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芝浦工業大学(東京都港区/学長 山田純)生命科学科・福井浩二教授、同研究室奨励研究員・加藤優吾氏らの研究チームは、ビタミンEの一種であるトコトリエノールに抗肥満効果があることを発見しました。
肥満およびそれに伴う様々な疾患の増加は、世界中で大きな社会問題となっています。本研究で、ビタミンEの一種であるトコトリエノールが体重増加を著しく抑制し、同時に悪玉コレステロールのレベルも低下させることが明らかになりました。今後はさらなる研究を進め、最終的には、肥満に起因した病気にかかる人の数を減らしていきたいと考えています。
■ポイント
・トコトリエノールに抗肥満効果があることを発見
・トコトリエノールが、肥満による白色脂肪組織の蓄積・肝臓の損傷・悪玉コレステロールの上昇を抑制することを発見
・今後は、トコトリエノールなどの抗肥満物質に関する研究を進め、最終的には、肥満に起因する病気にかかる人の数を減らしていきたい
■研究の背景
肥満は、糖尿病や様々な心血管系疾患などの病気を引き起こすため、憂慮すべき社会問題となっています。
しかし、肥満や肥満に伴う二次的な病気の予防に役立つ物質や薬は少なく、コストがかかります。そこで研究チームは、日常的な食事から摂取可能な栄養成分で肥満を予防できないかと考え、本研究を行いました。
■研究の概要
本研究では、ビタミンEの一種であるトコトリエノールに抗肥満の効果があるのかを明らかにするために実験を行いました。トコトリエノールには、高脂肪食を与えたマウスの体重増加を抑制させるという性質があることは知られていますが、そのメカニズムや、体重以外へのトコトリエノールの抗肥満作用については明らかになっていません。研究チームは、高脂肪食と高脂肪食にトコトリエノールを混ぜた飼料をマウスに与え、実験を行いました。
13週間にわたり、高脂肪食をマウスに与えたところ、マウスの体重は著しく増加しました。一方、高脂肪食とトコトリエノールを与えたマウスでは、体重増加が抑制されていました。さらに、トコトリエノールが腎臓周辺の白色脂肪組織の蓄積を低下させ、高脂肪食による肝臓のダメージを抑制できることがわかりました。加えて、トコトリエノールには、血中の善玉コレステロール(HDL)の濃度に影響を与えることなく、悪玉コレステロール(LDL)の濃度を低下させる効果もありました。
また、これまでの研究において、肥満が認識機能障害を引き起こす可能性があることが報告されています。そこで、トコトリエノールが脳の酸化を防ぎ、高脂肪食による認知・行動変化を抑えることができるかどうかについても実験を行いました。結果としてトコトリエノールの有無で有意な差はありませんでしたが、マウスの行動に不安や抑うつに関係していると推定されるものがありました。
これらから、トコトリエノールが身体に及ぼす影響の一部はまだ謎ですが、肥満対策に役立つ医薬品への道筋を明らかにすることができました。
■今後の展望
トコトリエノールなどの抗肥満物質に関するさらなる研究を実施していきます。そして、最終的には、肥満に起因する病気にかかる人の数を減らすことを目標としています。
■論文情報
・著者:
芝浦工業大学奨励研究員 加藤 優吾
三菱ケミカル株式会社 青木 義典
神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科教授 清瀬 千佳子
芝浦工業大学システム理工学部生命科学科教授 福井 浩二
・論文名:Tocotrienols Attenuate White Adipose Tissue Accumulation and Improve Serum Cholesterol Concentration in High-Fat Diet-Treated Mice
・掲載誌:Molecules
・DOI : 10.3390/molecules27072188
▼本件に関する問い合わせ先
芝浦工業大学 広報連携推進部企画広報課 担当:植本
住所:〒108-8548 東京都港区芝浦3-9-14
TEL:03-6722-2900
メール:koho@ow.shibaura-it.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/