2025-7-24
株式会社 東芝
東京大学とのローカル5Gの性能評価に関する共同検証の実施について
~視認性のある新型シールドルーム※1を用いて、性能評価の精度向上に貢献~
当社は、ローカル5Gの性能評価において従来から課題であった電波干渉と難視認性を解決できる新型シールドルームを用いたローカル5Gの性能評価手法の有効性に関する共同検証を国立大学法人東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 中尾研究室(以下、東京大学)と開始しました。検証期間は、2025年4月1日から2026年3月31日までです。
ローカル5Gは、5G無線の特徴である高速・大容量・低遅延・多接続の通信システムを、事業者が独自に構築・運営できるという自営無線ならではの特徴があり、工場やプラント、ビル施設などでの自動搬送ロボットの制御や大容量の映像伝送など、幅広いユースケースで利用が拡大しています。
しかし、ローカル5Gの通信システムを構築する前の通信品質試験や、デモンストレーションの際に、他の無線システムとの電波干渉により低遅延性・安定性の性能を正確に評価できないという課題があります。また、鉄製の壁や金属を含んだ布で囲まれたシールドルームを用いる方法もありますが、内部の設備状況の視認ができないという課題があり、いずれの方法でもローカル5Gの性能を正確に評価することが難しく、次世代の情報通信インフラであるBeyond5G実現の妨げとなっています。
本検証では、東京大学のローカル5G基地局と当社独自の分散型アンテナシステム「DAS(Distributed Antenna System)」
※2を、AGC株式会社が開発した透明で電波を遮蔽・反射する「RadiviaTM」
※3を採用した新型シールドルーム内に設置し、電波干渉を抑止しつつ視認性の高い環境で、ロボット制御などの複数のアプリケーションの稼働状況を確認し、視認性を確保しつつローカル5Gシステム全体の低遅延性・安定性の評価を正確に行う手法の有効性の検証を行います。なお、当社は、DASに加え、アプリケーションを安定稼働させるFAPI
※4プロキシなどの低遅延化技術も提供します。
当社は、東京大学と本検証に取り組む中で、ローカル5Gシステムの実験・実証環境の改善を進めるとともに、従来の有線通信を主体とした工場や屋内外での様々なユースケースで5G無線の利用を進めるBeyond5G通信の実現に貢献してまいります。
本実証の関係者と新型シールドルーム
左からAGC株式会社 電子カンパニー 植木真治氏、同 神原久美子氏、東京大学 中尾彰宏教授、株式会社 東芝 大屋靖男
※1 電磁波を遮断する目的で、外部からの電波の侵入を防ぎ、内部で発生した電波の漏洩を防ぐように設計された空間。
※2 基地局から届く電波を光ケーブルによって分配する事で通信できるエリア拡張のシステム。ローカル5G基地局の無線信号を受け取る親機とアンテナを接続する子機、および親機子機間の信号を分配する中継器で構成される。子機相互で同期タイミングをあわせており、子機間の無線干渉が生じないため、無線エリア設計を容易にする。
※3 AGC株式会社が開発した透明で電波を遮蔽・反射する素材。この素材を利用した新型シールドルームは、大型サイズでの製造が可能で、現場での施工も容易な構造となっている。
※4 FAPIとは、functional application platform interfaceの略。5G通信のソフトウェアインターフェイス規格の一つであり、基地局に当該規格に適合したソフトを適用し、端末の通信タイミングに合わせた低遅延通信を安定して実現する。