日建設計、中国最大規模の交通ハブ「深圳市西麗総合交通ハブ」の国際コンペに当選
TOD(公共交通志向型開発)開発が進む中国へ、日本のTOD技術を展開
「駅・まち・人・自然」をつなぎ、地域全体の付加価値を向上
株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦)は、中国最大規模の交通ハブ「深圳市西麗総合交通ハブ」の国際コンペに当選しました。駅舎頂部と両側の都市がつながる「リボンシティ」というコンセプトのもと、「駅・まち・人・自然」を有機的につなぐことで、駅を基点に都市再生や地域活性化を図ります。本プロジェクトは2025年の完成を予定しています。
■日建設計の国内におけるTODプロジェクト実績と、世界への輸出ポテンシャル
日建設計はこれまで、多くの国内におけるTOD(公共交通志向型開発)プロジェクトに携わってきました。例えば現在、渋谷では駅・鉄道そのものの改良と、交通広場などの基盤施設整備、駅隣接地区の複数の都市再開発を同時に進めるプロジェクトが進行しています。また、地下鉄駅との直結により利便性と象徴性を高めた東京・六本木の泉ガーデンや、駅と交通広場、建築物を多層化した新横浜キュービックプラザなど、様々なTOD型プロジェクトを実践してきました。
近年、TODは日本国内だけでなく世界各国で注目されています。特に慢性的な交通渋滞を課題とする新興国の国々が、都市部での公共交通網建設とそれに沿ったTOD型都市づくりを政策の優先課題の一つに掲げ、公共交通の先進国から知恵を学ぼうとしています。
日本のTOD技術を世界へ輸出することで、各国の渋滞解消と効率的な経済発展につながる可能性があります。
■TOD開発が進む中国へ、日本のTOD技術を展開
中国は人口増加による過密化や交通渋滞、環境汚染などの課題を抱えており、近年、公共交通機関を基盤として自動車に依存しない社会を目指すTOD開発が進められています。
本プロジェクトは、日建設計が日本国内外で培ってきたこれまでの知見を活かしながら、乗り換え空間の動線整理から都市レベルのつながりに至るまで、中国ならではの事情に合わせ計画しました。また、中国初となるTOD4.0「駅、まち、人、自然の融合」というアイデアを提起し、都市活動、都市機能、そして自然環境を駅に取り込み、分断されていた駅とまちの連続と融合を図ります。
■駅舎頂部と両側の都市がつながる「リボンシティ」
本プロジェクト最大の特徴は、駅舎頂部と両側の都市がつながる「リボンシティ」というランドスケープコンセプトです。「リボンシティ」は、「新しい都市の大地」「センス・オブ・アライバル」「駅・まち・人と自然の融合」の3つのコンセプトを軸に計画しました。
■新しい都市の大地/駅を基点に公共空間をシームレスに広げ、地域全体の付加価値を向上
本プロジェクトでは、公共交通システムを前提としたTOD都市開発・沿線開発の理念に基づき「駅・まち・人と自然」を有機的につなぐことで、駅を基点に都市再生や地域活性化を誘発し、TOD効果を周辺の街へと波及させていくことを目指しています。また、容積率の置換えや共同事業などの手法を通して、駅と周辺地域を隔てる境界や事業者間の境界を消し去り、自然と技術が調和する、よりヒューマンスケールな新世代ハブを創出します。
TODによる総合的なまちづくりにより、良質で洗練された建築空間の創出を担保するとともに、高速鉄道駅を中心とした快適な公共空間を周辺街区にシームレスに広げることができます。多種多様なステークホルダーが、さまざまな垣根を越えて連携し、地域全体の付加価値の向上に協力して取り組むことで、事業者、管理者、施設利用者、市民、それぞれにメリットをもたらします。
■センス・オブ・アライバル/深圳最大の高速鉄道駅として利用者を出迎える
「西麗総合交通ハブ」は深圳市南山区中北部、東西の都市景観軸と南北の都市イノベーション産業発展軸が交差する地点に位置する、深圳の地理上、最も重要な総合旅客輸送のハブです。
