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昭和女子大学(理事長・総長:坂東眞理子、東京都世田谷区)で11月9・10日に開催する秋桜(コスモス)祭で、歴史文化学科松田忍准教授・13名の歴史文化学科生からなる「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」による企画展示「被爆者の『発見』」を行います。
原爆体験は戦後長らく、被爆者や家族が見聞きしたことや、身近で話したことに留まる個人的体験であり続けました。しかし戦後30年を経て実施された被爆者調査を契機に、原爆体験の言語化・共有がされ、国内外へと広く発信する「被爆者の『発見』」に至りました。本展示では、「発見」に至るプロセスを論じ、「発見」が戦後史に与えた意義について考えます。
▼ 「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」とは
歴史学の知見を活用しながら、史料を解読して組み立てた歴史像を社会に発信することで、次世代へと継承するプロジェクトです。被爆者運動史料については、2013年に史料整理から取り組んできました。現在は昭和女子大学人間科学部歴史文化学科4年1名、2年6名、1年6名が参加しています。
▼ 被爆者の「発見」とは ― 強い痛みを伴う過去を「歴史」として直視する勇気ある営み
被爆者運動が盛り上がりを見せる中、1978年の最高裁判決を受けて厚生労働省が「原爆被爆者対策基本問題懇談会」を設置。法学関係の有識者が集い、原爆被害のうち放射線被害は特別な被害とみなし、生命・身体・財産といった大切なものを失ったことについては他の空襲同様の「一般の犠牲」と考えられ、国民はひとしくこれを受忍すべきという結論が出ました。これらを受忍できるものではないと感じる被爆者の意志が1985年の「原爆被害者調査」へとつながりました。
「原爆被害者調査」の質問項目は1977年の聞き取り調査の経験に基づき作成されました。中には被爆者の心をえぐるような厳しい設問や選択肢も含まれており、調査に対して苦しみを覚える被爆者もいました。それでもなお、この調査に対し1万3179名もの被爆者が回答を寄せたことで、原爆体験が広く共有され、言語化されました。まさにこのことが被爆者の「発見」であり、被爆者同士が被爆の意味を語りあい、原爆体験を日本に世界に発信していく原動力となったのです。そして、強い痛みを伴う「過去」を「過去」として葬り去らず、「歴史」として直視して認識の俎上にのせる勇気ある営みであったとプロジェクトチームは考えています。
※担当教員:松田 忍 歴史文化学科准教授
専門は日本経済史(キーワード:新生活運動、農会、戦後史)。担当科目は「日本近現代史」「日本史演習」。「日本における「生活国家」論の潮流とその展開―1930年代~1950年代―」(『社会経済史学』83(4)2018年)「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)関連文書の概要」(『学苑』935号2018年)をはじめ論文多数。近著に『ブックレット 近代文化研究叢書11 雑誌『生活』の六〇年:佐藤新興生活館から日本生活協会へ』(昭和女子大学近代文化研究所)『系統農会と近代日本 ――1900~1943年』(勁草書房)など。
【期 間】 2019年11月9日(土)、10(日) ※昭和女子大学学園祭期間 ※各日10:00~16:00まで
【会 場】 昭和女子大学 1号館 3階 3S03教室(東京都世田谷区太子堂1-7-57)
【企画・出展】 「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」
(訂正)会場名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(2019/11/06 09:50)
▼本件に関する問い合わせ先
昭和女子大学 広報部
TEL:03-3411-6597
メール:kouhou@swu.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/