日本製鉄 第31回日本製鉄音楽賞受賞者決定
《フレッシュアーティスト賞》副賞300万円
川口成彦 かわぐち なるひこ(フォルテピアノ)
【贈賞理由】
2018年のショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位入賞で広く知られる存在となったが、それ以前から確固たる音楽観での活動を展開しており、近年はコンサートや録音においてさらに視野の広い音楽表現を見せている。一般的な先入観からの“古楽器”という枠を超えた、それでいて揺るぎない基礎力からの音楽。豊かな感性と知識力ゆえ、益々楽しみな逸材である。(上田弘子選考委員)
《特別賞》副賞100万円
猪狩光弘 いがり みつひろ(ステージマネージャー)
【贈賞理由】
猪狩さんは永年にわたってステージマネージャーとして演奏会を舞台裏から支え続け、細やかな配慮の行き届いた周到な仕事ぶりによって演奏家から絶対的な信頼を得てきた。サントリーホール在任中の功績はもちろんのこと、日本の楽壇全体に寄与してきたプロフェッショナルな裏方としての活動は高く評価されるべきであり、当音楽賞の特別賞にまことに相応しい。(寺西基之選考委員)
なお、第31回日本製鉄音楽賞の贈呈は、2021年3月22日(月)に日本製鉄株式会社本社において行います。また、贈呈とは別に、受賞記念コンサートを、2021年7月に開催予定です。
《受賞者経歴》
第31回日本製鉄音楽賞 フレッシュアーティスト賞
川口 成彦(フォルテピアノ)
1989年4月29日、岩手県盛岡市に生まれ、横浜で育つ。
東京藝術大学/アムステルダム音楽院の古楽科修士課程修了。フォルテピアノを小倉貴久子、リチャード・エガー、クラヴィコードをメノ・ファン・デルフトの各氏に師事。現代のピアノに限らず、フォルテピアノやチェンバロ、クラヴィコードといった歴史的な鍵盤楽器での演奏活動を広く展開している。2013年第1回ローマ・フォルテピアノ国際コンクール〈M. クレメンティ賞〉優勝、2016年ブルージュ国際古楽コンクール・フォルテピアノ部門最高位、2018年第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位をはじめ数多く受賞。フィレンツェ五月音楽祭、モンテヴェルディ音楽祭(クレモナ)、ユトレヒト古楽音楽祭、ゴルドベルグ音楽祭(グダニスク)、「ショパンと彼のヨーロッパ」音楽祭(ワルシャワ)等、欧州の音楽祭にも出演を重ねる。アムステルダム国立美術館の特別展示ではスクエアピアノによる録音が使用される。2019年にはマスカット(オマーン)のRoyal Opera House Of Musical Arts のオープニングイベントに招かれ、王族の前で演奏を行う。協奏曲では18 世紀オーケストラ、{oh!} Orkiestra Historyczna(カトヴィツェ)などと共演。2018年10月にはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のメンバーと共に室内楽形式によるピアノ協奏曲のリサイタルをオランダにて開催。またモダンピアノでは2016年アメリカで世界的オーボエ奏者ニコラス・ダニエルと共にプーランクの《オーボエ、バソンとピアノのための三重奏曲》の最終稿の世界初演を行っている。演奏はこれまでにラジオではNHK-FM、france musique(フランス)、RTBF(ベルギー)、Concertzender(オランダ)、Rai(イタリア)、RSI Rete Due(イタリア)、Vatican Radio(バチカン市国)、Radio Rossi(ロシア)などで取り上げられる。またテレビではNHK-BS スペシャル「ショパン・時の旅人たち 第1回国際ピリオド楽器コンクール」で取り上げられた他、NHK-BS「クラシック倶楽部」、BS-TBS「日本名曲アルバム」などに出演。2016年度明治安田クオリティ オブ ライフ文化財団奨学生。第46回日本ショパン協会賞受賞。現在アムステルダム在住。
