築20年超の既存テナントビルで、運用段階のエネルギー40%削減に挑戦。ビルオーナー・テナント連携による改修実証の第2弾
株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦、以下「日建設計」)は、九州オフィス(以下「本オフィス」)を同ビルの5階フロアへと移転・リニューアルし、2026年2月より新フロアにて本格稼働を開始しました。
<日建設計 九州オフィス(撮影:石井紀久/ブリッツスタジオ)>
日建設計では、社会課題を自ら体験し、解決策を社会に実装していくため、各地の自社オフィスを用いた実証実験を展開しています。本取り組みは、東京・大阪・北海道に続く第4弾となります。本オフィスでは、築20年以上の既存テナントビルにおいて、ビルオーナーとテナント(日建設計)が緊密に連携し、環境改修を推進することで、運用段階において「エネルギー消費量40%削減」を目指すZEB指向型改修※の実現に挑みます。
■ 背景:既存テナントビルにおける脱炭素化の課題と挑戦
現在、不動産業界では2030年までに2013年度比でCO2排出量を51%削減することが求められています。しかし、国内のオフィスビルストックの約70%弱は築20年以上を経過しており、これらの既存ビルの環境性能向上が急務となっています。一般的に自社保有ビルに比べて、オーナーと入居企業が異なる「テナントビル」では環境改修の合意形成が難しく、脱炭素化が進みづらいという課題があります。こうした状況を受け、環境省も「リーディングテナント行動方針」を打ち出すなど、入居企業側からの働きかけが期待されています。また、近年は企業経営においてもScope3(サプライチェーン全体の排出量)への対応が重視されており、環境配慮型ビルへの入居は企業価値を左右する重要な要素となっています。
■ 九州オフィスの特長:中規模テナントビルにおけるZEB指向型改修のモデル化
日建設計では、2023年に大阪オフィス(銀泉備後町ビル)において、ビルオーナーと連携した環境改修により、既存テナントビルでのエネルギー削減(47%削減)を実証しました。本オフィス(紙与渡辺ビル)は、この「オーナー・テナント連携による環境改修」の第2弾となります。延床面積約3万㎡超の大規模ビルであった大阪オフィスに対し、約8,600㎡の中規模ビルである本オフィスにおいても同様の取り組みが可能であることを実証します。ビルオーナーである紙与ホールディングス株式会社(運営:紙与産業株式会社)と連携し、以下の改修を行うことで、オフィスビル義務基準比で40%のエネルギー消費量削減(計画値)を目指しています。
■ 取り組みの詳細:ハード・ソフト両面からのアプローチ
本取り組みでは、建物自体の基本性能を高める「オーナー側の取り組み」と、働く人の意識変革を促す「テナント側の取り組み」を組み合わせています。
- オーナー側の取り組み(ハード面の改修):
- 専有部での窓ガラス断熱強化や、季節に合わせて外気を取り入れる「自然換気モード」の追加、共用部での人感センサー導入などを実施。ビル全体の省エネ性能向上を見据え、まずは日建設計が入居する5階フロアにおいて、先行して環境改修を完了させています。
<室内側からガラスを複層化することで <人感センサーにより
窓ガラスの断熱性能を強化> 照明が自動消灯するオフィス共用部>
- テナント(日建設計)側の取り組み(ソフト面の運用):「My OFFICE」という考えのもと、働く人が自分たちで環境を調整するスタイルを取り入れています。
- 照明: 執務空間の照度を抑え(机上300ルクス)、ベース照明とスポットライトを組み合わせることで、光の環境をきめ細やかに制御。無駄な電力を消費せず、快適に仕事に集中できるワークプレイスを構築しました。
- 換気: 窓上部にサーキュレーターを設置。自然換気と組み合わせながら、IoTデバイスにより、ワーカーが空調の制御を行うことで、能動的に環境調整が可能な仕様としています。
<照度を抑えつつ、必要な場所にスポットライトを組み合わせることにより、 <IoTデバイス等で室内環境を確認し
必要な明るさを確保した執務空間(撮影:石井紀久/ブリッツスタジオ)> 自ら操作する様子>
■ その他のポイント:地域に根差し、偶発的な交流を生むオフィス設計
- 共創空間「PYNT九州」の設置
- 日建設計が全国で展開している、社会課題解決のための共創拠点「PYNT(ピント)」の九州拠点として、「PYNT九州」を新たに整備。社内外の多様なプレイヤーがつながり、新しいアイデアを共に育てる九州の共創窓口として機能します。
- コンパクトなワークプレイスの空間を活かし、交流を促すオフィス設計
- 居心地が良く、ワーカーが自分たちで居場所を作っていける空間を意味する「nest(巣)」というコンセプトのもと、限られた広さのなかで、デスクを向かい合わせに並べる一般的な配置(対向島型)を避け、ジグザグ(雁行配置)にデスクをつなげた実験的なレイアウトを採用しています。これにより、通路を歩く人と座っている人の視線が自然と交わりやすくなるほか、デスクの角が通路に面することで周囲のメンバーが立ち寄りやすくなり、会話を促す仕掛けとなっています。また、オフィスの端まで遮るものがない「斜めの視線の抜け」を作ることで、コンパクトながらも窮屈さを感じさせない、部署を超えた一体感と偶発的なコミュニケーションを生むワークプレイスのあり方を試行しています。
- 九州の素材を活かした地産地消
- 建具や家具の仕上げには、九州各地で生産された素材や自然素材を積極的に活用し、地域経済への貢献と環境負荷低減を両立させています。
<可動間仕切りにより空間を可変させることで、共創拠点である <雁行しながら、デスクがひとつながりで
「PYNT九州」として活用可能(撮影:石井紀久/ブリッツスタジオ)> つながるオフィスレイアウト>
■ 今後の展望
今後1年間にわたり実際の運用データを取得し、省エネルギー効果の検証を行います。この知見を自社フロア(5階)だけでなく、ビル全体の他フロアや、国内に存在する同様の既存テナントビルへ展開することを目指します。大阪、そして九州での実績を糧に、今後も多様なビルオーナー様と連携し、既存ビルのZEB指向型改修を推進することで、建築業界全体の脱炭素化に貢献してまいります。
※ZEB指向型改修:ZEB(Net Zero Energy Building)の定義に準じ、既存ビルの制約の中で最大限の省エネを目指す改修
■ 建築概要
【ビル全体】住所:〒810-0001 福岡市中央区天神1-12-14 紙与渡辺ビル / 敷地面積:1,012.90㎡ / 建築面積:833.13㎡ / 延べ面積: 8,628.76㎡ / 階数:地上10階、地下1階、塔屋1階 / 建物高さ:40.65m / 構造:SRC造(一部RC造、S造) / 竣工:2000年10月
【九州オフィス(5階フロア)】専有部面積:602.44㎡(182.23坪) / 階高:4.0m / 天井高さ:2.7m / OAフロア高さ:100mm
■ 日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来125年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
URL:
https://www.nikken.jp/ja/