グッドデザイン賞は1957年から続く日本を代表する世界的なデザイン賞として、シンボルマークの「Gマーク」を通じて広く知られています。グッドデザイン賞を受賞したデザインは、良いデザインとして多くのユーザーやプロフェッショナルたちから信頼されるとともに、受賞者のビジネスチャンスを広げ、イメージやブランド力を高めることにも貢献しています。
2024年度は、「勇気と有機のあるデザイン」をテーマに掲げ、デザインに関わる人が勇気を持って一歩踏み出し、しなやかに美しく、場面や場所に応じた有機的な考えと体制によってアイデアを社会に実装していく、そのようなデザインの潮流をさらに探求してまいります。
本年度の審査委員は、昨年に引き続き、審査委員長を齋藤精一氏(クリエイティブディレクター)、審査副委員長を倉本仁氏(プロダクトデザイナー)、永山祐子氏(建築家)のほか、多彩なバックグラウンドを持つ、海外の審査委員を含めた約100名に審査委員を務めていただきます。
そのほか、今年1月に発生した「令和6年能登半島地震」を受け、石川県に本社(個人事業主の場合は主な拠点)を置く応募者からの応募については、一次審査料、二次審査料及び受賞パッケージ料を免除します。(ただし一部オプション等の実費は除く)。また、2024年度の石川県のグッドデザイン賞受賞者については、2025年3月31日(月)までに申し込まれた1年間のGマーク使用料を無料とするなど、復興の支援を行っていきます。
・「2024年度グッドデザイン賞」応募対象と応募の条件について
応募対象:商品・建築・アプリケーション・ソフトウェア・コンテンツ・サービス・システム・デザ
インを活用したプロジェクトや活動など。国内外、一般用/業務用は問わない。
応募条件:2024年10月16日(水)の受賞発表日に公表が可能で、かつ2025年3月31日(月)までにユーザーが購入または利用が可能な「もの」「こと」。
応募資格:応募対象の事業主体者(メーカーなど)、およびデザイン事業者。
応募費用:審査費、出展費など段階に応じた費用が発生。
応募方法:グッドデザイン賞の応募専用ページから、必要事項を5月23日(木)13:00までに登録。
https://archive.g-mark.org/entryguide/index.html
(グッドデザイン賞サイト:
https://www.g-mark.org/)
・主なスケジュール
4月1日(月)~ 5月23日(木):応募受付期間
10月16日(水):受賞発表[グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、グッドフォーカス
賞、グッドデザイン金賞、ロングライフデザイン賞]
11月 5日(火):受賞祝賀会、グッドデザイン大賞選出会および発表
11月 1日(金)~11月5日(火):受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2024」
・賞の種類
グッドデザイン賞は「グッドデザイン賞」と、特別賞の「グッドデザイン大賞」「グッドデザイン金賞」「グッドフォーカス賞」で構成されます。グッドデザイン賞受賞対象のうち、特に優れた100件が「グッドデザイン・ベスト100」となり、この100件から特別賞の各賞が選出されます。その中から最高賞である「グッドデザイン大賞」を決定します。
・「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」の応募受付も4月1日(月)から開始
長年にわたり人々から支持され将来にわたり価値を発揮するスタンダード・デザインに贈られる「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」の応募も、4月1日(月)から受け付けを開始します。
企業やデザイナーによる応募のほか、商品のユーザーなどからの一般推薦も可能です。
・受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2024」
本年度も、11月1日(金)から11月5日(火)まで、東京ミッドタウン(六本木)にて開催します。会期中は受賞作展示のほか、受賞商品を販売するポップアップストアや各種イベントを実施する予定です。
(「GOOD DESIGN EXHIBITION 2023」の様子)
・「2024年度グッドデザイン賞」主催・後援
主催:公益財団法人日本デザイン振興会
後援:経済産業省、中小企業庁、東京都、日本商工会議所、日本貿易振興機構(JETRO)、国際機関日本アセアンセンター、日本経済新聞社、NHK、World Design Organization
<参考資料>
2024年度グッドデザイン賞 審査委員長・審査副委員長メッセージ
審査査員長:齋藤 精一 クリエイティブディレクター | パノラマティクス 主宰
1975年神奈川県生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。03年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのを機に帰国。フリーランスとして活動後、06年株式会社ライゾマティクス(現:株式会社アブストラクトエンジン)を設立。社内アーキテクチャー部門「パノラマティクス」を率い、現在では、行政や企業などの企画、実装アドバイザーも数多く行う。2020年ドバイ万博 日本館クリエイティブ・アドバイザー。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。
勇気と有機のあるデザイン
今、デザインの持つ「さまざまなモノ・コトをより良くする」力は、あらゆる場面や場所でさらに求められています。
かつてデザインは物理的な存在に対してのみ機能すると考えられていた時代がありました。しかし、今ではモノを生み出すプロセスや思考自体にもデザインが要求されます。とりわけグッドデザイン賞は一つの創作物を多種多様な断面から分析し、さまざまな分野の審査委員が共通のアウトカムを持ち議論を重ね審査を行う、世界的にもユニークなデザイン賞です。
