アストラゼネカ 好酸球性の重症喘息患者さんを対象とする 長期第III相BORA試験において ファセンラが一貫した安全性および持続的な有効性を示す
ファセンラでの治療を継続した血中好酸球数300/μL以上の患者さんの74%が
治療2年目において喘息増悪を起こさず
試験結果は欧州呼吸器学会(ERS)国際会議2018で発表
アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は2018年9月18日、第III相延長BORA試験の結果を発表しました。本試験は、ファセンラ(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、以下、「ファセンラ」)を重症喘息の追加の維持療法として長期投与する場合の安全性および有効性を評価する試験で、先行の主要第III相試験SIROCCO試験、CALIMA試験のいずれかを完了した好酸球性の重症喘息患者さんを対象にしています。BORA試験では、ファセンラを56週間追加投与した結果、安全性および忍容性はプラセボ対照試験であるSIROCCO試験およびCALIMA試験で得られた結果と同様で、有害事象全体または重篤な有害事象の発生頻度は増加しませんでした。またSIROCCO試験またはCALIMA試験で確認された、ファセンラの有効性評価項目の改善は、2年目の追跡調査期間中においても同様に確認されました。SIROCCO試験またはCALIMA試験でのプラセボ投与群で、その後BORA試験でファセンラを投与された患者さんは、先行試験でファセンラを投与された患者さんと同様の改善効果が認められました。
SIROCCO試験またはCALIMA試験、およびBORA試験においてファセンラを8週ごとに投与され、ベースライン時の血中好酸球数が300/μL以上の患者さん(第III相試験における主要な有効性評価集団)の74%は、投与2年目のBORA試験実施期間中に喘息増悪を起こさず、呼吸機能および喘息コントロールの改善が維持されました1。
ファセンラを8週ごとに投与され、ベースライン時の血中好酸球数が300/μL以上の患者さんのうち、投与1年目に喘息増悪を起こさなかった患者さんは、SIROCCO試験において65%、CALIMA試験において66%でした(プラセボ群ではともに49%)2,3。
本BORA試験のデータは、同日にフランス・パリで開催中の2018年欧州呼吸器学会(ERS)国際会議での最新の口頭セッションにおいて発表されました。
グローバル医薬品開発担当エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフメディカルオフィサーであるSean Bohenは、次のように述べました。「このBORA試験のデータは、長期治療の安全性を示すと共に、喘息コントロールを改善する持続的な有効性を備えた治療が必要となる好酸球性の重症喘息患者さんにとって重要なニュースです。」
本試験の治験統括医である、ウィスコンシン大学医学・公衆衛生学部アレルギー・呼吸器・救命救急部門医学教授のDr. William Busseは、次のように述べました。「臨床医としてBORA試験の結果を大変うれしく思います。重症喘息患者さんおよび医師にとっては、ファセンラでの治療で得られている良好な結果が治療2年目でも維持されるという自信を与えるものだからです。ファセンラは、長期にわたり重症喘息患者さんの治療効果を改善する生物学的製剤です。」
血中好酸球数が300/μL以上の患者さんで、ファセンラの8週ごとの投与を継続した患者さんにおける年間喘息増悪率は、SIROCCO試験およびCALIMA試験での結果と同様でした(BORA試験で0.46、SIROCCO試験で0.65、CALIMA試験で0.66)2,3。呼吸機能、喘息コントロール、喘息関連の生活の質(QOL)スコアおよび全般的な健康関連QOLスコアは、ファセンラを継続投与された患者群で維持し、SIROCCO試験またはCALIMA試験でプラセボ群だった患者群で改善しました1。ファセンラを継続投与された患者群では、ほぼ完全な好酸球の除去が維持されました1。
BORA試験において最も報告が多かった有害事象(5%以上)は、上気道感染、喘息の悪化、頭痛、気管支炎、急性副鼻腔炎でした。
ファセンラはアストラゼネカ初の呼吸器疾患領域の生物学的製剤で、重症喘息の追加維持療法として米国、EU、日本、その他数カ国において承認されています。
重症喘息について
喘息は世界3億3,900万人の人々に悪影響を与えており4,5、喘息患者さんの最大10%は標準治療である高用量の喘息コントロール薬による治療にもかかわらず症状のコントロールが不良の重症喘息であり、経口ステロイド薬の継続使用が必要になる場合があります6,7,8。コントロール不良の重症喘息は死に至ることもある耐え難い疾患で、患者さんは頻回の症状増悪や、呼吸機能の低下、生活の質(QOL)の著しい制限を余儀なくされます6,8,9,10。コントロール不良の重症喘息患者さんの死亡リスクは重症喘息患者さんより高いとされています。
コントロール不良の重症喘息は、経口ステロイド薬依存を引き起こす可能性があります。全身性ステロイドの投与によって、体重増加、糖尿病、骨粗鬆症、緑内障、不安感、うつ、循環器疾患および免疫抑制を含む重篤な短期または長期の副作用を起こすことがあります11,12,13,14。さらに重症喘息患者さんは、患者人口の10%ほどの罹患率にもかかわらず、疾患による身体的負担ならびに社会経済的な負担が大きく、喘息関連費用の約50%にあたるとも言われています7,15。
