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近畿大学農学部(奈良県奈良市)水産学科 講師 酒井 麻衣を中心とした、鴨川シーワールド、京都大学野生動物研究センターの研究グループは、鴨川シーワールドで飼育しているバンドウイルカの母子3組の行動観察を行い、胸びれで相手をこするラビング※1 という行動に、体表面をきれいにする機能があることを明らかにしました。
本研究に関する論文が、令和4年(2022年)6月29日(水)に、日本動物行動学会の英文誌''Journal of Ethology''に掲載されました。
【本件のポイント】
●飼育バンドウイルカ母子群の観察で、ラビングにより古い皮膚がはがれ落ちることを確認
●母が子をこすることが多く、ラビングが母子間の世話行動の一つであることを解明
●海棲哺乳類にも、社会的・衛生的な機能をあわせ持つ社会行動があることが明らかに
【本件の内容】
社会的毛づくろい※2 は霊長類に代表される多くの陸棲動物に見られ、社会的・衛生的な機能を有し、親子間の世話行動としても起こることが知られています。それに似た行動として、イルカは胸びれで相手をこするラビングという社会行動を行い、仲直りなどいくつかの社会的機能を持つことが明らかになっています。しかし、ラビングの衛生的な機能を裏付ける定量的なデータに基づく報告はありませんでした。
研究チームは、鴨川シーワールドで飼育するバンドウイルカの母子3組を対象に、ラビングと対象物に体をこすりつけるセルフラビング※3 について観察しました。その結果、ラビングの19%、セルフラビングの53%で、こすられた部位から古い皮膚がはがれ落ちていることが確認されました。また、ラビングを受ける回数とセルフラビングを行う回数の間に、有意な負の相関、すなわち一方が増加するとき他方が減少する関係がありました。これらの結果は、ラビングの機能の一つがセルフラビングと同じ体表面の維持、ケアにあることを示唆しています。
また、すべての母子ペアにおいて母親が子をこする回数は、子が母親をこする回数よりも多いことがわかりました。それぞれの母親は、自分の子が相手である場合、他の個体が相手になったときよりも多くこすり役になることから、ラビングが母から子への世話行動の一つであることを示しています。
本研究により、海棲哺乳類であるイルカにおいても、衛生的な機能を持つ社会行動があることが明らかになりました。今後、子の成長に伴う母子間のラビングの送受の変化を記録することで、イルカにおける母が子の世話にかける労力の大きさについて明らかにできると考えられます。
【論文概要】
雑誌名 :Journal of Ethology(インパクトファクター:1.27@2021-2022)
論文名 :
Observations of flipper rubbing in mother-calf pairs of captive bottlenose dolphins (Tursiops truncatus) suggest a body-surface care function
(飼育バンドウイルカ母子ペアのラビングの観察:ラビングは体表面のケアの機能を持つ)
著者名 :酒井 麻衣1、勝俣 浩2、幸島 司郎3
著者所属:1近畿大学農学部水産学科、2鴨川シーワールド、3京都大学野生動物研究センター
論文URL:
https://link.springer.com/article/10.1007/s10164-022-00754-1
【用語説明】
※1 ラビング:胸びれで相手をこする社会行動。イルカ類の多くに見られる。飼育バンドウイルカでは仲直りの機能や、ケンカ起こしにくくする機能が報告されている。
※2 社会的毛づくろい:他個体に対する毛づくろい。陸棲哺乳類や鳥類に見られる。霊長類においては、体表面をきれいにする衛生的機能のほかに、緊張低減や闘争時のサポートとの交換などの社会的機能が報告されている。
※3 セルフラビング:対象物に体をこすりつける行動。イルカ類の多くに見られる。
▼本件に関する問い合わせ先
広報室
住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
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メール:koho@kindai.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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