飲料業界『社会課題対応研究会』- 持続可能な社会の実現に向けた新たな取り組みについて
物流・容器包装の分野で新たな協働施策を検討開始
アサヒ飲料株式会社(代表取締役社長:米女太一)、株式会社伊藤園(代表取締役社長:本庄大介)、キリンビバレッジ株式会社(代表取締役社長:井上一弘)、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社(代表取締役社長 最高経営責任者:カリン・ドラガン)、サントリー食品インターナショナル株式会社(代表取締役社長:小野真紀子)の清涼飲料5社は、昨年11月に『社会課題対応研究会』を正式に発足させ、物流2024年問題、温室効果ガス(以下、GHG)排出量削減や食品ロス問題などの社会課題について幅広く議論を重ねています。特に、環境負荷低減や持続可能な社会の実現に向けた社会的責任が高まる中、飲料業界として、従来の枠組みを超えた業界横断的な協働を通じて、容器包装などの資材や物流分野における課題解決と、食品ロス削減など環境負荷低減の両立を目指しています。今後、以下の通り、広く社会課題に対応していくための議論・研究を進めていきます。
| 【今後の検討テーマ】 ■納品時賞味期限の緩和(製造ロット※1の逆転)<物流2024年問題改善・食品ロス削減> 製配販※2の取引では製造ロットの逆転が起きないよう、日々製造ロット合わせのための輸送を行っていますが、その輸送が叶わない場合、商品が店頭に並ぶ前の段階で食品ロスが発生してしまいます。今後、物流2024年問題で更なるトラックドライバー不足が懸念されており、配送に影響を及ぼす可能性があるため、清涼飲料のように賞味期間が長い商品においては、納品ルールが緩和されることで、製配販全体で物流2024年問題、食品ロス問題の改善に寄与できると考えています。本研究会による調査※3では、賞味期限(又は消費期限)を気にする人は精肉・牛乳など日配品で約6割~8割に対し、加工食品では約1~2割という結果となっています。特に、ペットボトル飲料は、賞味期限表示がないアイスクリームと同等の回答結果となっていることに加え、店頭で1か月の賞味期限逆転が確認されても9割近くの人が購入すると回答していることから、消費者の購買行動への影響は限定的と推察されます。今後、本取り組みに賛同いただいている農林水産省と情報交換を実施するほか、流通企業様とともに日付逆転品の納入受入に向けた運用テストと店頭調査を実施するなど、具体的に日付逆転品のルール緩和に向けた取り組みの検討を進めます。尚、本活動に賛同いただいている農林水産省からのコメントは添付資料(別紙)を参照ください。 ※1 同一賞味期限のロットのこと ※2 製造(製)、流通(配)、小売(販)のこと ※3 賞味期限に関する意識調査 2025年 ■更なる物流負荷改善 <物流2024年問題改善> 本研究会に参加する各社は、本年5月に発表した通り※4、同業他社や異業種企業と往復輸送、共同配送などに取り組んでおりますが、今後も輸送・配送・倉庫における更なる物流負荷軽減策を検討していきます。 ※4 飲料業界『社会課題対応研究会』活動報告 物流2024年問題の改善に向け、待機時間・荷役作業を削減 (2025年5月29日配信) ■ペットボトル・キャップの軽量化 <GHG排出量削減(およびプラスチック使用量削減)> 欧州を中心に広く使用されている、従来品より飲み口部の長さを短くしたペットボトルおよびキャップについて、日本ならではの品質とユーザビリティを確保した仕様に進化した形での市場導入を目指し、研究開発および導入の検討を開始します。従来のペットボトルを1本あたり約2グラム削減した新軽量化規格のペットボトルに置き換えた場合、約5万tのペットボトル樹脂使用量および約10万tのGHG排出量の削減を見込んでいます※5。 ※5 日本国内の全てのペットボトルが軽量化統一規格となった場合のポテンシャル ■容器包装資材の効率化 <GHG排出量削減> バリューチェーン全体でのGHG排出量の削減に繋げるため、キャップ、カートン、ラベル、ペットボトル(リサイクルペットボトル、ラベルレスペットボトルを含む)などの容器包装資材の効率化の検討を開始します。 ■サプライヤー企業との再エネ利用促進 <GHG排出量削減> サプライヤー企業の建物などに設置された太陽光パネルによって発電された電力のうち、サプライヤー企業が自家消費しない、余剰となった電力分の非化石証書の購入が可能となる新たなスキームの構築に向け、検討を開始します。本スキーム構築により、サプライチェーン全体での再エネ電力使用を推進することでGHG排出量削減に繋げます。(今回、再エネ利用促進テーマについては本研究会の枠組みを超え、サッポロビール株式会社も検討に参加します。) |
