【アロマ最新研究】薄毛予防に新たな知見!?脱毛に関わる酵素の阻害活性が認められた精油とは
日本人男性の男性型脱毛症(AGA)の発症頻度は、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降では40数%※1とされ、近年では女性型脱毛症(FAGA)も増えています。また、薄毛の悩みが、QOLの低下やメンタルヘルスへの影響を招く可能性も注目されています。今回は、AEAJが研究費助成を行った、薄毛の原因となる酵素の活性を精油(エッセンシャルオイル)が抑制した研究について紹介します。
■4種の精油が、薄毛の原因となる酵素の活性を大きく阻害
城西大学の鈴木教授が行った研究では、肌と毛髪の健康と美を目的とし、薄毛の原因となる酵素(5α-リダクターゼ*)の働きを抑える精油(アロマテラピー検定対象精油30種※2より)を探索しました。
【5α-リダクターゼと皮膚・毛髪の関係】
*5α-リダクターゼ
前頭部や後頭部、側頭部、前立腺などに存在する酵素。AGAの発症に深く関係する。テストステロン(男性ホルモン)が頭皮の5α-リダクターゼの作用により、ジヒドロテストステロン**に変化することでAGAを発症する。
* *ジヒドロテストステロン
髪の成長に必要な毛乳頭細胞にあるアンドロゲン受容体に取り込まれ、脱毛を促す。
その結果、髪の成長が阻害され髪が薄くなる。
【研究概要】
●精油:アロマテラピー検定対象精油30種
●方法:テストステロン(3.5μM)と各精油(250μg/ml)を含む溶液を37 ℃で30分間反応
●測定項目 :ジヒドロテストステロンの生成量を測定し、各精油の5α-リダクターゼ阻害活性を算出
【研究結果】
<結果①>
対象精油30種の5α-リダクターゼ阻害活性を調べた結果、サンダルウッド、ジャーマンカモミール、パチュリ、ローズ(アブソリュート)に、5α-リダクターゼの高い阻害活性を確認。
<結果②>
結果①で阻害活性を確認した精油4種から検出された主要成分を用いて、同様の方法・測定項目で、さらに実験を行った。パチュリ精油に含まれる成分「パチュリアルコール」に、5α-リダクターゼ阻害活性が認められた。
<検出された主要成分>
●サンダルウッド 【アガロスピロール】
●ジャーマンカモミール【α-ビサボロールオキシドA】
●パチュリ 【パチュリアルコール】
●ローズ(アブソリュート)【フェニルエチルアルコール】
原著論文 鈴木龍一郎, 他 (2024) 5α-リダクターゼを阻害する精油の探索, アロマテラピー学雑誌 25(2):19-24.
【まとめ】
今回の研究結果から、4種の精油に薄毛の原因となる酵素「5α-リダクターゼ」の活性を阻害する作用が示唆され、またその内パチュリ精油に含まれる成分「パチュリアルコール」に特に高い阻害活性が見出された。
また一般的に精油が示すさまざまな作用は、その精油に含まれる一つの化合物に起因するというより、数多く含まれる化合物の複合的な作用によるものということが改めて確認された 。
薄毛によるQOLの低下やメンタルヘルスへの影響も深刻化する中、精油で総合的にケアすることで薄毛予防の新たな可能性が広がるであろうことがわかった。
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城西大学 薬学部 薬科学科 教授
天然物化学・生薬学を専門とし、天然有機化学物の構造解析や、生薬・精油の品質を評価する方法の開発など、人々の健康や農業への貢献を目指した研究を行っている。
※1 板見智(2004)日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査. 日本医事新報 4209:27―29
※2 イランイラン、クラリセージ、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、ジャーマンカモミール、ジャスミン(アブソリュート) 、ジュニパーベリー、スイートオレンジ、スイートマージョラム、ゼラニウム、ティートリー、ネロリ、パチュリ、ブラックペッパー、フランキンセンス、ベチバー、ペパーミント、ベルガモット、ベンゾイン(レジノイド) 、ミルラ、メリッサ、ユーカリ、ラベンダー、レモン、レモングラス、ローズ(アブソリュート)、ローズオットー、ローズマリー、ローマンカモミール