株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル(以下、OCG)、および東芝エネルギーシステムズ株式会社(以下、東芝ESS)は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の支援のもと、サウジアラビア王国(以下、サウジアラビア)においてSaudi Electricity Company(以下、SEC)と共同で、風力発電と太陽光発電の2種類の再生可能エネルギー(以下、再エネ)と蓄電池システムをエネルギーマネジメントシステム(以下、EMS)で制御する「ハイブリッド再エネ発電システム」の実証事業(以下、実証事業)を開始し、2028年5月まで実証を行う予定です。
図 1 実証事業のイメージ図
サウジアラビアでは、人口増加により電力需要が急増しているため、より多くの発電容量が求められています。また、パリ協定に基づく温室効果ガス(GHG)排出削減目標の達成、そして経済の多角化を目指す「Vision2030」を掲げています。これらの理由から、再エネの大量導入によるエネルギーミックスおよび電源の再エネへのシフトが進んでいます。
一方、再エネ導入に伴い、多数存在する基幹電力系統から離れた地域の配電系統において、再エネの導入が進むことにより系統が不安定になるという課題や、電力需要の増加により配電変電所の過負荷が生じるという課題が見えています。これらの課題は、電力需要家にとって停電や電圧低下を引き起こす要因となります。
こうした課題を解決する方法のひとつが、分散型再エネ電源の導入です。これは再エネ設備を需要地の近くに小規模で分散配置し電力を供給する仕組みです。さらに蓄電池を組み合わせることで、変動の大きい再エネでも、基幹電力系統から離れた地域の配電系統で安定した電力供給が可能になります。
本実証事業では、SECがサウジアラビアのリヤド郊外に保有する既存風力発電設備の実証サイトに、新たに太陽光発電設備と蓄電池システムを設置し、それらを統合的に制御するEMSを導入します(図3)。今回実証する「ハイブリッド再エネ発電システム」は、SECが所有する既存の風力発電と新設する太陽光発電の二種類の再エネ発電を、EMSと蓄電池システムで安定化して配電系統に電力供給するシステムです。蓄電池システムには、繰り返し充放電しても劣化しにくい長寿命性能を有し再エネの発電量の変動抑制に適する出力型蓄電池と、電力ピークシフトに適する容量型蓄電池の2種類を適用しており、長い期間利用できる蓄電池システムを目指しています。この様なシステムの実証は、世界的にも注目されている取り組みです。
図 2 SECが保有する実証サイトの既設風車
図 3 ハイブリッド再エネ発電システムの概念図
実証事業では、ハイブリッド再エネ発電システムの導入により『出力変動が激しい再エネの安定電源化』、『再エネの余剰電力の活用』、および『既設変電所の過負荷の抑制』の実現を目指します。また、ハイブリッド再エネ発電システムの経済性を高めるため、蓄電池の出力・容量の最適化も実証します。さらに、本実証事業はGHGの削減にも貢献する事業であるため、本実証事業期間中にGHG 削減量のモニタリングも行います。
OCGは、実証設備の全体設計と供給、GHG削減量と導入設備の経済性の評価を行います。東芝ESSは、これまで国内外で蓄積してきたEMSと蓄電池システムの知見を実証設備の設計に生かすとともに、本実証事業から得られるデータの解析を行います。
本実証事業を通じ、GHG削減の実現可能性や、過負荷が生じている配電変電所の投資の軽減が期待できる、「ハイブリッド再エネ発電システム」の有効性をサウジアラビア政府や関連機関に示す事で、サウジアラビアにおける同システムの普及拡大につながり、さらには分散型再エネ電源による配電系統への電力供給が同国および世界に広がっていく事が期待されます。OCGおよび東芝ESSは、今後も、本実証事業で得た知見を通じて顧客のニーズに対応するとともに低炭素社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。