カーボンリサイクルのサプライチェーン構築に向け実証開始
ツネイシカムテックス、ファイトリピッド・テクノロジーズ、プラチナバイオ、リバネスが連携し、排ガスを活用した「低コスト種藻」生産モデルを確立へ
常石グループのツネイシカムテックス株式会社(本社:広島県福山市、代表:代表取締役社長 神原 文雄、以下「カムテックス」)は、株式会社ファイトリピッド・テクノロジーズ(本社:神奈川県横浜市、代表:代表取締役CEO 太田 啓之、以下「PLT」)、プラチナバイオ株式会社(本社:広島県東広島市、代表:代表取締役 奥原 啓輔、以下「プラチナバイオ」)、株式会社リバネス(本社:東京都新宿区、代表:代表取締役社長COO 髙橋 修一郎、以下「リバネス」)と共に、カムテックスの焼却炉から生じる排ガスを活用し、微細藻類ナンノクロロプシスの屋外培養を行い、「低コスト種藻」生産モデルの確立を目指す実証プロジェクト(以下「本プロジェクト」)を開始しました。本プロジェクトは、広島県がカーボンニュートラルの実現や県内産業の成長を目的に推進している「広島県カーボンリサイクル関連技術研究開発支援事業」において、カムテックスが採択を受けたプロジェクトの一環として実施するものです。
■ これまでの背景とプロジェクトの成果
カムテックスは、脱炭素化と資源循環型社会の実現を経営の重要課題と捉え、令和5年度より「広島県カーボンリサイクル関連技術研究開発支援事業」の採択を受け、PLT、プラチナバイオ、リバネスと共に、CO₂を吸収して有用物質を生産する微細藻類ナンノクロロプシスの培養研究を進めてきました。
これまでの研究(令和5・6年度)では、実験室レベルで培養条件の検討を進め、焼却炉の排ガスを直接吸収させた培養液においてナンノクロロプシスの順化現象を発見しました。さらに、この順化に関連する遺伝子の網羅的同定を行い、実用化に向けた重要な生物学的知見を獲得しました。並行してカムテックスの敷地内で行った実排ガスを用いた培養試験では、培養液のpH変化、酸素不足、低温・高温といった実環境ならではの課題を特定・克服し、良好な生育データを取得することにも成功しています。
■ 本プロジェクトの更なる推進に向けて
これまでの基礎研究で得られた知見を基に、本プロジェクトは「ラボスケール」から「実用化・事業化」のフェーズへと移行し、微細藻類による燃料や化成品生産のサプライチェーン全体における最大の課題「種藻の生産コストの革新」に挑戦します。
この課題解決に向け、令和7年10月よりカムテックスの敷地内で、以下の2点を統合した独自の「低コスト種藻生産システム」の屋外実証を開始しています。
1.低コスト・ハードウェア(装置)の開発
工場のフェンスや駐車場の未利用地にも設置できる、安価で拡張性の高い独自の「パネル型屋外培養槽」を開発・展開
2.低コスト・ソフトウェア(栄養源)の活用
カムテックスの廃棄物処理工場から排出される排ガスや廃棄物に含まれる未利用元素(CO₂、窒素、リンなど)を栄養源として直接利用する培養技術を確立
ナンノクロロプシスは、海水培養ができ高密度培養にも優れているため、食用油脂や高機能なオメガ3脂肪酸の生産が可能です。将来的には、このシステムを標準化し、瀬戸内地域の工場群への展開を構想しており、屋外実証はその中核となる技術を確立する第一歩となります。
■ 各社の役割
本プロジェクトの推進にあたり、4社は以下の役割を担います。
● ツネイシカムテックス株式会社: プロジェクト全体の統括と藻類の培養を行うと共に、実証フィールド
および排ガスや廃棄物より得られる未利用成分(CO₂、窒素、リンなど)の提供。中核技術となる「低
コスト・パネル型屋外培養槽」の設計・製作を主導します。
● 株式会社ファイトリピッド・テクノロジーズ: ナンノクロロプシスの屋外培養に関する豊富な知見に基づき、パネル型培養槽の仕様策定や、屋外環境における最適な培養条件(培地組成、モニタリング手法など)の確立を技術的に主導します。
● プラチナバイオ株式会社:これまでの研究を継続・発展させ、屋外の過酷な環境(高温、強光、排ガス阻害物質)に適応する高性能藻類の開発に向けた育種基盤研究を担当。ストレス環境下での遺伝子発現解析を通じてゲノム編集の標的遺伝子を探索し、将来の環境耐性株の構築を目指します。
● 株式会社リバネス:広島県カーボンリサイクル関連技術研究開発支援事業におけるプロジェクト全体の
マネジメント。本プロジェクトの事業化に向けた推進、ならびに開発した培養システムの他地域への展開
に向けた戦略立案を担います。
■ 今後に向けたメッセージ
本プロジェクトは、カムテックスが持つ広大な実証フィールドや焼却炉から生じるCO₂と、高い専門技術を持つベンチャー企業(PLT、プラチナバイオ)の技術・知見を組み合わせた新しい「知識製造」の形です。この連携を通じ、「廃棄物」を「資源」へと転換するカーボンリサイクルモデルを広島の地から構築し、瀬戸内地域における藻類培養の推進を加速させ、新産業の創出に貢献してまいります。
