2023年9月26日
PwC Japanグループ
PwC、年次調査「グローバル エンタテイメント&メディアアウトルック
2023-2027」を発表
世界のエンタテイメント&メディア(E&M)業界は広告収入の増加・デジタル化が追い風となり、
2027年には2兆8,000億米ドル規模の市場を見込む。一方で成長率は鈍化
- エンタテイメント&メディア(E&M)業界の収益は2027年まで毎年成長して2兆8,000億米ドル規模に成長。しかし、成長率は年を追うごとに低下する見込み。
- 消費者支出が伸び悩み、競争環境が変化する中でも、広告の収益は2027年に1兆米ドルに迫り、最大のE&Mセグメントになると予想。
- デジタルがE&M業界の収益に占める割合は2018年の55.2%から増加し、2027年にはほぼ4分の3を占める見通し。
- ゲームは、特にアジア太平洋地域において引き続き業界の成長を牽引する主要セグメントの一つであり、世界のゲーム収益は2027年までに3,120億米ドルに達する見込み。
- ライブイベントは2024年にパンデミック以前の最高水準まで回復し、その成長率はE&M業界全体の成長率を上回ると予想。
- 年間データ消費量が2022年から2027年までの間に3倍に増加し、世界のインターネットアクセスは1兆米ドル市場に迫る見通し。
世界のE&M業界にとって2022年は重要な転換点となりました。2022年の業界の総収益は2兆3,200億米ドルと5.4%増加しました。その増加率は経済や産業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの発生から立ち直りつつあった2021年の成長率 10.6%を大きく下回りました。
PwCの年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2023-2027」(
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/outlook.html)は13のE&M業界セグメントと53の国・地域を調査対象としています。個人消費の低迷を一因に、2027年までの今後5年間は収益の成長率が毎年低下すると予想しています。一方で、2027年にはE&M業界が2兆8,000億米ドル規模の産業に成長するとの分析結果も明らかにしています。
本調査は、デジタル化が進み、広告が一段と優位になる業界の状況を浮き彫りにしています。2027年には、E&M収益全体に占めるデジタルの割合が、2018年の55.2%から4分の3近く(70.8%)まで増加する見通しです。一方、データ消費量が2022年から2027年までの間に340万ペタバイト(PB)から970万PBへとほぼ3倍になるため、世界のインターネットアクセスは1兆米ドル規模に迫る市場になると予想されます。
地域別にみると、米国が引き続き世界最大のE&M市場であることに変わりはなく(2022年の8,190億米ドルから2027年には9,430億米ドルまで成長)、これに中国が続きます(3,880億米ドルから4,800億米ドルまで拡大)。中国の年平均成長率(CAGR)は米国の2.9%に対し、4.3%になると予測されます。
これまでの期待値が大幅に見直され、消費が低迷する中、企業はセグメントの主力となる分野(特に広告やゲーム)、生成AIなどの最新テクノロジー、またはアジアのように急成長が見込まれる地域などにおける成長を追い求めています。
競争環境が変化する中で広告収益は1兆米ドルに迫る
広告は依然として重要な成長セグメントの一つであり、2027年に1兆米ドルに迫ると予想されています。その収益は2027年に9,526億米ドルとなり、アウトルックが調査対象とする3つの調査指標(消費者、広告、インターネットアクセス)の中で最大となる見通しです。広告費は増えていく一方、ECサイトやビデオゲーム、ストリーミングプラットフォームなどのプレーヤーが増え、大手ソーシャルメディアや検索プラットフォーム企業から市場シェアを奪うにつれて、利益の取り分はさらに小さくなっていきます。
PwCドイツのグローバル エンタテイメント&メディアインダストリーのリードパートナーであるヴェルナー・バルハウス(Werner Ballhaus)は次のように述べています。
「COVID-19の感染拡大期にデジタル製品への需要が急増した後の直近2年間、 E&M業界は目覚ましい成長を実現しました。しかし、マクロ経済面の課題、業界の競争激化、特にデジタルサービスやデジタル体験の制作に注ぎ込める予算が削減されたことによって、収益と消費者の購買意欲は低下しています。E&M業界の企業が消費者を惹きつけ、成長を続けるには、サービスの提供を大きく変え、アジアなどの新興市場を開拓し、生成AIといった新たなテクノロジーを活用する必要があります」