好酸球フェノタイプは好酸球性の重症喘息の治療の効果を高めるマーカーの役割をしますが、その臨床的特徴として、ベースラインでの血中好酸球数高値、頻繁な喘息増悪歴、経口ステロイド薬の常用、鼻茸の既往などがあります8,16。
ファセンラ(R)皮下注30mgシリンジ(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え))について
ファセンラは、ADCC(抗体依存性細胞傷害)活性により、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が、血中、気道の好酸球を直接的かつ速やかに除去するモノクローナル抗体です17,18。第I相試験により、血中好酸球が24時間以内に速やかに除去されることが確認されています。また、気道組織中、喀痰中の好酸球も除去することが確認されています。好酸球は人体の免疫システムの一つである白血球の一種で、重症喘息患者さんの約50%で血中好酸球値が高い傾向があります9,19。血中好酸球値が高くなると、気道炎症および気道過敏性を引き起こし、喘息症状の重症化、呼吸機能の低下や、喘息増悪リスクが上昇します7,9。
ファセンラは、アストラゼネカの呼吸器疾患領域における最初の生物学的製剤で、現在、米国、EU、日本、その他数カ国において、重症喘息治療の追加療法として承認されており、数カ国で承認申請中です。ファセンラは、固定用量があらかじめ充填されたプレフィルドシリンジの注射剤で、初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射します20 。ファセンラは現在、重症の鼻ポリープ症に対する治療薬としても検証されています。
ファセンラは、協和発酵キリンの完全出資子会社であるBioWa社から導入され、アストラゼネカのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンと協和発酵キリンにより開発されました。
BORA試験について
BORA試験は、喘息患者さんを対象としたファセンラの WINDWARDプログラムの6つの第III相試験(他、SIROCCO試験、CALIMA試験、ZONDA試験、BISE試験およびGREGALE試験を含む)の1つです。BORA試験では、3つの主要第III相試験(SIROCCO試験、CALIMA試験、ZONDA試験)のうちいずれかを完了した患者さんを対象とした、無作為化二重盲検並行群間第III相延長試験です21。現時点の解析は、喘息増悪を検証したプラセボ対照試験SIROCCO試験(48週)およびCALIMA試験(56週)に参加した1926名の患者さんの結果です。先行試験で実薬投与群患者さんは、引き続きファセンラ 30 mgを4週ごと(Q4W)、または8週ごと(Q8W、最初の3回は4週ごと)に皮下投与する追加療法を継続し、先行試験でプラセボ投与群だった患者さんは、ファセンラのQ4Wか Q8Wのいずれかに1:1の割合で再度無作為に割り付けました。
BORA 試験の目標症例数の登録完了後、長期治療を希望する成人患者さんは、BORA 試験で計画されていた追跡調査を完了することなく、別の非盲検の長期延長試験へ継続して移行できる選択権がありました。短期(28週)の小規模ZONDA試験における約半数以上の患者さんが、BORA試験で計画された56週治療期間の完了前に追加延長試験に移行しました。そのため、ZONDA試験の登録患者さんは本BORA試験の本解析には含まれておらず、別途、解析計画書に沿って報告される予定です。
BORA試験の青少年を対象とした最大108週投薬の追加解析結果は、2019年後半に発表する予定です。
アストラゼネカにおける呼吸器疾患について
呼吸器疾患はアストラゼネカの注力疾患領域のひとつで、製品ポートフォリオは年々成長し、2017年には世界中の1,800万人以上の患者さんに当社製品をお届けしました。アストラゼネカは、吸入配合剤を中心に、特定の疾患治療のアンメットニーズに応える生物学的製剤や、疾患原因を解明する革新的なサイエンスを通じて、喘息およびCOPD治療を向上させることを目指しています。
アストラゼネカは、呼吸器領域における40年の歴史をさらに発展させており、当社の吸入器技術はドライパウダー吸入器(DPI)、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)、ならびにAerosphere Delivery Technologyなどに及びます。また、当社の生物学的製剤には、現在好酸球性の重症喘息治療薬として承認され、重症鼻ポリープ症の治療薬として開発中のファセンラ(抗好酸球、抗IL-5受容体α抗体)、および第IIb相試験の主要評価項目と副次評価項目を達成し、第III相試験を実施中の tezepelumab(抗TSLP抗体)が含まれます。アストラゼネカは、肺上皮組織、肺免疫および肺再生に焦点を当てた、基礎疾患のドライバーを解明する研究に注力しています。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。
Reference
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