創価大学理工学部の戸田龍樹教授は、11月21日に新上五島町役場(長崎県南松浦郡新上五島町)で開催された「陸と海を繋ぐ“栄養塩循環システムによる藻場再生実証実験”成果報告会」で、これまでの取り組みに関する成果報告を行った。この実証実験は、磯焼けをおこした海に藻場を再生するために2014年から2016年まで実施したもの。新上五島町からの委託を受け、同町と創価大学、長崎大学等がプロジェクトチームとして取り組んだ。
報告会には新上五島町の江上悦生町長をはじめ、漁業関係者や町民の約100名が参加。香川大学の多田邦尚教授が基調講演を行い、その後、創価大学の戸田教授のほか、プロジェクトチームの長崎大学、太平洋セメント株式会社の代表から、実証実験の取り組みについて報告があった。
全国で初めての事業として、汚泥処理センターから、特殊な吸着剤を使用して回収したリンを海中に供給したところ、海藻の成長が早まることが報告された。
戸田教授は実証実験の成果をふまえつつ、「食害や浮泥対策の課題はあるものの、今後は、海中にリンを供給する施設を設置し、これまで捨てられていたリンを使って、海藻を増やす実験を継続して行いたい」と述べた。
最後に滋賀県立大学の伴修平教授から、今回の実験の成果について「皆さんの努力に非常に感心しました。リンをゆっくり供給すると、赤潮を発生させることなく、海藻の成長が促進され自然環境に影響がないことが判明した点は、藻場再生にいかせる手法と考えられます。今後の活動に期待したい」とコメントが寄せられ、参加者との質疑応答も行った。
報告会に参加した江上町長は、「創価大学、長崎大学をはじめ、関係者の方々に深く感謝申し上げます。磯焼けが深刻化し、決定打がない状況にあって、今回の研究成果が水産業発展の一助になると思っております。今後も、いっそうのご支援をお願いします」と期待をこめて語った。
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