【ニュースレター】遠隔操作の無人ヘリが“離島の離島”の生命線を担う
~平常時は生活用品、災害発生時は緊急支援物資を配送し島民の暮らしを空からサポート~
医療品や学校給食の食材を積んで定期運航
奄美大島から定期船で約1時間、青い海に“離島の離島”と言われる与路島と請島(ともに鹿児島県大島郡瀬戸内町)が浮かんでいます。二つの島には合わせて150人ほどの人びとが暮らしていますが、日用品等を運ぶ頼みの定期船は高波などで欠航することも少なくなく、不安定な生活物流が大きな課題となっていました。
今年2月29日、その島の上空に、当社製の産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」が姿を現しました。瀬戸内町と日本航空(株)(以下・JAL社)が共同で設立した奄美アイランドドローン(株)(以下・AID社)の運航によって、この日から隔週で2便ずつ、奄美大島側のヘリポートから医療品や学校給食の食材、新聞等を運んでいます。その活躍ぶりに、いまでは頼れる生活インフラとして島の皆さんから迎えられています。
「就航の背景には自然災害への備えがあります」と、AID社の操縦者・石井啓吾さん(JALより出向)。「3年半ほど前、災害時の物資輸送について瀬戸内町から頂いた相談をきっかけに、時間を掛けて検討を重ねてきました。こうして島の暮らしを支える定期運航を重ねていくことで、発災時に即時の対応ができるよう備えているという側面もあります」と話します。
衛星通信を用いて東京から遠隔操作
現在、無人ヘリの機長にあたるオペレーターは、JAL本社(東京・天王洲)の一角に据えられた基地局から、約1,300キロ離れた現地の運航補助者と連携して遠隔操作を行っています。
「ただ、この運航を定着させていくためには、地元人材の操縦者を養成していくことが不可欠だと考えています。より地域に根差した事業体制を築いていくために、今後、運航ノウハウの移管等も順次進めていきたいと考えています」(石井さん)
無人ヘリの定期運航が始まって、思わぬメリットの発見もありました。たとえば、悪天候等による船舶の欠航は、比較的、早い段階で決定します。その後、気象条件が回復しても出航することはありません。一方、船舶の約半分の30分程度で島に到着する無人ヘリは、フライトの直前までその判断を待つことができます。現在、無人ヘリが運んでいる物資の中には奄美大島で調合された島民のための処方薬なども含まれており、こうした長所も、災害時などでは大きな力となることでしょう。
南北約200キロの洋上に大小の島々が点在する奄美群島。災害時、集落孤立化等が懸念されるのは与路島と請島だけではありません。AID社では、ドローンを活用して島の暮らしを支える“離島モデル”を、奄美群島全体に展開していくことも見据えているそうです。
■UMS(無人システム)マルチソリューション
https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/solution/
■広報担当者より
今年1月に発生した能登半島地震でも、道路が寸断された被災地域に飲料水を運ぶなど、無人ヘリの運搬機能が活躍しました。今回ご紹介した物流だけでなく、インフラの点検や計測・観測 、災害対策など、人が近づけない領域で、無人ヘリによるマルチソリューションの活用事例が広がっています。