【杏林大学】目撃情報の報告が、誤った人物同定の確信度を高めてしまう可能性を実証― より良い司法プロセスに向けた示唆 ―

杏林大学

三浦大志講師(杏林大学保健学部臨床心理学科)・松尾加代准教授(大阪河崎リハビリテーション大学)は、目撃情報を紙媒体で報告する手法である目撃者遂行型調査(SAI)が、犯人でない人物を犯人と判断した際の確信度を高めてしまう可能性を示しました。この研究成果は、より良い司法プロセスの実施に向けて示唆を与えるものです。本研究内容は、Legal and Criminological Psychology誌に掲載されています。 掲載URL: https://doi.org/10.1111/lcrp.12311 概要  三浦大志講師(杏林大学保健学部臨床心理学科)・松尾加代准教授(大阪河崎リハビリテーション大学)は、目撃情報を紙媒体で報告する手法である目撃者遂行型調査(SAI)が、犯人でない人物を犯人と判断した際の確信度を高めてしまう可能性を示しました。この研究成果は、より良い司法プロセスの実施に向けて示唆を与えるものです。本研究内容は、Legal and Criminological Psychology誌に掲載されています。 掲載URL: https://doi.org/10.1111/lcrp.12311 研究のハイライト ・ 自記式の質問紙であるSAIは、豊富な目撃情報を得られることが知られています ・ 本研究は、SAIを使って報告した後の人物同定*1の正確性について、初めて検討しました ・ SAIを行うことが人物同定の正答率を低下させることはありませんでした ・ 一方で、SAIは誤った人物同定の確信度*2を高めてしまうことが明らかになりました 背景  有用な目撃情報を提供することや人物同定を正確に行うことなど、目撃者が事件の捜査に重要な役割を果たすケースは数多くあります。目撃者遂行型調査(Self-Administered Interview: SAI)は、目撃者が目撃した内容を自分で書いて報告する質問紙であり、効果的に豊富な目撃情報を得られることが知られています。しかし、SAIを使って報告を行った目撃者が人物同定も行った場合、どのような結果になるのかは明らかにされていませんでした。 研究概要  本研究では、SAIを行った後の人物同定の正確性について検討しました。164名の実験参加者は、まず架空の事件のビデオを視聴しました。次に、SAI群はSAIを用いてビデオの内容を、統制群は自由記述で授業の内容を思い出しました。その後、ビデオの中の犯人を6名の写真から選択する形で人物同定を行いました。分析の結果、SAI群と統制群で人物同定の正答率に違いはありませんでした。つまり、SAIを行うことが人物同定に悪影響を及ぼすことはありませんでした。しかし、犯人を選択せず誤って別の人物を選択してしまった場合の確信度は、統制群よりSAI群の方が高くなりました。この結果は、SAIを行った後に人物同定を行うと、誤った選択であるにも関わらず高い確信度を持ってしまう可能性があることを示唆しています。 研究の意義  本研究は、SAIが誤った人物同定をした場合の確信度を高めてしまう可能性を明らかにした初めての研究です。人物同定の確信度は実際の捜査や裁判でも考慮されることがあるため、これが冤罪に繋がる可能性があります。SAIを行った後の、ひいてはどのような形式であれ、目撃情報を報告した後の確信度の評価は慎重に行う必要があることを示した点に、本研究の意義があります。なお、本研究結果は、SAIの実施自体に疑義を呈するものではありません。SAI群と統制群で人物同定の正答率に違いが見られなかったことから、SAIを行った目撃者がのちに人物同定を行うことは問題がないと考えられます。 掲載論文 発表雑誌名 Legal and Criminological Psychology 論文タイトル The self-administered interview does not impair identification but distorts its confidence 著者 Hiroshi Miura1*, Kayo Matsuo2 著者(日本語表記) 三浦大志1*, 松尾加代2 *責任著者 所属 1. 杏林大学保健学部臨床心理学科,2. 大阪河﨑リハビリテーション大学言語聴覚学専攻 用語の解説,注釈 *1 写真等によって人物を提示され、その人物が目撃した人物かどうかを回答する手続きです。近年では、複数の人物が提示されるラインナップ手続きが行われるケースが増加しており、本研究でもこの手続きを用いています。目撃者による人物の誤同定は冤罪に繋がる可能性があるため、人物同定の正確性の向上は重要な課題です。 *2 自分の判断にどの程度確信があるか、目撃者が回答します。実務場面においても、確信度の高い人物同定の結果を重要視するなど、目撃者の確信度が参考にされる場合がしばしばあります。そのため、誤った人物同定の確信度は低い方が望ましいと考えられます。 ▼本件に関する問い合わせ先 杏林大学保健学部臨床心理学科 講師 三浦 大志(ミウラ ヒロシ) 住所:東京都三鷹市新川6丁目20−2 TEL:0422-47-8000(代表) メール:hmiura [ここに@] ks.kyorin-u.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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