2025年10月、鳥取県内初の地域DMOとして登録―「大山観光局」設立ストーリーにみる産業振興としての観光

地域創生ソリューション株式会社

鳥取銀行・地域創生ソリューション・JTB総研とのタッグで「稼ぐ観光地域づくり」を推進

 地域創生ソリューションでは、観光ファンドの運営を通じて国内各地で投資を行い、観光振興を通じた地域活性化を図っています。ファンドは地域の枠を超え47都道府県全てを応援しており、日本を代表するデベロッパー、航空会社、旅行会社、ホテルオペレーター、金融機関等のネットワーク・ノウハウを最大限に活用し運営しています。また、観光産業~地域創生は裾野が広く多くの可能性に溢れており、ホテル・旅館等の宿泊施設から観光産業を高度化するベンチャー企業まで、多様な案件の支援を行っています。

 またこのほか、主体的な関与による地域観光振興支援も推進しています。一例として鳥取県では、鳥取銀行・JTB総合研究所とともに県西部の大山町にて地域DMO「一般社団法人大山観光局」の設立・運営支援を行っています。
これは「地元の観光中間組織をDMOへとステップアップし、戦略的な観光地経営を行うことで、観光振興から地域経済効果の拡大を目指す」という活動で、「大山観光局」は2025年10月に鳥取県内初の地域DMOとして登録されました。

 現在、多くの地域で人口・経済衰退や地元産業の後継者不足が課題となっていますが、大山町も例外ではなく、町内観光事業者へのアンケートでは、後継者不足を理由に閉鎖を予定していると回答した事業者が24.4%にのぼりました※1。こうしたなかで、地元金融機関・観光ファンド・観光シンクタンクがタッグを組んで町をサポートし、地域の魅力を再発見・再発信しながら「稼ぐ観光地域づくり」に取り組んでいます。ここでは、観光をきっかけとした経済活性化手段として注目を集めるDMO運営の一例として、「大山観光局」設立の背景、現在の取り組み、そして今後の展望をご紹介します。
※1:令和5年度大山町観光地域づくり連携体制構築業務「大山町の観光に関する事業者アンケート調査」
 
  • DMOとは?―地域観光産業のステップアップ
 DMO=Destination Management / Marketing Organizationは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協働して観光地域づくりを行う法人を指しており、観光振興へ向けた取り組みとして注目を集めています。

 観光庁では日本版DMO=観光地域づくり法人の設立を推進しており、その概要を「地域の『稼ぐ力』を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する『観光地経営』の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」と規定しています。

 観光庁の支援にあたっては、「候補DMO」への登録を経て、さらに登録要件を満たす法人は「登録DMO」としてステップアップします。
 
  • 「大山観光局」の設立に至るまで―観光を通じて町をサポートするタッグ組成
 大山町は、鳥取県西部に位置する町で、中国地方最高峰である霊峰「大山」を擁しています。大山は日本最古の「神坐す山」として古くから信仰の対象であり、地域の豊かな食文化、美しい風景、独特な風習を生み出しました。また、こうした環境から、かねてより観光地として高い人気を誇るエリアです。

 
 一方で、人口や経済の衰退、地元産業の後継者不足とその対策は地域の課題となっており、なかでも大きな影響力を持つ「産業振興としての観光」とその環境整備は、地元金融機関であり、地域課題解決へ協働する立場である鳥取銀行とタッグを組んで推進しています。

 鳥取銀行は『地域社会の未来を「創る」「守る」「支える」』をパーパスとし、中期経営計画「for the FUTURE ~未来に向けて~」では「新たな地域価値の創造」を重点テーマのひとつとして定めています。また、地域創生ソリューションの設立(2018年)以来ファンドの出資元となっていることから、豊富な知見・情報・リレーションを有する地域創生ソリューションもジョイン。さらに、地域創生ソリューションの出資元であるJTBグループのJTB総合研究所も参加し、地元金融機関・観光ファンド・観光シンクタンクのタッグ体制が組成されました。

 こうして、観光振興を通じて大山町の将来を見据えた組織づくりがスタートしました。
 
  • タッグ体制でサポートを行う意義―それぞれの得意分野を結集
 先述の通り、鳥取銀行では「新たな地域価値の創造」を重点テーマとして定めています。観光産業の育成は、「エリア価値向上」「地域課題解決型の新事業創出支援」「地域資源のブランド化」という“地域の創生”にコミットする3つの視点に合致するポイントであることから、「大山観光局」の積極的なサポートを展開しています。

その上で、地域金融機関=鳥取銀行は地域の情報やプロトコルを理解するゼネラリストとして、観光ファンド=地域創生ソリューションは業界トップの知見・情報・関係性が集積するプラットフォームとして、観光シンクタンク=JTB総合研究所は域外からの目線をもって市場まで繋げる役割として、それぞれの得意分野を結集し「大山観光局」にコミットしています。
 
