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文部科学省が2025年(令和7年)4月8日(火)に発表した「令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰」において、「機関別管理機能を有する大学共通教材学習管理システムの開発」の業績により、国立情報学研究所(NII、所長:黒橋禎夫、東京都千代田区)情報社会相関研究系の古川雅子准教授、コンテンツ科学研究系の山地一禎教授、京都大学 情報環境機構IT基盤センター長の中村素典教授、法政大学 情報メディア教育研究センターの上田浩教授、群馬大学 総合情報メディアセンターの濵元信州教授が、科学技術賞(開発部門)(*1)を受賞しました。
【研究の背景】
インターネットの発展により、大容量の動画を手軽に発信することが可能になり、教育コンテンツの配信にも活用できるようになりました。こうした中、コスト面やいつでもどこでも受講できるという手軽さから、学習管理システム(LMS)を活用してeラーニング教材を学習してもらう、オンデマンド型研修のニーズが高まっています。このニーズは、コロナ禍をきっかけに、さらに高まっています。
一方で、資金や人材の制約がある中小規模の大学や学術機関にとって、単独でeラーニングシステムを整備するのは難しいといった課題があります。また、大学や学術機関では、情報セキュリティや研究データ管理などについての教育、研修が求められており、教材の内容は共通するものが多く、共通で使える研修システムの整備が求められていました。
【評価の対象となった開発成果】
こうしたニーズに応えるために、古川准教授らは下記の3つの特色を持つ大学共通教材学習管理システムを開発しました。
・共通教材の提供
国立情報学研究所が運用し、全国の大学や学術機関が参加する学術認証フェデレーション(学認)上にLMSを構築し、参加機関が共通で使える研修教材を整備しました。また、教材の一部を参加機関ごとのオリジナルなものにカスタマイズできる機能も備え、より充実した学習ができる環境を整えました。
・シンプルな受講者情報の管理
学認の認証基盤を利用することで、受講者は自分の所属する大学などのIDとパスワードでLMSを利用できるようになり、利便性が向上しました。また、大学や学術機関は、共通LMSを利用しながら自分の組織に所属するユーザーだけの受講状況などを管理できるなど、運営側にとっても運営効率の向上につながりました。
・LMS運用・高度化機能の共有
LMSを学認上に構築し、保守を国立情報学研究所が一手に担うことによって、参加機関の運営上の負担軽減につなげることができました。また、教材共有機能やAPIの提供など、高度化システムやツールの開発と提供も行い、参加機関ごとに、より高度な教育コンテンツの配信などを可能にしました。
この開発により、今年1月現在、国内の126の高等教育機関が参加する、国内最大規模の共通LMS基盤が形成され、今後もさらなるオンライン教育の拡充につながるものと期待されています。こうした、教育の質の持続可能な教育基盤を構築した業績が評価され、このたび、古川准教授らは、令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(開発部門)を受賞しました。
受賞に関する情報は以下の通りです。
■令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)
「機関別管理機能を有する大学共通教材学習管理システムの開発」
○古川 雅子(ふるかわ まさこ)
情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)
情報社会相関研究系 准教授
○山地 一禎(やまじ かずつな)
情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)
コンテンツ科学研究系 教授、オープンサイエンス基盤研究センター長
○中村 素典(なかむら もとのり)
京都大学 情報環境機構 IT基盤センター長 / 教授
○上田 浩(うえだ ひろし)
法政大学 情報メディア教育研究センター 教授
○濵元 信州(はまもと のぶくに)
群馬大学 総合情報メディアセンター 教授
●業績要約
近年、コスト削減と効率化の観点から、学習管理システム(LMS) を活用したオンデマンド型研修が普及している。大学では情報セキュリティや研究データ管理研修の実施が求められるが、LMSでの受講者管理や個人情報保護が課題だった。また、従来の大学LMSは学内限定で運用され、共通教材がなく、各大学が独自に教材を作成・管理していた。外部LMSを利用する場合は個別アカウント発行が必要であり、総じて運用・保守コストが高額だった。
本開発では、機関別管理機能を有する大学共通教材LMSを開発し、専門グループが提供する共通教材の利用・カスタマイズを可能にした。シングルサインオンにより学内共通IDでログインでき、個別アカウント発行が不要となり、受講者管理が効率化した。また、オープンソースLMSとコンテナ運用管理の自動化技術を活用し、コスト削減と運用負担の軽減を実現した。
本開発により、2025年1月現在、国内の高等教育機関126機関が本システムを導入し、国内最大規模の共通LMS基盤が形成された。
本成果は、大学間連携を促進し、教育の質の向上と持続可能な教育基盤の構築に寄与している。
●古川 准教授(筆頭者)のコメント
「この度は、科学技術賞(開発部門)という栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。学認LMSの開発・運用にあたり、ご協力くださった皆様に、心より感謝申し上げます。多くの関係者の皆様からのご支援のおかげで、テスト運用を経て正式運用を開始し、今日まで継続できておりますことを深く感謝しております。本システムが国内の高等教育機関で広く活用され、教育・研究活動の支援に寄与できることを励みに、今後もより良いシステム運用を目指して改善と発展に努めてまいります。改めまして、本賞の選考に携わられた皆様、ならびに本開発を支えてくださったすべての皆様に、心より御礼申し上げます。」
(*1) 科学技術賞(開発部門): 科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を表彰する文部科学大臣表彰のうち、我が国の社会経済、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った個人又はグループに贈られる。
<本件に関する問い合わせ先>
・大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所
総務部 総務企画課 企画・広報チーム
TEL:03-4212-2164
E-mail:media@nii.ac.jp
・学校法人 法政大学
総長室 広報課
TEL:03-3264-9240
E-mail:pr@adm.hosei.ac.jp
・国立大学法人 群馬大学
総合情報メディアセンター 広報担当
TEL:027-220-7170
E-mail:kk-ajyoho1@ml.gunma-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/