グッドデザイン賞がいま探求するデザインとは、すべての人が直面する個々で少しずつ違う問題・課題に対して改善の力を与えてくれる存在であり、生活をよりいっそう美しくしてくれる活動であると考えます。それは、社会を単に一つの大きな集団として捉えるのではなく、実践的創造に関わる人々が解像度高く分析・分解することで、はじめて見出すことができるものです。
2024 年度のテーマである「勇気と有機のあるデザイン」は、昨年度のフォーカス・イシューを編纂する過程で生まれました。デザインに関わる人が勇気を持って一歩踏み出し、しなやかに美しく、場面や場所に応じた有機的な考えと体制によって、アイデアを社会に実装していくこと。そうしたデザインの潮流をさらに探求し、さまざまな分野や部門から生まれるモノ・コトの、ときに大胆でときにささやかな、強いデザインを見つけたいと思います。
今年度も、よりよい社会を創り上げる「勇気と有機のあるデザイン」に出会えることを楽しみにしています。
審査副委員長:倉本 仁 プロダクトデザイナー | JIN KURAMOTO STUDIO 代表取締役
1976年生まれ。家電メーカー勤務を経て、2008年 JIN KURAMOTO STUDIO を設立。
プロジェクトのコンセプトやストーリーを明快な造形表現で伝えるアプローチで家具、家電製品、アイウェアから自動車まで多彩なジャンルのデザイン開発に携わる。金沢美術工芸大学客員教授、武蔵野美術大学非常勤講師。
状況を切り拓く力
今年もグッドデザイン賞が始まります。
昨年の審査会から見えてきた潮流から私たちが見出したテーマは「勇気と有機のあるデザイン」。
気候変動や大きな災害に脅かされる日々の暮らし。停滞感に包まれ、少しずつ、しかし確実に勢いを削がれていく経済、そして社会。世界の人々とともに共有できていたと信じていた良識は戦争・紛争に姿を変え、私たちに大きなショックを与えました。しかし、楽観的に未来は明るいと言いづらくなったこのような状況下でも「ものづくり」の過程を通して見えてくる人々の、より良い変化を望む力はとてもポジティブでまぶしく感じられました。
今、デザインに求められていることの一つに「状況を切り拓く力」があります。
停滞した状況に向かって声を上げる個人の勇気と強い意志でアイデアが提起され、それを受け止める形で企業や組織が有機的に手を組み、行動をともにして、社会に実装される大きなうねりへと発展させる。デザインと総称される活動にはそんな力があるのです。
私たちは創作者の描く事物が人々の暮らしに浸透してより良い変化を生み出すことを期待し、また同時にそれが自然環境や多くの動植物にとって過不足なくバランスする状態であって欲しいと願っています。社会に向けた大きな視野とともに、細部にこだわるものづくりへの執念にも出会いたい。
今年度もグッドデザイン賞を通して強い意思、多様な提言に触れられることを楽しみにしています。
審査副委員長:永山 祐子 建築家 | 有限会社永山祐子建築設計 取締役
1975年東京生まれ。1998年昭和女子大学生活美学科卒業。1998−2002年 青木淳建築計画事務所勤務。2002年永山祐子建築設計設立。主な仕事、「豊島横尾館(美術館)」、「女神の森セントラルガーデン(ホール・複合施設)」、「JINS PARK」「ドバイ国際博覧会日本館」「東急歌舞伎町タワー」など。ロレアル賞奨励賞、JCDデザイン賞奨励賞(2005)、AR Awards(UK)優秀賞(2006)、ARCHITECTURAL RECORD Award, Design Vanguard(2012)、JIA新人賞(2014)、山梨県建築文化賞、JCD Design Award銀賞(2017)、東京建築賞優秀賞(2018)、WAF部門優秀賞(2022)。現在、東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH」、大阪・関西国際博覧会ではパナソニックパビリオン、ウーマンズパビリオンなどの計画が進行中。
デザインの力の向かう先
昨年、私は「デザインの力を信じているか」という問いをめぐってメッセージを書きました。
今年は、そこから一歩進めて「デザインの力の向かう先」について考えたいと思います。
2023 年度のテーマは「アウトカムがあるデザイン」でした。そして、受賞作品全体の傾向、潮流から導き出されたのが、今年度のテーマである「勇気と有機のあるデザイン」。有機的に分野を超えてしなやかに連携しながら、勇気を持って踏み出す、そんな姿がイメージされます。その一歩を踏み出す方向がどこに向かっているのか。それがとても重要です。
最初に踏み出す先が、果たしてより良い未来に向かう道につながっているのか。方向を間違えばそれは大いなる労力の無駄遣いになってしまう可能性もあります。私たちはたくさんのアイデアを出し、デザインを決定します。それゆえに資源の無駄遣いと同じくアイデアの無駄遣いは見直すべきです。1 人の人間が考えられる量は時間的、質的にも限界があり、デザインの力を最大限発揮し大きく歩を進めていくには、方向を正しく見定める必要があります。一方で正しき道とはどちらなのかという難しい問いもあり、それを見定めていくには、トライ&エラーを繰り返しながら模索していくしかないというのも事実です。
いずれにしても多くの労力をかけなければ正しき道を見つけられず、そこからまた沢山の労力をかけてデザインをし、やっとゴールを目指すしかありません。1 人では限界はそこまでですが、多くの人のトライ&エラーが共有されればもっと早くそして遠くにゴールを設定することができるはず。それがこの賞の意義だと考えています。
皆でアイデアを寄せ合い、そのプロセスを共有し、他の誰かのヒントになる−−今年のグッドデザイン賞がそうした場になることを願っています。「勇気と有機のあるデザイン」をテーマに、デザインプロセスの中で、どのように困難に立ち向かい有機的に勇気を持って乗り越えたのか、ぜひ応募作を通じて共有していただければと思います。