世界の医療団 日本 、ロヒンギャ難民のコミュニティ・レジリエンス支援を強化
世界の医療団 日本(理事長:ガエル・オスタン)は、バングラデシュのロヒンギャ避難民(以後ロヒンギャ)が滞在する難民キャンプにて、保健衛生問題と災害対策に対するコミュニティ・レジリエンスを強化するプロジェクトを開始します。
2017年8月25日に発生した武力衝突を機に、ミャンマーラカイン州に住むイスラム教少数民族ロヒンギャ70万人以上が国境を越え、その大半はバングラデシュ・コックスバザール地域の難民キャンプへと流入しました。
流入人口の規模とその速度から支援機関、ホストコミュニティの受け入れ態勢もままならないまま、キャンプは過密化、劣悪な衛生環境と食糧不足による栄養不良から、住民の多くが感染症をはじめとした健康のリスクにさらされています。また、サイクロンが多発する時期や雨季においては、豪雨、洪水、強風、地滑りなどによる人的被害や住環境の悪化が確認され、事前対策、水や病原媒介生物を介した感染症の発生と拡大への対策と対応も継続的な課題となっています。
一方で、ミャンマーへの帰還プロセスは一向に進まず、当事者であるロヒンギャ難民の思いとはかけ離れた帰還への取り組みに、キャンプでの生活は更に長期化することが予想されています。
世界の医療団は、2017年12月よりバングラデシュ・コックスバザール県ウキア郡に位置するクトゥパロン避難民キャンプにおいて、アウトリーチ活動を通じ、子ども、妊産婦を中心とする女性、高齢者など、保健医療サービスへのアクセスが制限される人々を一次医療につなげる活動を行ってきました。結果、支援対象者の6割が医療につながったものの、人々のストレスのはけ口がより弱い立場にある女性や子どもに向けられ、それら弱い立場にある人々の身体的心理的健康は、男性や家族の意思決定に左右されるところが大きいことがわかりました。また、14-17歳の青少年については、教育や雇用機会へのアクセスが極端に制限されており、犯罪に巻き込まれるケース、メンタルヘルスケアのニーズが高いことも確認されました。
活動地域の対象者を医療へつなぐ活動により新たなニーズが確認されたことで、世界の医療団は、保健衛生問題と災害に対するコミュニティ・レジリエンスの強化を図るプロジェクトを新たに開始します。「ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト」は、キャンプに住む人々の保健衛生と災害に関する意識と行動を向上させることで、保健衛生と災害に対するコミュニティの対応力(コミュニティ・レジリエンス )を高めていくことを目的としています。
活動地域は、クトゥパロン避難民キャンプ内の20地域 (2,177世帯 )、脆弱性が高いと言われるグループだけではなく、男性や青少年も含む対象地域の住民全員が対象者となり、彼ら住民全員が単なる支援対象者ではなく、コミュニティ活動に積極的に携わるアクターという位置づけになっています。これまで活動に携わってきたバングラデシュ人コミュニティ・ヘルスワーカーとロヒンギャ・ボランティアをコミュニティモビライザー(CM)チームとして再編成するほか、新たに40人のロヒンギャ・ユース(14~17歳)をプロモーターとして育成、特に子ども(5-11歳)や青少年(12-17歳)へとアプローチする活動を担います。
世界の医療団日本「ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト」担当コーディネータの具 貴香は、次のように話しています。
「約70万人のロヒンギャ避難民がコックスバザールの難民キャンプに辿りついて1年が経とうとしています。彼らにとって、ここはミャンマー政府による暴力から守られているという点では安住の地ですが、その暴力の後遺症やトラウマから未だ逃れられずにいます。そしてこの物理的に離れた地においても、ミャンマー政府から受けてきた迫害は彼らの目の前に立ちはだかり、安全・健康に暮らすための移動、基礎的な教育、対価を得る労働など、人が当然享受すべき自由や選択もが制限されています。毎日60人の新生児が誕生し、子どもたちが刻一刻と成長する中、多くの人々が個人や家族の将来を描けず、不安や葛藤を募らせています。それでも、人への優しさや笑顔を絶やさずしなやかに生きるロヒンギャの人々の姿は、私たちをも強くし奮い立たせてくれます。バングラデシュの人々、ロヒンギャのボランティアやユースとともに、彼らの闘いを支えていきたいと思います」