9月の炎上分析データ公開!炎上件数、196件(調査対象期間:2025年9月1日~9月30日)
一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所による最新の炎上事案分析
シエンプレ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都港区、所長:佐々木 寿郎)と共同で、調査対象期間に発生したネット炎上についての件数と、その内訳、分析結果を公開しました。https://www.siemple.co.jp/document/enjou_report_202509/
■調査背景
2025年1月28日、デジタル・クライシス総合研究所はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2025」(調査対象期間:2024年1月1日~2024年12月31日)を公開しました。
継続調査の結果報告として、今回は2025年9月1日〜2025年9月30日の調査対象期間に発生した炎上事案について、新たに分析しています。
○「デジタル・クライシス白書2025」
https://www.siemple.co.jp/document/hakusyo2025/
■調査の概要
1. 炎上主体別 発生件数
1-1. 炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
9月の炎上事案は196件でした。前月に比べ、45件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」94件(48%)、「一般人」36件(18.4%)、「メディア以外の法人」55件(28.1%)、「メディア」11件(5.6%)という結果でした。
前年平均比では、炎上事案は94件増加しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」が56件の増加、「一般人」が7件の増加、「メディア以外の法人」が29件の増加、「メディア」が2件の増加という結果でした。
炎上主体別の内訳は、「著名人」が61件の増加、「一般人」が20件の増加、「メディア以外の法人」が38件の増加、「メディア」が4件の増加という結果でした。
炎上内容別の内訳では、「情報漏洩」が3件(1.5%)、「規範に反した行為」が42件(21.4%)、「サービス・商品不備」が34件(17.3%)、「特定の層を不快にさせる行為(※)」が117件(59.7%)という結果でした。
前月と比較すると、「情報漏洩」は1件の増加、「規範に反した行為」は15件の減少、「サービス・商品不備」は20件の増加、「特定の層を不快にさせる行為」は51件の減少という結果でした。
※特定の層を不快にさせる行為:法令や社会規範に反する行為ではないものの、他者を不快にさせる行為(問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など)
前年の平均発生件数と比較すると、「情報漏洩」が2件増加、 「規範に反した行為」が34件増加、「サービス・商品不備」が26件増加、「特定の層を不快にさせる行為」が32件増加しました。
前年同月の件数と比較すると、「情報漏洩」が3件増加、「規範に反した行為」が35件増加、「サービス・商品不備」が26件増加、「特定の層を不快にさせる行為」が59件増加しました。
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案が54件と最も多く、次いで「非常識な行動(モラルのなさ)」に関する炎上事案が32件でした。
4-1. 法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)
炎上主体のうち、「法人等」に該当する炎上66件について、業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かった業界は「政治」業界で、16件(24.2%)という結果でした。
炎上の標的が「法人等」の場合に、上場企業か否かや、それぞれの従業員数について調査しました。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。
また、公共団体や政党のほか、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体は本項目の調査対象から除外しています。そのため、本項目における調査対象の総数は34件です。
5-1. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が主体となった事例が6件(17.6%)、「非上場企業」が主体となった事例が28件(82.4%)という結果でした。
前月と比較すると、「上場企業」の件数は2件減少、「非上場企業」の件数は変動なしでした。
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は横ばい、「非上場企業」の件数は10件増加しました。
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は1件増加、「非上場企業」の件数は18件増加しました。
なお、グラフの集計範囲外ですが、従業員数約7万人、売上高約11兆7,000億円といった大企業の炎上事案も確認されました。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授 山口 真一氏
9月に起きた炎上の中でも、特に印象に残ったのは、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の松尾さんによる発言をめぐる騒動でした。YouTubeのサブチャンネルで、「素人が何発信してんだ」「芸能人以外はSNSをやるな」といった趣旨の発言があり、動画はすぐに削除されたものの、発言部分が切り取られて拡散され、批判が広がりました。その後、謝罪動画が公開され、松尾さんは頭を丸めて反省の意を示しましたが、その対応の仕方も含めて賛否が分かれました。
もともとの発言は、後輩芸人がSNS上で誹謗中傷や不正アクセスの被害を受けたことへの怒りから出たものだと考えられます。松尾さんとしては、無責任な発信や他人を傷つける行為への警鐘のつもりだったのでしょう。しかし、「素人が発信するな」という言葉として広まってしまえば、日常的にSNSで情報を発信している一般の人々を否定するように捉えられ、「上から目線」と指摘されます。芸人という影響力のある立場からの発言だからこそ、その言葉の強さが、より多くの人の反発を呼んだのだと考えられます。
問題は、炎上後の対応にもありました。動画の削除が先に行われ、説明が後になったことで、「隠ぺいした」と受け止められました。謝罪動画では真摯な姿勢を見せていましたが、頭を丸めるという行為がパフォーマンスのように映った人も少なくありませんでした。
この一件は、企業にとっても他人事ではありません。SNSでの発信は、社員一人の言葉であっても、企業全体の価値や姿勢と結びついてしまう時代です。仮に別の意図があっても、受け取られ方を誤れば、一瞬で信頼を損なってしまいます。だからこそ、発信前に「誰に、どう響くか」を想像し、シミュレーションすることが欠かせません。特に、一般の利用者や顧客に向けて発信する際は、「素人」「一般人」など、立場を分けるような言葉には細心の注意を払う必要があります。
また、トラブルが起きた際には「まず説明し、次に謝罪する」という順番が大切です。削除しても、結局アーカイブが残るため、隠ぺいしようとしたという事実だけが残って百害あって一利なしです。事実関係を整理し、誤解がある場合にはそれを明確にし、改善策を示すことが重要です。
今回の件は、多くの人がSNSを使うようになった今の時代において、「発信すること」と「責任を持つこと」がどれほど難しく、そして大切であるかを改めて示した出来事だと感じます。誰もが発信者になれる社会だからこそ、何をどう伝えるか、その一言の重みを一人ひとりが考えることが求められているのだと思います。
■(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)
抽出したデータは以下の表1に基づき分類しました。
(表1)分類基準(炎上の主体)
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
公に情報を発信する機会の多いメディア関連の法人については、炎上に至る経緯に違いがあるため、他業種の法人と分けて集計しています。
2.分類基準(炎上の内容)
抽出したデータは以下の表2に基づき分類しました。
(表2)分類基準(炎上の内容)
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
3.分類基準(業界)
また、炎上の主体が「法人等」の場合、20の業界に分類しました。
なお、該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。
■一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 概要
研究所名 :一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
設立 :2023年1月20日
代表理事 :佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日 :2023年1月20日
公式HP :https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社 :シエンプレ株式会社"
