シュローダー、日本を含む世界の投資家2万3千人以上を対象とした意識調査結果を発表
コロナ禍でサステナビリティに関する課題の重要性が高まるも日本でのサステナブル投資の認知はもう一歩、サステナブル投資の拡大には投資リターンの実績が求められる
シュローダー(本社:英国 ロンドン)は、個人投資家の投資動向や投資意識を把握することを目的に「シュローダー・グローバル投資家意識調査2021」を実施し、サステナブル投資に関する調査結果を発表しました。本調査は、世界33の国/地域の2万3千人(うち日本1,000人)を超える個人投資家を対象に、オンラインで行いました。今回の発表では、サステナブル投資に対する世界の投資家の意識や取り組み姿勢に注目しています。本調査では、新型コロナウイルスの世界的流行により生活習慣や常識が一変する中、投資家にとって環境問題や社会的課題の重要性がコロナ前に比べて高まったことがわかりました。また、更にサステナブル投資が拡大するためには、投資リターンが向上するという実績が求められていることも明らかになりました。
※各調査データの詳細は以下のURLをご参照ください。
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/insights/global-investor-study/2021-findings/sustainability-hub/
<調査結果概要>
コロナ禍でサステナビリティの重要性が高まる
世界の投資家のうち約半数が、コロナ禍でサステナビリティに関する課題の重要性が高まったと回答しました。環境問題の重要性が高まったと考える投資家は55%、社会的課題の重要性が高まったと考える投資家は57%でした。
日本の投資家では、環境問題の重要性が高まったと考える投資家は56%、社会的課題の重要性が高まったと考える投資家は65%でした(図1)。
図1:コロナ禍で日本の投資家のサステナビリティに関する課題の重要性はどう変化したか
サステナブル投資に魅力を感じる理由では、環境に対するプラスの影響(2020年47%→2021年52%)や社会に対するプラスの影響(2020年32%→2021年39%)を挙げる投資家の割合が増加し、高い投資リターンを挙げる投資家の割合は低下(2020年42%→2021年38%)しました。
日本の投資家では、環境に対するプラスの影響と社会に対するプラスの影響を挙げる投資家の割合が、昨年実施の同調査と比較して大きく増加しました。(図2)
図2:日本の投資家がサステナブル投資に魅力を感じる理由(複数回答可)
世界的にサステナブル投資の認知が進む、日本は世界との比較ではもう一歩
サステナブル投資の定義について尋ねたところ、「長期的な収益性が高く、環境や社会の変化にも対応したビジネスを行う企業に投資を行う」との回答が59%と、2017年の53%から増加しました(図3)。また、「最も魅力的な投資先ではなくても、環境、社会、ガバナンスの課題への対応が最高水準にある企業に投資を行う」も2017年の46%から2021年は51%に増加しました。一方で、「物議をかもす企業への投資を避ける」は同23%から同15%に減少しました。また、「わからない」との回答は2017年の11%から2021年は6%まで低下しました。
図3:サステナブル投資の定義(2017年と2021年の比較 / 複数回答可)
日本の投資家では、2017年は42%が「わからない」と回答、2021年は17%まで低下したものの、調査対象国・地域の中では最も高い割合となりました。中でも、日本の初心者/初級レベルの投資家では、3割(30%)が「わからない」と回答しました。
世界の投資家はポートフォリオ全体をサステナブル投資に入れ替えることに前向き
リスクと分散の程度が維持される場合、ポートフォリオ全体をサステナブル投資に入れ替えることをどう考えるか、との質問に対し、世界の投資家の57%が好意的と回答しました。国・地域別で最も好意的だったのは、タイ(76%)、インド(74%)、中国(74%)でした。日本の投資家のうち、好意的と回答したのは37%と、調査対象国・地域の中ではスウェーデン(36%)に次いで低い水準となりました。
また、投資経験別でみると、専門家/上級レベルの投資家のうち67%が好意的と回答し、中級の51%、初心者/初級レベルの47%を上回りました。
年齢層別でみると、若い世代のほうが好意的と考える割合が高い結果となりました。(図4)
図4:リスクと分散が同程度の場合、ポートフォリオ全体をサステナブル投資に入れ替えることをどう考えるか(世界、年齢層別)
更にサステナブル投資が進むには、投資リターン向上の実績が求められる
