2024年12月期 連結業績の概要について~過去最高の売上収益を更新~
「2024年12月期の連結業績は、売上収益は過去最高を更新しましたが、営業利益は4年ぶりの減益となりました。半導体の供給が改善し、二輪車のプレミアムモデルの供給が回復した一方、コロナ禍に高まったアウトドアレジャー需要は先進国を中心に落ち着き、マリン事業やRV事業、SPV事業については、需給の調整に取り組みました。
2024年は中期経営計画の最終年度にあたり、その計画に基づき各事業の戦略を推進するとともに、損益分岐点経営を念頭にコストダウンなどに取り組みました。結果、全社の成長性、収益性の各財務指標は目標を達成しました。セグメント別では、コア事業が安定的に収益を上げることができた一方、成長事業は市況悪化の影響を受け、成長率が低下しました。また、新規事業は新ビジネス、新会社の立ち上げなどが進捗しましたが、目標とする売上収益には至りませんでした。構造改革事業では、パワープロダクツ、プール、スノーモビル事業の整理、連結子会社ヤマハモーターエレクトロニクスの吸収合併など、当初計画していたものはすべて実行することができました。
2025年~2027年までの新中期経営計画では、ポートフォリオ経営をさらに進化させ、事業セグメントをコア事業、戦略事業、新規事業に変更します。将来的に、当社が保持する全ての事業がROIC 12.5%を上回る経営を目指します。」
□連結業績について
当連結会計年度の売上収益は、コア事業の二輪車のうち、ブラジル、インドにおいて販売台数の増加および台当たり単価が向上したことにより、2兆5,762億円と前連結会計年度に比べ1,614億円(6.7%)の増収となりました。
営業利益は、物価高騰に伴う人件費等販管費の増加、在庫評価減など事業構造の見直しに伴う費用やSPV事業やRV事業の一部固定資産の減損損失などを計上した結果、1,815億円と前連結会計年度に比べ624億円(25.6%)の減益となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減少に伴い、1,081億円と前連結会計年度に比べ504億円(31.8%)の減益となりました。
なお、当連結会計年度の為替換算レートは、米ドル152円(前期比11円の円安)、ユーロ164円(同12円の円安)でした。
財務体質については、ROEは9.7%(前期比5.9ポイント減少)、ROICは5.4%(同3.7ポイント減少)、ROAは6.8%(同3.5ポイント減少)となりましたが、中期経営計画期間累計目標はいずれも達成しました。親会社の所有者に帰属する持分は1兆1,616億円(前期末比858億円増加)、親会社所有者帰属持分比率は41.7%(同0.2ポイント減少)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は481億円のプラス(前期比782億円増加)となりました。
□セグメント別の業績について
【ランドモビリティ】
売上収益1兆7,154億円(前期比1,301億円・8.2%増加)、営業利益855億円(同420億円・33.0%減少)となりました。
二輪車事業について先進国の販売台数は、欧州主要国の需要が増加し、欧米の販売が増加した結果、前年を上回りました。新興国の販売台数は、需要が増加しているインド、ブラジルを中心に販売が増加し、前年を上回りました。その結果、事業全体の販売台数は増加となりました。売上収益は、ブラジル、インドにおける販売台数の増加および台当たり単価の向上により、増収となりました。営業利益は、新興国でのプレミアムモデルの供給改善により販売台数は増加した一方、物価高騰に伴う人件費や製品保証引当金繰入額等の販管費の増加により前年並みとなりました。
RV事業(四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)では、需要が前年を下回り、当社の出荷も下回った結果、減収となりました。営業利益は、販売減少ならびにモデルミックスの悪化、競争環境の激化に伴う販促費の増加、また固定資産の減損損失などを計上した結果、減益となりました。
SPV事業(電動アシスト自転車、e-Kit、電動車いす)では、国内向け電動アシスト自転車は、販売台数が前年を上回りました。一方、e-Kitは、メイン市場である欧州の需要停滞に伴い在庫調整局面が継続し、販売台数が減少した結果、減収となりました。営業利益は、e-Kitの販売減少や海外完成車の販促費の増加、固定資産の減損損失など、事業構造の見直しに伴う費用を計上した結果、減益となりました。
