建設起因温室効果ガス(GHG)概算シミュレーションツールを開発、運用開始へ
設計初期から容易に温室効果ガス排出量を比較できる「概炭ツール(※)」
株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦)は、カーボンニュートラル推進の一環として、建設起因GHG排出量の概算シミュレーションが可能な「概炭ツール※」を開発し、当社の建築・設計業務における本格運用を開始しました。(※:商標登録出願中)■ 課題感/企業のGHG排出量情報開示に向けて
2050年までに温室効果ガス(GHG)排出をゼロにする「2050年カーボンニュートラル」に向けた動きが本格化しています。今後、様々な企業でGHG排出量の情報開示が必要となり、サプライチェーン全体でのGHG削減に向けた取り組みが求められるようになります。その中でも、特に資機材の製造から施工において発生する、建設起因CO2の把握は重要なテーマです。
様々なプロジェクトにおいて設計監理を担い、社会環境デザインの先端を拓いていく日建設計は、「建設起因GHG」関連のツール開発を、取り組むべき課題のひとつとして検討してきました。
■ 「概炭ツール※」による建設起因GHGの削減シミュレーション
この度、「概炭ツール※」の開発を完了し、建築・設計業務における本格運用を開始しました。「概炭」とは炭素排出量を概算することを意味していますが、このツールを活用することで、計画の初期段階から設計完了のどの段階においても、建設起因GHG排出量を工事費と同時に容易にシミュレーションできるようになります。また、削減可能なGHGを確認しながら、設計の精度を上げていくことも可能です。
GHG排出量算出ツールとして、三井不動産株式会社と弊社で設計者・施工者の実務ツールとして策定した『建設時 GHG 排出量算出マニュアル(2022年3月)』があります。これは、設計・施工の実務で高精度な算出を目的としているのに対して、今回の「概炭ツール※」は、基本計画や基本設計といった段階におけるコストも含めたシミュレーションを目的としています。
2021年3月に発表した「気候非常事態宣言」で述べているとおり、日建設計は都市と建築のデザイン・エンジニアリングの知見と経験を積み重ね、数多くのクライアントと共創する機会を頂いています。「概炭ツール※」の本格運用により、従来の工事費に加え、環境負荷の観点でも、設計計画をクライアントと共有、合意しながらプロジェクトを進行することできます。そして、そのことにより、建築領域でのカーボンニュートラルの実現をさらに促進することができると考えています。
「概炭ツール※」の特長
1. 設計初期段階から仮想設計により建設起因GHG排出量を算出可能
- 詳細が決まっていない場合も明細を仮想設計により想定
- 詳細情報や追加情報を加えることで、段階的に精度を高められる
- 明細内訳に基づき、建物形状や耐震・環境性能の違いによるシミュレーションが容易に可能
- 詳細項目の分析が可能なため、コストやGHG排出量への影響が大きい部位を把握できる
- 設計検討と並行し、CO2排出量と工事費を同時に把握、調整可能
- CO2排出削減量と工事費の関係を、要素技術ごとに定量的に評価可能
概炭ツール※によるシミュレーションイメージ
(計画初期段階から、建築計画の変更によるCO2排出量と工事費の変動を把握可能)
当社は、民間企業の立場から、経済活動と脱炭素社会実現の両立を模索し社会に働きかけていくため、2021年3月「気候非常事態宣言」を発表しました。本ツールは「気候非常事態宣言」に沿ったものとなります。
- 私たちの働き方を革新し、日建設計の企業活動に起因する温室効果ガス排出を2050年にゼロとします。
- 2050年の都市・建築デザインと働き方のカーボンニュートラルモデルを目標として提起し、バックキャスティングアプローチにより、2021~2050年で必要となる対策を年次計画として提示します。
- 集合と分散を繰り返すこれからの地域のあり方を展望し、インフラと建築の機能を融合した柔軟なシステムによる身近なカーボンニュートラルを提案します。
- 企業の環境配慮を評価するスクリーニングシステムの構築を支援し、ESG不動産/都市基盤投資の促進に貢献します。
- クライアントと緊急行動の必要性を共有して課題解決を支援します。さらには社会に向けて発信して共感を呼びかけます。
■ 日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を行うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで日本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
URL:https://www.nikken.jp/ja/