本プロジェクトにより、約2,200m×約700mの敷地内に、4本の高速鉄道線路(赣深、深茂、深汕、深珠)を引き入れ、全体で13プラットホーム、25線路を持つ深圳最大の高速鉄道駅になります。駅の北側では2本の都市間鉄道線路(深恵、深莞)が地下鉄13、15、27、29号線と立体的に交差します。近距離・長距離路線が融合する鉄道と北側道路との間の駅北側乗り換え空間には多様な人々が集まり、将来的には1日の平均乗降客数が130万人を超える深圳市最大の交通ハブとなることが予想されます。
また、駅北広場と高速鉄道線路上の待合室は最も象徴的なホスピタリティ空間となります。効率的で便利な動線と豊かな自然の風景は、西麗の“顔”として利用者を出迎え、旅の高揚感「センス・オブ・アライバル」を演出します。
■駅・まち・人と自然の融合/駅周辺都市のランドスケープと一体的に形成
前海湾や大沙河の水系や植生を採り入れることで、深圳のまちを囲む水と緑の循環を形成しています。また、線路や駅舎による都市の分断を避けるため、地上及び地下に歩行者ネットワークを張り巡らせ都市をつなぎ合わせます。このように、都市の中でリボンのようにつながる交通動線や駅舎空間にし、また人々のアクティビティや深圳の気候などを考慮したランドスケープと一体的に計画することで、都市の自然あふれるオアシスであると同時に東西南北を有機的につなぐネットワークを形成します。
日建設計の提案は「公共交通乗換の最適化と駅まち一体化に具体的で実現性の高い提案と共に、リボンシティという大胆かつ斬新なコンセプトで長さ2kmにわたる軌道上部に市民の憩いの場となる公園と街を提案しており、これからの深圳を代表する場所として相応しい」と評価されました。
*他のコンペティター:Zaha Hadid Architects、Fuksas、TFP Farrells, GMP、AREPなど
■今後の展望
本プロジェクトの立案に当たり、中鉄第四勘察設計院グループ有限公司、深圳市建築設計研究総院有限公司、深圳市都市交通計画設計研究中心株式有限公司によるJV連合体や、本事業に関わる関係機関と緊密にコミュニケーションを取り合ってきました。深圳に次世代のTODを実現させるため、今後も連携して事業を推進していきたいと考えています。
また、本計画は3つのキーワード(CONNECT[つながり]、BLEND[融合]、BALANCE[調和])と17項目の設計原則を掲げるとともに、高速鉄道網の拡大を目指す国家とTODを通じた都市発展を目指す深圳市の双方が協調する初の取り組みとなっており、Win-Winの関係実現を目指しています。
日建設計では今後も、これまで日本国内や中国各地で培ってきたTODに関する知見や技術を海外の都市開発においても展開し、世界の持続可能な都市開発へ貢献してまいります。
■プロジェクト担当者(都市・社会基盤部門 都市デザイングループ 野村哲)からのコメント
本計画は、都市デザインから建築デザイン、ランドスケープまで、日建設計の幅広い専門領域の国際色豊かなメンバーが一致団結して取り組んでいます。また、これまで国内外のTODで培ってきた経験やノウハウを組み合わせ、深圳とそこを行き交う人々に豊かな空間や体験をお届けする、わたしたちのブランドタグライン“EXPERIENCE, INTEGRATED”を体現したプロジェクトです。計画実現に向けて、関係者のみなさまとともに楽しみながらこの大きなチャレンジに臨みたいと思います。
■日建設計について
日建設計は、建築の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東でさまざまなプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。2021年3月には脱炭素社会への取り組みに向けた「気候非常事態宣言」を宣言したほか、2022年4月1日には高度化・複雑化する時代の要請に応じた強化を目的に、北海道日建設計および日建設計シビルを吸収合併しました。
URL:https://www.nikken.jp/ja/
■本件に関するお問い合わせ先
株式会社日建設計 広報室 Tel. 03-5226-3030(代表) e-mail:webmaster@nikken.jp