シュローダー マクロ経済見通し(2023年1-3月期)
【米国】
米国は、景気指標によっては景気後退が近い兆候を示しているものもありますが、これまでのところ景気後退入りには至っていません。堅調な労働市場は、経済成長を下支えしている一方で、コアインフレ率は高止まりしている状態となっています。これらを背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2023年の後半に5.25%まで利上げを実施すると見込んでいます。高い金利は、景気後退を招く可能性が高いですが、GDP成長率は2023年に0.3%、2024年に0.7%程度と僅にプラスとなると考えます。ただし、通常より低い経済成長率は、インフレ率の低下につながり、2024年のインフレ率は2%を見込みます。景気減速の兆候を背景に、FRBは2023年末までに金融緩和に転換し、2024年には3.5%まで利下げを行うと考えます。
【ユーロ圏】
ユーロ圏経済は、エネルギーを巡る懸念が後退し、予想されていたよりも堅調に推移しています。エネルギーのインフレが引き続き主な懸念材料ですが、インフレ率(HICP)は2022年の8.4%から、2023年は4.2%、2024年は2.2%に低下すると考えます。家計の可処分所得が底堅いことから、ユーロ圏経済は景気後退を回避する可能性もあり、2023年のGDP成長率の見通しを0.5%、2024年を0.8%としています。エネルギー危機への懸念が後退したことから、欧州中央銀行(ECB)は、堅調な労働市場を背景としたセカンド・ラウンド・エフェクト(賃金上昇を通じてさらなる物価上昇が起こること)を回避するために、リファイナンス金利を3.5%まで引き上げると考えます。ただし、FRBと同様に、その後は金融緩和への転換が見込まれ、2024年には1.75%まで引き下げると考えます。
【英国】
英国経済は低調となることが見込まれ、2023年の英国経済成長率見通しをー0.8%としています。高い光熱費や労働力の不足などの問題があるほか、ローンのコスト上昇が、需要の低迷につながると考えます。また、財政政策についても、より縮小する方向に転じています。インフレ率については、2023年には6.5%、2024年には3.8%に低下する見通しです。これらを背景に、イングランド銀行(BOE)は、利上げサイクルを終了し、2023年内は政策金利を4%で維持、2024年には2%まで引き下げると考えます。これにより、2024年のGDP成長率は0.8%に上昇する見込みです。
【エマージング諸国】
中国のゼロコロナ政策の終了により、これまで蓄積された需要の開放が見込まれることから、2023年の中国経済成長率は6.2%に上昇すると考えます。ただし、モメンタムが消失し2024年の成長率は4.5%に減速すると考えます。中国の経済回復の波及効果は限定的と考えられ、世界の需要の減速と、これまでのアグレッシブな利上げの影響が経済活動に影響を与えることから、中国以外の多くのエマージング諸国の経済成長のペースはより遅くなると考えます。インフレ率については、減速へ向かうことが見込まれ、中央銀行は先進国よりも早く利下げを開始する可能性があります。
今後想定される他のシナリオ
基本シナリオ以外で今後想定される5つのシナリオのうち、3つのシナリオがベースラインを下回る経済成長、そのうちの2つのシナリオがベースラインを上回るインフレ率を示唆しており、引き続き、総括してスタグフレーションリスクに傾斜しています。基本シナリオ以外で今後想定される景気シナリオについて、最も可能性の高いリスクシナリオとしては、スタグフレーションシナリオの「コモディティ価格の上昇」、次いで、スタグフレーションシナリオの「供給サイドによるインフレ」を想定しています。
世界の実質GDP成長率見通し
シュローダー・エコノミクス・チームによる見通し(基本シナリオ)
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