【本件のポイント】
●神奈川大学光合成水素生産研究所プロジェクト研究員の永島賢治 博士を第一著者とする、光合成光捕集タンパクの構造と機能に関する論文が、2017年9月19日、科学専門誌PNAS(アメリカ科学アカデミー紀要)に掲載された。
●論文名:Probing Structure-Function Relationships in Early Events in Photosynthesis Using a Chimeric Photocomplex
●著者:K. V. P. Nagashima(神奈川大), M. Sasaki(茨城大), K. Hashimoto(神戸大), S. Takaichi(日本医大), S. Nagashima(首都大), L. Yu(岡山大), Y. Abe(茨城大), K. Gotou(茨城大), T. Kawakami(茨城大), M. Takenouchi(茨城大), Y. Shibuya(茨城大), A. Yamaguchi(茨城大), T. Ohno(神戸大), J. Shen(岡山大), K. Inoue(神奈川大), M. T. Madigan(南イリノイ大), Y. Kimura(神戸大), Z.-Y. Wang-Otomo (茨城大) 以上7大学所属の18名の研究者
●掲載URL:
http://www.pnas.org/content/early/2017/09/20/1703584114.abstract
【研究概要】
光合成生物は、アンテナ複合体と呼ばれる太陽光を非常に高い効率で吸収する装置を持っている。紅色光合成細菌のアンテナ複合体はLH1と呼ばれ、LH1はバクテリオクロロフィルやカロテノイドといった光合成色素がタンパク質の内部で極めて精密に配置された構造を持っている。
今回は、好熱性の紅色光合成細菌Thermochromatium (T.) tepidum[1]のLH1を遺伝子工学により、常温で生育する別種の紅色光合成細菌に導入してその内部構造や機能を調べた。この光合成細菌は好熱性であるばかりか、常温性のものよりも長い波長(赤外線の領域)の光を吸収する。
今回の研究で、その仕組みの鍵を握っているのがT. tepidumのLH1の内部に結合しているカルシウムイオンであることが示唆された。カルシウムイオンがLH1内部の特定の部分に結合することで熱に対して安定となり、より長波長側の光を吸収できる構造が保たれていることが解明された。
この研究成果は天然の光合成の謎を解くばかりでなく、人工光合成の研究への応用にもつながるものと期待される。
[1] Madigan MT (1984) A novel photosynthetic purple bacterium isolated from a Yellowstone hot spring. Science 225, 313-315.
-本研究について-
本研究は下記の支援を受けて実施された。
・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業/個人型研究(さきがけ)研究領域:「光エネルギーと物質変換」(研究総括:井上晴夫 首都大学東京 人工光合成研究センター長)
・公益財団法人東京応化科学技術振興財団 研究費助成
・日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C
・文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 「人工光合成」
・文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業
▼本件に関するお問い合わせ先
<研究に関すること>
・光合成水素生産研究所 所長 井上 和仁(神奈川大学理学部生物科学科 教授)
大学連絡先: 0463-59-4111 (代)(内線:2241)
E-mail: inouek01@kanagawa-u.ac.jp
・神奈川大学 研究支援部 平塚研究支援課
TEL: 0463-59-4111(代)
E-mail: info-hshien@kanagawa-u.ac.jp
<報道に関すること>
神奈川大学 広報部 広報課
TEL: 045-481-5661(代)
E-mail: kohou-info@kanagawa-u.ac.jp
WEB:
http://www.kanagawa-u.ac.jp/
【リリース発信元】 大学プレスセンター
http://www.u-presscenter.jp/