では、更にサステナブル投資が進むためには何が必要なのでしょうか?サステナブル投資を増やす動機となる要因のうち、最も多くの投資家が挙げたのは、「サステナブル投資により投資リターンが向上するという実績」(53%)でした。「投資が社会と地球環境に与える影響を示す定期的なレポート」(40%)、「運用商品提供会社自身による、サステナブル投資であることを示す認証」(36%)がそれに続きました。
日本の投資家でも上位は同じ要因が並びました(図5)。
図5:日本の投資家がサステナブル投資を増やす動機となる上位3つの要因(複数回答可)
シュローダー サステナブル投資グローバル・ヘッド アンドリュー・ハワードのコメント:
「今回の調査結果は、気候変動への対応に関して、資産運用会社への期待が高まっていることを如実に示しています。私たちは、お客様のための資産運用が、よりサステナブル(持続可能)な社会や環境への移行に沿ったものであり、その移行の過程で投資機会を捉え、利益をあげることに注力しています。」
「投資家として、またお客様の資産を守る立場として、私たちは、投資先が持続可能で回復力ある企業となるよう、企業の行動に積極的に影響を与えようとしています。」
「同時に、サステナビリティを重視することでリターンを犠牲にする必要がないことを、資産運用会社が投資家に示していく必要があります。持続的に価値を生み出し企業価値を高め続けることは、社会的課題や環境問題にうまく対処していくことと、本質的に関連していると考えています。」
「私たちは、お客様が重視する観点で運用実績の評価を行うための情報を提供する必要があります。シュローダーは、この調査結果を真摯に受け止め、主要なサステナビリティの課題において、また、高まる投資家ニーズへの対応において、リーダーシップを発揮していきたいと考えています。」
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社 代表取締役社長 黒瀬憲昭のコメント:
「今回の調査では、世界の投資家と比較して低いものの、日本の投資家のサステナブル投資に対する認知は以前に比べて広がったことがわかりました。一方で、サステナブル投資に積極的な投資家は、日本ではまだ少数派のようです。」
「資産運用会社は、投資家と企業の間にたって投資先を選別することにより、将来の環境や社会のあり方にも影響を与える重要な役割を担っています。企業分析においてESGやサステナビリティの要素を加えることは、配慮すべき点であるからというよりも、持続的に成長する企業を選別する上で必要不可欠と考えています。」
「投資家が『投資は将来の環境や社会を変える力』と実感できるようになるには、私たち資産運用会社が、投資リターンをあげ情報開示の質を高めることで、投資家の期待に応えていく必要があります。私たちはたゆまぬ努力を続け、投資が社会や環境にプラスの影響を及ぼす好循環をつくっていきたいと考えています。」
【調査の概要】
世界33の国/地域の2万3,950人(うち日本1,000人)の個人投資家を対象とした独自のオンライン調査。調査期間は、32の国/地域では2021年3月16日~5月7日、マレーシアは2021年7月5日から8月2日。今後12カ月で1万ユーロ(またはそれに相当する額)以上を投資する予定があり、過去10年間に何らかの投資行動をとった方を「投資家」と定義。
以上
■シュローダー・グループのESGの取組み
「質の高いコーポレートガバナンス体制を確立し、本業を通じて、環境や社会の変化および課題解決に対応する企業は、長期的に企業価値の向上と持続的成長が期待できる」という考えのもと、シュローダーは20年以上、ESGの要素を取り込んだ運用を実践しています。
ESGの観点を加味した運用を通じて、社会や環境にインパクトを与える真の企業価値向上を促すと同時に、社会や経済全体の利益となり、投資収益の拡大にも繋がることを目指しています。
■シュローダー・グループの概要
シュローダー・グループは、資産運用サービスを通じてよりよい未来への貢献を目指す、英国屈指の独立系資産運用グループです。ロンドン証券取引所に上場しています。1804年の創業以来200年以上にわたり、年金基金から機関投資家、個人投資家まで、世界の投資家に、長期的な視点に立ち幅広い投資ソリューションを提供しています。現在、運用資産総額は約107兆円*に上ります。
日本とのかかわりは古く、1870年(明治3年)、日本初の鉄道敷設のために日本政府が初めて発行した国債の主幹事を、シュローダーが務めたことにさかのぼります。1974年には東京事務所を開設し、日本における事業の本格的な第一歩を踏み出しました。幅広い資産運用サービスを提供する現在も日本株式運用を事業の中核の一つに据え、約150年前と同様、日本の未来への投資を通じて歴史を紡いでいます。
※2021年6月末現在。* 7,004億英ポンド、1英ポンド=153.32円換算。
※本資料におけるシュローダー・グループとは、シュローダーplcを直接もしくは間接的に親会社とする会社などを言います。