ソロCDは欧州のレーベルからはドゥシークの作品集(BRILLIANT CLASSICS・オランダ)、シューベルトの作品集(Fuga Libera・ベルギー)が発売中。日本のレーベルからは2020年に『ショパン 夜想曲&小品集』(ACOUSTIC REVIVE、レコード芸術特選盤)、『6.19 LIVE Chopin × Chopin』(NYS classics、レコード芸術特選盤。紀尾井ホールで開催された江口玲氏との演奏会のライヴ録音)が発売されている。その他2018年に自主レーベルMUSISを立ち上げ、バルトークの『2台のピアノと打楽器のためのソナタ』を記念すべき第一弾としてアナログレコードでリリースし(現在会場限定発売)、2019年には10代の頃より特別な思い入れを持って取り組んできたスペイン音楽の初めてのCDとなる『ゴヤの生きたスペインより vol.1』(MUSIS, レコード芸術/朝日新聞特選盤)を発表する。2021年にはトイピアノでのCD『Toy pianos and you』を発表予定。
第31回日本製鉄音楽賞 特別賞
猪狩 光弘(ステージマネージャー)
1953年9月30日、北海道帯広市生まれ。
1972年8月に上京し、日本のステージ・マネージャーの草分け的存在・宮崎隆男氏のもとを訪ねる。同年、東京交響楽団のステージスタッフとして活動を開始。1979年新日本フィルハーモニー交響楽団にアシスタントステージ・マネージャーとして入団。1986年6月新日本フィルハーモニー交響楽団ステージ・マネージャーに就任。オーケストラのステージ・マネージャーとして全国各地の劇場・ホールでの地方公演にも数多く同行した。2001年1月サントリーホール3代目のステージ・マネージャーに就任、2019年3月退任まで務めあげ、現在はフリーランスのステージマネージャーとして活躍と後進の指導を続けている。
【用語説明】
フォルテピアノ
1700年頃にイタリアのバルトロメオ・クリストフォリが考案したとされる。18世紀から19世紀前半の
様式の歴史的ピアノの便宜的呼称。ドイツ語ではハンマーフリューゲル。時代とともに鍵盤の数やペダ
ル、打鍵の機構などが進化していったため、さまざまな型が存在する。モーツァルトはヴァルター、ベートーヴェンはグラーフやシュトライヒャー、ショパンはエラールらが製作したフォルテピアノを愛用した。
ステージマネージャー
コンサートの現場の進行を統括する。リハーサルから本番までのスケジュールを管理し、音響や照明に指示を与えて、演奏家やオーケストラにベストな状態でパフォーマンスできるような環境を整え、あらゆるトラブルを想定して、それに対処する役割。そのために、所属するホールの音響や照明設備、各オーケストラの演奏者個々の譜面台の高さ等にいたる、舞台裏のすべてを知り尽くしているプロ。オーケストラやアンサンブルの編成配置のプランニングにはじまり、公演中にステージ転換がある場合は、楽器の移動などのセッティングの変更を行い、終演後の撤収作業までを扱う。
《日本製鉄音楽賞》
Nippon Steel Music Awards
日本製鉄音楽賞(旧称・新日鉄音楽賞、2012(平成24)年10月より新日鉄住金音楽賞、2019年4月1日より現行に改称)は、1990年(平成2年)に旧新日鉄創立20周年と、同社が提供してきた「新日鉄コンサート」放送35周年を記念して設けられた音楽賞です。この賞を通して、日本の音楽文化の発展と、将来を期待される音楽家の方々の一層の活躍を支援することを目的としています。
【賞の概要】
フレッシュアーティスト賞[賞状/副賞300万円]
将来を期待される優れたアーティストを対象とした賞。
選考方針としては、技術のみにかたよらず、音楽性、将来性を重視し、広い範囲から選出。
その年の最優秀者を決定し、賞を贈る。
特別賞[賞状/副賞100万円]
クラシック音楽をベースにした活動を行っている個人を対象とした賞。
幅広いジャンルのなかから、演奏会を支えるなど音楽文化の発展に大きな貢献を果たした方
に対して、賞を贈る。
【選考委員】
寺西 基之(音楽評論家)
上田 弘子(音楽評論家)
山野 雄大(音楽評論家)
江口 玲(ピアニスト・東京藝術大学准教授)
山崎 伸子(チェリスト・桐朋学園大学特任教授・東京藝術大学名誉教授)
お問い合わせ先:
日本製鉄株式会社
日本製鉄音楽賞運営事務局
(公益財団法人日本製鉄文化財団 受託事業)
〒102-0094東京都千代田区紀尾井町6番5号
電話:03-5276-4500(代表)
FAX:03-5276-4527