さらに、本研究会として農林水産省など関係省庁や異業種の物流研究会との情報交換や協議の場を持つなど、個社単位では解決が難しい社会課題を各方面と協働することで改善に繋げるべく活動を続けています。本研究会内においても引き続き、広く社会課題に対応していくための議論・研究を行っていきます。
今後も我々5社は、環境への配慮を怠らず社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現に向けた事業活動をして参ります。
添付資料(別紙):
検討テーマ「納品時賞味期限の緩和(製造ロットの逆転)」に関して
①「賞味期限に関する意識調査」について
② 活動に賛同いただいた農林水産省からのコメント
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添付資料①:「賞味期限に関する意識調査」について
当研究会にて、食品を購入する際に賞味期限(又は消費期限)を気にするお客様の割合を調査しました。精肉や牛乳などの日配品、お菓子やパンなど、ペットボトル飲料以外の食品と関心の差についても調査しています。また、賞味期限の日付が逆転したペットボトル飲料がお客様にどのような印象を与え、購買行動に影響するかを検証しました。
調査対象 :15~69歳の男女
調査地域 :全国
調査方法 :インターネットリサーチ
調査時期 :2025年9月19日(金)~ 9月22日(日)
有効回答数 :n=2,670
主に、日配品と加工食品で「とても気にする」「やや気にする」と回答した人の割合は大きく分かれます。また、ペットボトル飲料と缶飲料は、賞味期限表示がないアイスクリームに次いで、気にしている人の割合が少ないことが分かりました。
さらに、「賞味期限/消費期限をとても気にする」と回答した人の割合は、賞味期限が長い加工食品で3.6%~5.3%と1割に満たないことが分かりました。特に、缶飲料ではアイスクリーム以下、ペットボトル飲料ではアイスクリームと同程度と、ペットボトル飲料と缶飲料は「賞味期限/消費期限をとても気にする」と回答した人の割合が特に少ないことがわかりました。
他の食品と比較し、賞味期間が長いペットボトル飲料においては1か月程度の賞味期限の逆転があっても9割近くのお客様が購入すると回答しました。以上のことから、ペットボトル飲料においては、賞味期限の日付逆転がお客様の購買行動に与える影響は限定的と考えられます。
添付資料②: 活動に賛同いただいた農林水産省からのコメント
| ■農林水産省のコメント 新事業・食品産業部企画グループ 物流生産性向上推進室 食品ロス・リサイクル対策室 食品産業の持続可能な発展に向けて好事例となるような、社会課題対応研究会における飲料5社での連携の取組に感謝するとともに、ますますの進展を応援しています。 食品産業はこれまで、消費者に豊かで多様な食生活を日々途切れることなく提供するため尽力し、非常に高いサービス水準を実現してきました。一方で、人口減少・少子高齢化の中で社会を維持発展させていくため、省力化の要請が一層高まっている昨今においては、より少ない労力で効果を出せるように、生産から流通、消費までの関係者でサービスのあり方、必要な機能と評価される価値とを見直すことも必要になるものと思われます。本年の通常国会で成立した食料システム法では、本年10月から、持続可能な供給に資する食品等事業者の取組に対する認定制度を開始するとともに、来年4月以降は、飲食料品等全般を対象に、売り手・買い手双方の事業者に対し、商慣習の見直し等の提案があった場合には検討・協力する等の努力義務が課せられます。農林水産省では、食料システム法等に基づき、サプライチェーン全体での商慣習の見直しなど、食品等の持続的な供給に向けた取組を推進・支援していくこととしています。 社会課題対応研究会において、物流の効率化や食品ロス削減等による環境負荷の低減に資する賞味期限表示のあり方の見直しに向けて、現状起きている非効率を見える化し、メーカー間や卸・小売との協議を進め、見直しの影響を受ける消費者側の受け止めについてもアンケートでの把握に取り組まれたというのは、まさにこの流れに沿ったものであり、成果を期待しています。 |
今後も『社会課題対応研究会』は、日付逆転品の納入受入に向けた運用テストや店頭調査などを実施し、具体的な日付逆転品のルール緩和に向けた取組の検討を進めます。
