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大阪大学大学院人間科学研究科の鹿子木康弘准教授、大妻女子大学社会情報学部情報デザイン専攻の宮崎美智子准教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の高橋英之特任准教授、大阪大学大学院人間科学研究科の山本寛樹特任研究員、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の小林哲生上席特別研究員、東京大学大学院情報学環/大学院総合文化研究科の開一夫教授の研究グループは、前言語期にある8ヵ月の乳児が悪者を罰するような行動をとることを世界で初めて明らかにしました。
【研究成果のポイント】
● 8ヵ月の乳児でも悪者を罰するような行動をとることを発見
●これまでは計測不可能だった乳児の道徳的行動を、視線を用いた新技術により計測可能に
●ヒトが進化の過程でこのような道徳的な行動傾向を獲得した可能性を示唆
●ヒトとはいかなる存在かという問いに一石を投じ、人間理解へとつながる成果
【概要】
大阪大学大学院人間科学研究科の鹿子木康弘准教授、大妻女子大学社会情報学部情報デザイン専攻の宮崎美智子准教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の高橋英之特任准教授、大阪大学大学院人間科学研究科の山本寛樹特任研究員、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の小林哲生上席特別研究員、東京大学大学院情報学環/大学院総合文化研究科の開一夫教授の研究グループは、前言語期※1にある8ヵ月の乳児が悪者を罰するような行動をとることを世界で初めて明らかにしました。
これまでの発達研究で、乳児が他者の行動の良し悪し(道徳的判断)を行うことは多くの研究で示されてきましたが、乳児の運動能力が未発達なため、乳児自身が道徳的行動を行うかどうかについては解明されていませんでした。
今回、鹿子木准教授らの研究グループは、視線を用いた新技術(図1)により、これまでは計測不能であった乳児の道徳的行動を計測することに成功し、8ヵ月児がいじめを行う悪者を罰すること(第三者罰※2)を行うことを解明しました。本成果は、ヒトが進化の過程でこのような正義的な行動傾向を獲得した可能性を示唆し、ヒトとはいかなる存在かという問いに一石を投じ、さらなる人間理解へとつながることが期待されます。
【研究の背景】
これまでの発達研究により、12ヵ月以下の言葉をしゃべれない赤ちゃんに、他者の行動の良し悪しを評価するといった道徳的判断能力が備わっていることが広く知られていました。しかし、(1)道徳的判断ができるといっても、道徳的にふるまうかどうかは保証されない(例:善悪判断ができても、悪いことをする人がいる)、(2)12ヵ月以下の赤ちゃんは、運動能力が未発達なため、他者に対して道徳的な行動を示すことができないといった2つの理由から、赤ちゃん自身が他者に対して道徳的な行動をとるかどうかは未解決の問題でした。
【研究の内容】
鹿子木准教授らの研究グループでは、乳児の視線とコンピューター画面上で生じるイベントを連動させることにより、視線によってコンピューター画面上の悪者を罰することができる新しい実験手法を開発しました。そして、5つの実験から、8ヵ月の乳児が、コンピューター画面上のいじめを行う悪者を視線によって罰することを解明しました。これは、乳児が道徳的な行動を行うことを実証したと言え、ヒトが進化の過程で道徳的(あるいは正義的)な行動傾向を獲得した可能性を示唆します。また、この実験手法は、乳幼児研究の新しい実験手法の提案にもつながり、パラダイムシフトとなる可能性があります。
【本研究成果が社会に与える影響】
本研究成果は、ヒトとはいかなる存在かという問いに一石を投じ、さらなる人間理解へとつながることが期待されます。
【特記事項】
本研究成果は、2022年6月10日(金)0時(日本時間)に英国科学誌「Nature Human Behaviour」(オンライン)に掲載されます。
タイトル:''Third-party punishment by preverbal infants''
著者名:Kanakogi, Y., Miyazaki, M., Takahashi, H., Yamamoto, H., Kobayashi, T., and Hiraki, K.
DOI:
https://www.nature.com/articles/s41562-022-01354-2
なお、本研究は、JSPS、JST、CAOから助成を受けました。
【用語説明】
※1 前言語期:言葉を話し始める前の時期。主に0ヵ月から12ヵ月の間。
※2 第三者罰:自身に直接に危害を加えていない道徳的違反者を罰すること。近縁種であるチンパンジーが行わないことから、ヒト特有の行動傾向であると言われている。近代社会では、犯罪者を刑務所に収監することが第三者罰の典型例であると言われる。
<大阪大学大学院人間科学研究科・鹿子木准教授のコメント>
乳児の道徳性について世界的注目が集まる中、乳児の道徳行動という知見を延べ5年かけて世界に先駆けて実証し、世に成果として出すことができてとても嬉しいです。本研究の知見により、「ヒトとはどのような存在なのか?」ということを皆様に少しでも考えてもらえたらと思います。
【SDGs目標】
開発目標16 平和と公正をすべての人に
【参考URL】
鹿子木准教授 研究者総覧
URL
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/e1f9b0e1d068fb61.html
【本件に関する問い合わせ先】
大阪大学 大学院人間科学研究科 准教授 鹿子木康弘(かなこぎやすひろ)
TEL:06-6879-8043 携帯(090-9544-5304)
E-mail: y-kanakogi@hus.osaka-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/