブルを解決するには、時間が十分でなかったりと、表彰台に立てると思っていませんでした。
2位を獲得して、今いろんな感情が湧き起こっています。参加するからには優勝目指して臨みましたので、とにかくまず悔しい。でも今回の大会に参加している皆さんと1日半行動を共にしてきた中で、清野さんが優勝したことは、本当に嬉しいし心から祝福を送ります。
普段の業務から、今回の競技のようにスピーディに的確に修理できるよういっそう励み、次回、世界大会出場、そして世界No.1のヤマハメカニックを目指し、明日からまたチャレンジャーとして一からがんばります」
3位YSP東淀川・三谷 明生さん
「3位になることができて、ものすごく嬉しい反面、
この表彰台に立った瞬間、すごく悔しい思いが湧き上がってきました。先ほど結果が分かる前に、次回参加したいか否かを聞かれ、今回ものすごく緊張して胃が痛くなるほどだったこともあり、どうかなぁと迷った答えをしたんですけど、これだけ悔しいんだったら優勝目指して次回も挑戦しようと思います。2年後、再びトライしてリベンジします。
実技ではもう少し時間に余裕があれば、ああしたかった、こうしたかったと思う部分があり、時間内にやりきれなかったことへの悔しさがあります。お客さまの車両に向き合う際には、限られた時間は守りつつも、速さよりお客さまが気持ちよくバイクに乗れるようしっかり丁寧にサポートすることが重要だと思っています。とは言え、今後は今日くらいの緊張感を常に持って、お客さまの愛車修理や接客に臨んでいきたいですね」
Yamaha National Technician Grand Prix大会会長
ヤマハ発動機販売株式会社代表取締役社長 松岡 大司
「お客さまのニーズが多様化し、最新モデルは電子制御化によって診断・修理作業が複雑化する昨今、『モーターサイクルを購入するなら専門店で』と考えるお客さまが増えています。また、二輪販売店に求められる役割は大きく変化し、特に専門店への期待値は年々高まる傾向にあります。
こうした状況を受け、当社ではこれまで以上に高い技術力と応対品質でヤマハ車オーナーの満足度と信頼を高めようと、2024年からヤマハスポーツバイク販売のトップチャネルであるYSPに、YTAの最上位資格である“ゴールド”を導入しました。そこで今回のYamaha National Technician Grand Prixは、国内No.1のYSPメカニックを決定する大会として開催。日頃から講習会などで顔を合わせる機会の多いYSPのメカニックの皆さん同士だからこそ、互いに切磋琢磨しながらも負けたくない気持ちがいっそう高まってか、会場では緊張感みなぎる最高レベルの競技が繰り広げられました。
モーターサイクルは機械ですので、経年変化は避けられず、時には不調をきたすこともあります。それに対して、『このような症状に対し、このように対応しました』とお客さまに丁寧に説明し、納得していただくことで、お客さまと販売店、ひいてはお客さまとヤマハとの信頼関係が深まると考えています。特にYTAゴールド資格では、『なんとなくブレーキの効きが悪い気がする』といったお客さまの感覚的な声に真摯に耳を傾け、お客さま一人ひとりに合わせた柔軟な対応をすることに重点を置いています。それだけに今回の接客競技では、まさにYTAの基本理念である“One to One Service”を体現するメカニックの皆さんの姿を見ることができました。また実技競技では、キビキビ作業を進めるメカニックのみなさんの姿に、頼もしさと安心感を覚えました。
今後は、応対時の困りごとや成功事例のノウハウ・情報を共有するほか、今回のような大会も一つのきっかけとしながら、YSPのネットワークをさらに強化し、ヤマハ全体のサービスレベル向上を継続的にサポートしていきたいと考えています。そして、メカニックの皆さんの社会的地位を向上させ、日々の業務へのモチベーションを高めることで、お客さまにとっても『大切な愛車のことならYSP、ヤマハなら安心だね』とお任せいただける環境づくりにつなげたいと思います」