2020年度 日・米・欧の社長・CEO報酬水準比較~報酬水準日米格差13倍に広がる、日欧差は3.8倍に~
あわせて2020年3月~2021年5月までの、日本国内における役員報酬減額の最新状況調査も発表
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:永田高士)は、日本および米国・英国・ドイツ・フランスの計5ヶ国の企業の社長・CEO報酬の実態調査を実施し、その結果を発表します。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年3月~2021年5月にかけて役員報酬を減額した企業に関する調査結果についてもまとめましたので、あわせて発表します。【日本・欧米の社長・CEO報酬水準調査結果】
日本の社長・CEOの報酬総額(対象企業は下表記載)の中央値は、1.2億円(前年比▲6%)であった。これに対して、米国は15.8億円(前年比▲2%)と各国の中でも突出した水準となり、日米格差は前年の12倍から13倍へと広がった。欧州では英国で、3.3億円(前年比▲34%)、フランスでは3.7億円(前年比▲18%)、ドイツでは6.9億円(前年比+1%)となっており、日欧差は3.8倍となった。新型コロナウイルス禍で、報酬総額はドイツを除き、前年に比べると各国で減少した。特に英国・フランスでは、昨年度から新型コロナウイルスによる報酬減額が見られたが、今年度は業績の低迷・配当減に伴う影響により、賞与・株式報酬の支給削減が相次ぎ、変動報酬が大きく落ち込んだ。【図1】
【新型コロナウイルスにおける役員報酬減額に関する調査結果】
新型コロナウイルスの影響により、役員報酬を減額する企業が増加している。2021年5月20日時点では、333社が経営トップの役員固定報酬の削減を実施。中でも外食等の小売業(80社)、もしくはエンターテインメント関連を中心とするサービス業(78社)は、リーマンショック時と同等に減額開示を行う企業が多い【図2】。また、左記2業種の役員報酬の削減件数は、任意開示を行った上場企業全体の5割弱を占めている。【図3】
経営トップの固定報酬減額率は、「30〜40%未満× 3 カ月減額」とする企業が最も多い【図4】。
金融危機時との比較
新型コロナ危機を受けた役員報酬の減額開示ペースは、5月20日時点では2008年のリーマンショック時と比較して300社強に留まっている。前年度の7月時点では同程度のペースであり、リーマンショック時の開示数を超える可能性も考えられたが、19週を境目に差が開く結果となった【図5】。
【調査結果へのコメント デロイト トーマツ グループ パートナー 村中靖】
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うCEO報酬への影響は、日米欧各国の感染対策への取り組みやビジネスによって異なる結果となった。とりわけ英国・フランスについては、ロックダウン等の影響や小売り・消費財ビジネスが多いことから業績が低迷し、昨年対比で報酬減額が特に顕著であったといえる。他方、米国・ドイツ・日本では、経済への影響は大きいものの、テック系企業を中心に業績を伸ばした企業も多くあり、CEO報酬(中央値)としては微減に留まっている状況だ。
一部の米英企業においては、従業員の賞与が大幅に削減されたにも関わらず、CEOの賞与・株式報酬の算定基準・期間を変更することにより、本来減額されるはずの変動報酬が限定的な減少としている企業も見受けられる。報酬委員会の判断を巡って、議決権行使助言会社から「セイ・オン・ペイ」に対する反対の声も出ている状況だ。コロナ禍で格差が広がる中、役員報酬決定の妥当性に関する議論・開示要請は更に高まっていくと見込まれる。
日本においては、調査結果の通り、同様の企業規模(中央値)で比較した場合、依然として欧米の報酬水準とは大きな差がある。また日本の報酬構成における固定報酬・変動報酬の比率は、当社サーベイの調査結果では、固定報酬は欧米との比較で依然として57%と高い。2021年3月の会社法改正、2021年6月の改訂版コーポレートガバナンス・コードを受け、日本企業の役員報酬ガバナンス・開示は更に進化することが予想される。引き続き、『役員報酬サーベイ(2021年度版)』では、日本企業の報酬水準・報酬構成の変化を追っていきたい。
日本における役員報酬の減額は、昨年に引き続き、手元資金の確保や経営責任の明確化、一時帰休等を経験した従業員との痛みの共有が主な理由となっている。緊急事態宣言やまん延防止措置等の影響を受け、サービス・小売業を中心に企業業績への深刻な影響は続いており、その結果を反映したものといえよう。一方で新型コロナウイルスワクチンの接種で先行する米国・英国等では、外出自粛や移動規制、休業要請といった規制を続々と撤廃しており、企業業績は急速な回復傾向にある。日本でもワクチン接種が進展することで、企業業績の回復、ひいては従業員の給与・賞与の正常化や役員報酬の減額措置が改善していくと期待したい。
<役員報酬サーベイ(2020年/21年度版)について>
2002年より実施している『役員報酬サーベイ』は、日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度の導入およびコーポレートガバナンスへの対応状況の実態をまとめている日本最大規模の調査です。2020年度版は2020年6月~8月にかけて三井住友信託銀行株式会社と共同で実施し、東証一部上場企業を中心に954社から回答を得ました。なお2021年版サーベイは、10月初旬頃に報告書をご提供する予定としています。
調査期間:2020年6月~2020年8月
調査目的:日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度やガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況等の現状に関する調査・分析
参加企業数:954社(集計対象役員総数 17,720名)
上場企業902社(うち東証一部656社)、非上場企業52社
参加企業属性:製造業434社(うち医薬品・化学93社、電気機器・精密機器93社、機械71社等)、非製造業520社(うちサービス104社、情報・通信99社、卸売84社 等)