【北里大学東洋医学総合研究所】感染初期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する新規生薬エキス製剤・エフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)の有効性及び安全性を探索的に検討する医師主導治験Phase IIを開始

北里大学

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究開発課題名「感染初期のCOVID-19患者の重症化を防止する新規生薬エキス製剤の開発」)に採択され、北里大学、国立医薬品食品衛生研究所、及び株式会社ツムラの共同研究として実施しています。  研究開発代表者及び治験調整医師である小田口 浩(北里大学東洋医学総合研究所所長)の主導のもとに実施されている医師主導治験は、EFEのCOVID-19患者に対する安全性を確認するために入院管理下で実施するPart1と、有効性及び安全性を探索的に検討するために、主に自宅療養者を対象として実施するPart2の2部構成となっています。2021年6月から、国立国際医療研究センター病院(治験責任医師 大曲 貴夫)、藤田医科大学病院(治験責任医師 土井 洋平)、及び北里大学病院(治験責任医師 山岡 邦宏)でPart1を実施し、安全性評価委員会で感染初期のCOVID-19患者に対する認容性が確認されたことから、2021年12月よりPart2を開始します。Part2は、主に自宅療養者を対象とし、プラセボ対照二重盲検、ランダム化、多施設共同Phase II比較試験として実施します。  治験実施機関は、田園調布ファミリークリニック(治験責任医師 梅沢 義裕)、東海大学医学部付属八王子病院(治験責任医師 宮崎 浩司)などです。 ■背景  日本では感染症の初期の治療に麻黄配合漢方薬(麻黄湯、葛根湯、麻杏甘石湯など)が用いられており、主薬の麻黄は抗インフルエンザウイルス作用を有することが分かっています。一方、麻黄に含まれるエフェドリンアルカロイドは副作用(興奮、動悸、血圧上昇、排尿困難、不眠等)を惹起することから、循環器系障害、高血圧症、及び腎障害のある患者や、体力の衰えている者、高齢者に対して使用上注意を要します。そこで、麻黄から副作用の原因となることが多いエフェドリンアルカロイドを除去した新規生薬エキス製剤であるEFE (Ephedrine alkaloids-free Ephedra Herb extract) を開発し(特許第6781881号)、EFEが麻黄と同程度の抗インフルエンザウイルス作用を有することを明らかにしました (Hyuga, S., et al., J. Nat. Med., 70, 571-583, 2016) 。また、EFEの健康成人に対する安全性も確認しました(Odaguchi, H., et al., eCAM, vol. 2018, Article ID 4625358, 2018)。以上より、EFEは安全性の高い新規生薬エキス製剤に成り得るものと考えられました。 ■本研究のポイント  私たちは、EFEが新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) のVero細胞への感染を阻害すること(上間匡ら, 第38回和漢医薬学会学術大会, 2021年9月)及び、SARS-CoV-2の変異株の感染も阻害することを明らかにしました。その作用機構として、EFEの活性成分である高分子縮合型タンニンEMCTが、SARS-CoV-2のスパイクプロテインのS1ドメインに結合し、宿主細胞の発現しているACE2との結合を阻害することを解明しました(日向 昌司ら, 第38回和漢医薬学会学術大会, 2021年9月)。これらの科学的エビデンスから、EFEはSARS-CoV-2が宿主細胞へ侵入する最初のステップを阻害することで感染を抑制することが示唆され、感染初期のCOVID-19患者の治療に有効であると予測されました。COVID-19では、高齢者、及び高血圧や循環器系障害を併発している患者では、重症化や死亡リスクが高いことが知られていますが、これらのハイリスク患者に対して、EFEは非常に有用であると考えられます。また、作用機構が類似している抗体医薬品と比較して、EFEは非常に安価で、経口薬であることからPCR陽性判定後、速やかに自宅で服用を開始することができる利点があります。本研究開発事業では、EFEを感染初期のCOVID-19患者の治療薬として早期に医薬品化することを目指しています。  なお本治験は、以下の2つの理由から新規性のある重要で挑戦的な治験として注目されます。 (1)日本ではこれまでに、多成分から成る新規天然物医薬品が開発されたことはありません。本研究事業は日本で初めての、医療用の新有効成分の承認申請を見据えた新規生薬エキス製剤についての治験であり、その成果は今後の天然物医薬品の開発の指針になると期待されます。 (2)本治験Part2では、バーチャル治験と呼ばれる新しい手法を取り入れた治験を行います。バーチャル治験とは、ウェアラブルデバイス、ePRO(患者報告アウトカム電子システム)、オンライン診療等のオンライン技術を利用して、医療機関への来院に依存せずに実施する臨床試験です(ヘルスケア・イノベーション協議会 「バーチャル治験普及に向けた提言書」 2021年1月)。本治験の被験者は、主に自宅療養中のCOVID-19患者を想定しており、日々の被験者データの取得手段としてePRO、被験者状態のモニタリング手段として下着型ウェアラブルデバイスを利用し、必要に応じてオンライン診療も実施いたします。本治験は全てをバーチャルで実施するのではなく、対面診療も組み合わせていることから、ハイブリッド型バーチャル治験として実施します。本治験は、被験者の安全性を確保しつつ、感染リスクを低減させるために非常に有用な方法とされるバーチャル治験を取り入れた日本での先駆けとして注目されます。  治験計画の情報は厚生労働省 臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT:https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031210063)で公開されています。 ■問い合わせ先 ≪研究に関すること≫  北里大学 東洋医学総合研究所  所長 小田口 浩  〒108-8641 東京都港区白金 5-9-1  北里大学 東洋医学総合研究所  臨床研究部 部長補佐 日向 須美子  TEL:03-5791-6171  E-mail:hyuga-s@insti.kitasato-u.ac.jp  国立医薬品食品衛生研究所  所長 合田 幸広  〒210-9501 川崎市川崎区殿町3-25-26  連絡先:所長秘書 若林 由紀子  TEL: 044-270-6601  E-mail:ywakabayashi@nihs.go.jp ≪報道に関すること≫  学校法人北里研究所 総務部広報課  〒108-8641 東京都港区白金5-9-1  TEL:03-5791-6422  E-mail:kohoh@kitasato-u.ac.jp  国立医薬品食品衛生研究所  総務部業務課  〒210-9501 川崎市川崎区殿町3-25-26  TEL:044-270-6620  E-mail:ohashi@nihs.go.jp  株式会社ツムラ  コーポレート・コミュニケーション室  広報グループ  〒107-8521 東京都港区赤坂 2-17-11  TEL:03-6361-7100  E-mail:shuzai@mail.tsumura.co.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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