【マリン】
売上収益5,377億円(前期比98億円・1.8%減少)、営業利益878億円(同164億円・15.7%減少)となりました。
船外機の需要は、主要な市場である米国において、9月に政策金利の引き下げがあったものの、高い金利水準が続いていたことや物価上昇の影響により減少しました。当社販売のうち、新モデルは好調だったものの、船外機全体では減少となりました。ウォータービークルは、金利上昇を懸念した買い控えにより需要が減少した一方、当社の販売台数は、昨年の部品不足やサプライチェーン混乱による供給制約が改善されたことにより増加しました。この結果、マリン事業全体では減収・減益となりました。
なお、当連結会計年度の業績には、ドイツのマリン電動推進機メーカー Torqeedo GmbHの2024年4月~12月の業績を含んでいます。
【ロボティクス】
売上収益1,133億円(前期比115億円・11.4%増加)、営業損失30億円(前期:営業利益7億円)となりました。
サーフェスマウンターは、先進国の販売台数は減少したものの、中国などアジアにおける販売台数が増加した結果、当社の販売は増加しました。産業用ロボットの販売台数は増加したものの、モデルミックスは悪化しました。また、半導体製造後工程装置は生成AIや先端パッケージ向けの需要が増加し、販売が増加しました。これらの結果、ロボティクス事業全体では増収となりました。営業利益は、製造経費や開発費などの販管費の増加により、減少しました。
【金融サービス】
売上収益1,122億円(前期比257億円・29.7%増加)、営業利益227億円(同56億円・32.6%増加)となりました。
当社の売上収益は、販売金融債権の増加により増収となりました。営業利益は、金利収入の増加に加えて、前期に発生した金利スワップ評価損が当期は評価益に転じたことで増益となりました。
【その他】
売上収益976億円(前期比39億円・4.1%増加)、営業損失115億円(前期:営業損失56億円)となりました。
当社の売上収益は、ゴルフカーの北米での需要増加を背景に販売台数が増加した結果、増収となりました。営業利益は、パワープロダクツ事業関連商品の在庫評価減の影響などにより減益となりました。
□次期連結業績の見通しについて
2025年度の当社グループを取り巻く環境は、中東情勢をはじめとした地政学リスクや中国経済の低迷、米国新政権の追加関税などの各種経済政策に伴う世界経済への影響や為替変動など、不透明な状況が続く見通しです。
このような中、ランドモビリティ事業の新興国二輪車需要は堅調、マリン事業の船外機需要は緩やかに回復すると予想しています。
リスクとしては、アルミなどの資材価格の高騰や人件費およびエネルギーコストの継続的な上昇が予想されます。これらのリスクに対して、コストダウンや生産性向上に取り組んでいきます。また、SPV事業、RV事業については、収益性改善に向けた構造改革に取り組んでいくとともに、コア事業については、研究開発や新製品開発、生産設備の強化など持続的成長に向けて取り組んでいきます。
連結業績予想については以下のとおりとします。
為替レートについては、米ドル145円(当期比7円の円高)、ユーロ155円(同9円の円高)を前提としています。
□利益配分に関する基本方針および当期・次期の配当
当社は、株主の皆様の利益向上を重要な経営課題と位置付け、企業価値の向上に努めています。
当社は、中間配当と期末配当を行うことを基本としており、配当の決定機関は、中間配当については取締役会、期末配当については株主総会としています。中間配当は6月30日、期末配当は12月31日を配当の基準日として定款に定めています。
当期の期末配当は、1株につき25円の実施を2025年3月25日開催予定の第90期定時株主総会に上程する予定です。これにより、中間配当金(1株につき25円)を加えた年間配当金は50円となります。
2025年から始まる新中期経営計画では、業績の見通しや将来の成長に向けた投資を勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当を行います。
また、キャッシュ・フローの規模に応じて機動的な株主還元を実施し、中期経営計画期間累計で総還元性向40%以上を基本方針とします。
この配当方針を踏まえ、次期の配当については、年間50円(中間25円、期末25円)、100億円の自己株式の取得を予定しています。