小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)と近畿大学(大阪府東大阪市、学長:塩崎均)薬学総合研究所の准教授 森山博由および客員准教授 森山麻里子は共同研究で、アロエベラ液汁が紫外線(UVB)による皮膚のダメージを軽減し、皮膚を紫外線から守る効果があることを発見した。本成果は、小林製薬グループの化粧品類に活用していく。本研究成果は、2017年9月9~10日に千葉県で開催される、日本生薬学会第64年会で発表する。
【アロエベラ液汁に、紫外線による過剰な表皮細胞死(アポトーシス)の抑制効果】
人の肌は絶えず紫外線にさらされており、紅斑ややけどなど肌に目に見えるトラブルがない場合であっても、肌細胞レベルでは常にダメージを受けている。
ダメージが蓄積され、自己で修復できなくなった肌の角質細胞は、他の細胞に悪影響を与えないように自ら細胞死(アポトーシス)を選ぶ。細胞死それ自体は、紫外線から皮膚を守る自然な防御反応だが、この細胞死が過剰におこると、角質細胞が炎症の原因となるさまざまな起炎物質を放出して炎症反応を起こし、異常な角化細胞(角質のもとになる肌の深層にある細胞)が増加する。これが肌表面のキメの消失や水分量の低下といった肌荒れの原因になることが知られている(図1)。
今回の研究では、アロエベラ液汁が紫外線による細胞死(アポトーシス)を引き起こす活性型タンパク質Caspase3(カスパーゼ)の発現を抑え、過剰な細胞死(アポトーシス)を抑制することが明らかになった。
【細胞レベルで蓄積する紫外線ダメージから皮膚を守る】
今回の発見により、アロエベラ液汁が紫外線を浴びた皮膚の過剰な細胞死(アポトーシス)を抑制し、皮膚を紫外線から守る効果をもつことがわかった。
このことから、アロエベラ液汁が配合された化粧品類を日常的に取り入れることで、細胞レベルで日々蓄積する紫外線からのダメージを防ぎ、すこやかな肌の維持につながると考えられる。
【研究結果 詳細】
1. アロエベラ液汁は紫外線による細胞死(アポトーシス)を引き起こす活性型タンパク質Caspase3(カスパーゼ)の発現を抑える
ヒト表皮細胞を用いて、紫外線によるアロエベラ液汁の効果を観察したところ、アロエベラ液汁を添加したヒト表皮細胞では細胞死(アポトーシス)を引き起こす活性型Caspase3の発現そのものを抑えることが確認された(図2)。つまり、アロエベラ液汁によって、紫外線のダメージが抑えられ、細胞死(アポトーシス)が抑えられている可能性があることがわかった。
2. アロエベラ液汁は紫外線によるアポトーシスを抑制する
次に、実際に細胞死(アポトーシス)が起きているかを、ヒト表皮細胞を用いて細胞の膜表面に着目して測定したところ、アロエベラ液汁を添加したヒト表皮細胞では、細胞死(アポトーシス)にむかっている細胞がほとんど認められないことが確認できた(図3)。アロエベラ液汁を添加することで、紫外線に晒されるなかでも細胞が健全な膜状態を維持しており、紫外線からのダメージを免れていることが確認できた。
以上の結果から、アロエベラ液汁には紫外線から皮膚を守る作用があることがわかった。
【研究背景】
アロエは300種類以上もの品種があるが、熱帯地方で育つアロエベラの葉肉には、ビタミン類、ミネラル類、酵素類、多糖類、アミノ酸など健康・美容に有用な成分が多く含まれている。
小林製薬と近畿大学薬学総合研究所では、アロエベラの機能性に着目した研究を進めており、近年アロエベラ液汁には肌の保湿作用以外にも、肌のターンオーバー促進作用などのさまざまな表皮修復作用があることを明らかにしてきた。
今回、アロエは古くから、紫外線による肌ダメージへ効果があると言われてきたことに着目し、皮膚に最も外側に存在することで常に紫外線にさらされているヒト表皮細胞を用いて、紫外線を照射した時のダメージに対して、アロエベラから得られる液汁の持つ可能性について検討した。
【近年明らかになったアロエベラ液汁の美肌効果】
1.肌のターンオーバー促進作用
2.細胞接着因子の増加作用
3.皮膚の構築作用
4.加水分解ヒアルロン酸の皮膚浸透を高める効果
※ 本研究成果は、2015年8月開催の第32回和漢医薬学会学術大会、2017年3月開催の日本薬学会第137年会にて発表いたしました。
※ 詳細は小林製薬ホームページを御覧ください。
http://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2015/150818_01/index.html
https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2017/170316_02/index.html
【用語解説】
○アロエベラ液汁
アロエベラの葉肉部分を取り出し、圧搾して得られる液汁のこと。
○細胞死(アポトーシス)
あらかじめプログラムされた細胞死のこと。細胞死がケラチノサイトで正常に起きることで、細胞が角化し、角層となる。しかし、皮膚の様々な刺激を受けることで、過剰な細胞死を引き起こし、肌の状態を悪くすることが知られている。
【関連リンク】
・薬学総合研究所 准教授 森山 博由(モリヤマ ヒロユキ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/665-moriyama-hiroyuki.html
・アンチエイジングセンター 客員准教授 森山 麻里子(モリヤマ マリコ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/1887-moriyama-mariko.html
・関連URL:
http://www.phar.kindai.ac.jp/centers/
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