マクロ経済面の圧力が消費者、新興市場の採算、M&Aやベンチャーキャピタルの取引を直撃
2022年にはマクロ経済面の圧力、地政学的な不確実性、インフレの問題が消費者を直撃し、企業は予想を見直すことや、再び社内に焦点を当てること、2023年以降の成長促進に向けた新たな方法を模索することを迫られました。E&M製品やサービスに対する消費者支出の2022年から2027年までのCAGRは、わずか2.4%にとどまると予想されます。成長率の低下は、世界のE&M市場において長期にわたって続いたM&Aやベンチャーキャピタルの取引の活況に、終止符を打つ一因となりました。
ゲームと生成AIなどの新興テクノロジーが業界の成長をリード
ゲームは依然として世界のE&M業界の主力セグメントの一つであり、特にアジア太平洋地域において、今後も引き続き成長の主な牽引役となるでしょう。ゲームの総収益は2023年の2,270億米ドルから2027年には3,120億米ドルまで拡大し、CAGRは7.9%になると見込まれます。同時に、業界各社は、業界の変革、規模拡大、効率化を促すために、特にコンテンツ制作、ビデオゲーム、他のエンタテイメント分野において生成AIなどの新しいテクノロジーの導入を進めています。業界の成長率に目を向けると、モバイルARの消費者収益はと最も大きく成長(CAGR26%)し、VRゲームの収益(CAGR19.5%)がこれに続くと予想されます。
ライブセグメントの成長はE&M業界全体を上回る見通し
ライブセグメントの成長はCOVID-19のパンデミック期における長期休止期間を経てプラス成長に転じ、E&M業界全体の成長を上回ることが見込まれます。ライブの収益は2027年までCAGRが9.6%となり、消費者支出全体のCAGRである2.4%の4倍に上ると予想され、ライブ体験の衰えることのない人気が浮き彫りとなっています。映画興行収入は2025年までにパンデミック前の水準になり、430億米ドルに達するでしょう(2019年の394億米ドルから増加)。中国は2020年および2021年に米国を追い抜きましたが、2024年までに再び世界最大の興行市場となる見通しです。世界のeスポーツチケット販売収益は2021年に倍増し、2022年には147.8%の成長となり、パンデミック前の水準まで回復しました。ライブ音楽や文化イベントの収益は、2024年に2019年のパンデミック前のピークを上回ると予想されます。
ヴェルナー・バルハウスは次のように締めくくっています。
「モバイルやデジタルテクノロジーへの依存度の高まり、業界の競争激化、規制環境の変化、新たなテクノロジーが引き起こす創造的破壊によって、この業界では今後数年間にわたり新たな緊張と可能性が生まれるでしょう。企業が市場シェアを維持し、成長を続けるには、業界のリーダーたちが、データプライバシーへの関心の高まりによって変化するグローバルな規制や地政学的な環境を引き続き意識しながら、どのように製品やサービスを作り、流通させ、収益化するのか、一層の創意工夫をしなければなりません」
PwCグローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2023-2027について
今年で24年目を迎えるPwC年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック」 は、世界のエンタテイメント&メディアの消費者および広告の支出に関し詳細な分析を行ったものです。このアウトルックには、53の国・地域における13のセグメントに関する過去5年間のデータと今後5年間の予測が盛り込まれています。これらのセグメントには、B to B、映画、インターネット広告、インターネットアクセス・データ消費、メタバース、音楽・ラジオ・ポッドキャスト 、新聞・一般雑誌・書籍、NFT、オーバーザトップ(OTT)ビデオ、屋外(OOH)広告、従来のテレビおよびホームビデオ、ビデオゲームおよびeスポーツ、バーチャルリアリティ(VR)・オーグメンテッドリアリティ(AR)が含まれています。アウトルックの全文は
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/outlook.html からアクセスできます。
以上
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