  • 「登録DMO」としての道筋―厳格な基準を満たし認定へ
 「観光振興を通じて大山町の将来を見据えた組織づくり」としてDMO設立を目指す一方、登録認定においては観光振興の事業計画高度化が必須となり、かつ厳格な基準を満たす必要があります。基準を満たした計画でなければ登録に至らない一方、計画のブラッシュアップによって経済活動としての観光振興の道筋がよりクリアなものとなるほか、登録によって観光庁の支援を受けることができます。

 こうした点は大きな壁となりましたが、2023年度より登録を目指した動きを本格化させ、タッグ体制で重点戦略ターゲットの選定支援や地域ブランドコンセプトの設定支援等に注力して取り組んできました。
 
 これまでの国内需要調査において、大山町がアドベンチャートラベルと親和性が高いことが把握できたため、ツアー造成業務の検討を通じて高関心層を重点ターゲットに設定。さらに、2024年の世界におけるアドベンチャートラベルの市場規模は約1兆1,600億ドルと試算されており※2、高付加価値なインバウンド訴求を意識したコンテンツ開発にも注力しています。

 また、地域ブランドコンセプトは下記のように設定されています。

「大山さんのおかげ~世界に誇る霊峰大山の自然・歴史・文化の恵みをおすそわけ~」

日本最古の「神坐す山」として古くから信仰の対象であった霊峰「大山」。中腹に成立した大山寺の本尊「地蔵菩薩」は、山頂の池から現れたとされ、水を恵み、現世の苦しみから万物を救う仏として、地域の人々の崇敬を集めました。大山から流れ出した水は、豊かな食文化、美しい農村の風景、独特な風習を生み出しました。人々は日々仰ぎ見る大山に親しみを込めて「大山さん」と呼び、その「おかげ」に感謝の念をささげる豊かな暮らしが今も息づいています。太古から変わらない「大山さんのおかげ」は、訪れる人々の心も豊かにします。私たちはその恵みをお裾分けいたします。

 こうしたターゲットやコンセプトの明確化の結果、2025年10月に「大山観光局」は鳥取県内初の地域DMO として登録認定に至りました。
※2:一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会調べ
 
  • 地域との連携―登録DMOを活かしたエリア情報発信・拡散
 DMOを通じた観光振興にあたっては地域関係各所との連携が不可欠です。その際にリレーション構築が大きな困難として立ちはだかりましたが、鳥取銀行・地域創生ソリューション・JTB総合研究所のタッグ体制でサポートを行うことにより、多様な関係先・ソリューションへのマッチングを実現しています。


 町内には旅館、ホテル、ペンション、民宿など多様な宿泊施設が38件存在しており、1,340名が宿泊可能です。また、商工会は約350社が会員となっています。観光振興を通じて町を盛り上げるためには、こうした事業者の賛同を得た上で、「地元をどのように知ってもらうか」が重要なファクターとなります。

 先述の通り、地域DMOの登録を目指す過程のなかで、重点ターゲットとしてアドベンチャートラベル層を設定。そして、その層と地域を繋ぎ、また地域がポジティブに旅行者を受け入れられるためのブランドコンセプトとして「大山さんのおかげ~世界に誇る霊峰大山の自然・歴史・文化の恵みをおすそわけ~」を制定しました。2025年度は観光庁の「地域観光魅力向上事業」に採択され、宿坊、ウォーキングツアー、Eバイクでのダウンヒル、農園体験、出張シェフによるディナーなど多くの地域事業者を巻き込んだ旅行商品造成にチャレンジしています。旅行商品の販売に向けた検討を通じたアプローチは、地域を象徴する情報拡散となること、また、地域事業者のモチベーション向上につながることが期待されています。

 タッグ体制によりこうした構造組成のサポートを行い、その上で大山観光局がハブとなって町内外の多様な力を結集することで、魅力発掘・発信に取り組んでいます。

 
  • 今後の展望―より戦略的な観光地経営を実践できるDMOへ
 地域DMOとしての登録を経て、今後はアドベンチャーツーリズム層によるさらなる大山町の認知、販売、評価の獲得強化が課題となっています。そのためには、地域との連携を強化しながら、高付加価値なインバウンド観光地づくりを推進する必要があります。

 また、大山隠岐国立公園大山蒜山地域は「国立公園における滞在体験の魅力向上先端モデル事業」に採択されていることから、国・行政との関係性強化もポイントです。
 
 こうした取り組みを経て、中長期的には観光地経営ならびにその戦略を実践できるDMO組織としての成熟が期待されています。「観光を通じて新たな人材・資源・資金の投資が起こる町」の実現に向け、より一層戦略的な観光地経営の実践が重要です。

 それにあたり、想いを同じくする鳥取銀行、地域創生ソリューション、JTB総合研究所も引き続きタッグを組んでサポートしていきます。

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