日本製鉄 高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に向けた本格検討を開始
日本製鉄は、2021 年3 月に公表した「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」において、「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」「大型電炉での高級鋼製造」の3 つの超革新的技術を用いたカーボンニュートラルの実現を目指しています。
このうち、「高炉水素還元」については、2022 年5 月より東日本製鉄所君津地区において試験高炉(12m3)への高温水素吹込み試験を開始しております。また東日本製鉄所君津地区においては、稼働中の大型高炉実機(4,500m3)を用いた、実証試験を2026 年1 月より開始します。
「水素による還元鉄製造」については、技術開発本部波崎研究開発センター(茨城県神栖市)に、小型シャフト炉を設置し、水素で低品位鉄鉱石を還元する試験を2025 年度より開始します。
「大型電炉での高級鋼製造」については、瀬戸内製鉄所広畑地区に新設した電炉による商業運転を2022 年10 月より開始し、世界初となる電炉一貫でのハイグレード電磁鋼板の製造・供給が可能となっております。また、技術開発本部波崎研究開発センター(茨城県神栖市)に、小型電気炉(10 トン)を設置し、2024 年度から試験を開始します。
日本製鉄は、政府の『GX実現に向けた基本方針』の考え方に沿って、鋼材の安定供給を継続しつつ、研究開発成果を他国に遅れることなく国内でいち早く社会実装することにより、産業の国際競争力を確保し、我が国の経済成長に貢献していく所存であり、具体的には、2050 年のカーボンニュートラルに向けて3 つの超革新技術の技術開発および実機化を進めていきます。その中で、まずは当社の2030 年の脱炭素目標を確実に達成し、政府の温室効果ガス46 %削減の目標に貢献するためには、一部製鉄所について、高炉プロセスから電炉プロセスへの早期の転換が必要と考え、具体的には九州製鉄所八幡地区および瀬戸内製鉄所広畑地区を候補地として本格検討を開始することとしました。
高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に関する本格検討を開始するにあたり、社内の検討体制を整備し、広く社外の関係先も含めた検討を加速化することを通じ、早期の実現を目指します。電炉転換の候補となる九州製鉄所八幡地区および瀬戸内製鉄所広畑地区はいずれも当社を代表する高級鋼の量産拠点であり、開発中の技術成果を結集し、高級鋼のカーボンニュートラル化にいち早く取り組んでいく所存です。
一方で、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換は大規模なCO2 削減効果がありますが、多額の設備投資費用が必要であることに加え、原料、電力をはじめとする操業コストの上昇により、生産コストの大幅な増大が想定されます。
地球環境問題に資するCO2 削減のみを目的とした、こうした大規模投資に関し経済合理性のある経営判断を行い実行するためには、設備投資や生産コスト増に対する政策支援や、今後2050 年に向け順次供給を拡大させていくカーボンニュートラル鋼材の市場価値等の評価が必要といった課題がありますが、現時点でこれら全てを見通すことはできず、今後投資判断に対する予見性をより一層高めていく必要があります。
現在国において検討されている政策支援策の早期整備およびカーボンニュートラル鋼材に対する社会的理解の浸透を強く要望していきます。
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