学校法人日本女子大学(東京都文京区、理事長:今市涼子)では10月8日(土)、第16回「平塚らいてう賞」贈賞式を本学新泉山館大会議室で開催し、顕彰を受賞した婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部、池上清子(いけがみ きよこ)氏と奨励を受賞した元橋利恵(もとはし りえ)氏、に対して、篠原聡子選考委員長から賞状と副賞賞金を贈呈いたしました。
16回目の今回は、顕彰11件と奨励4件の応募がありました。顕彰はこれまで際立った功績をあげた方へ授与し、奨励は研究や活動を継続的に行っている方、あるいは新たに取り組もうとしている方に授与します。今回は厳正な審査の結果、顕彰受賞1団体・1名、奨励受賞1名を決定しました。選考理由につきましては平塚らいてう賞ホームページにて公開しております。
http://www.jwu.ac.jp/st/grp/raiteu/prize.html
「平塚らいてう賞」は「平塚らいてうの記録映画を上映する会」のご芳志をもとに、人生を女性解放や世界平和のための活動に捧げた平塚らいてう氏(1906年日本女子大学校卒業)の遺志を継承し、男女共同参画社会の実現および女性解放を通じた世界平和に関する研究や活動に対して、顕彰と奨励をはかることを目的に創設されました。
募集にあたっては、本趣旨を社会に広く伝えることや今後の活動が進展することを願い、全国で研究や活動を行っている個人または団体を対象としています。
本賞は平塚らいてうの精神を受け継ぎ、平和で平等な21世紀の社会をつくるために行っております。今後もこれからの社会を担う多くの若い研究家や活動家の本賞への応募を期待しております。
■平塚らいてう賞選考委員長 篠原聡子 あいさつ
ここ2年間、新型コロナウイルス感染症拡大によって、開催することができなかった平塚らいてう賞を今年度は再開することができ、また、多くの皆様にご応募いただき、誠に有難く、この賞にご賛同いただきました皆様に心から感謝申し上げます。
平塚らいてうが月刊誌「青鞜」を立ち上げ、社会的に抑圧された女性の解放を目指して活動を起こし、さらに戦後は反戦・平和運動を推進したことは多くの人々の知るところです。「青鞜」刊行から100年以上の歳月が過ぎて、私たちの当たり前になった女性の参政権や学ぶ権利などが、平塚らのこうした運動の甲斐あってなったことを忘れてはならないと思います。その上でなお、平塚らが目指したものが真に成し遂げられているかを、改めて顧みなければならない現在があります。日本のジェンダーギャップ指数の低さ、コロナ禍で明らかになった女性の経済的脆弱性、さらに日本においてはあたり前に思えていた平和さえ危ぶまれる現在、私たちは平塚の眼差しにもう一度立ち返る必要を深く感じます。この賞の存在がその一助となればと願うばかりです。(第16回「平塚らいてう賞」贈賞式リーフレットから)
■受賞スピーチ(要旨)
<顕彰> 婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部
研究テーマ:婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部の100年の歩み-ジェンダー平等と平和の構築-
本日は、このような栄えある平塚らいてう賞をいただき、ありがとうございました。
婦人国際平和自由連盟(WILPF)は、1915年オランダ・ハーグで世界の女性たちの手で平和を実現すべく、設立された団体で、2015年100周年を迎えました。初代会長は、アメリカ人ジェーン・アダムスです。ジェーン・アダムスは、1931年ノーベル平和賞を受賞しました。このWILPFには、現在、世界48カ国に支部があり、日本支部はその一支部です。
WILPF日本支部の前身である婦人平和協会は、WILPFの国際本部設立6年後の1921年に設立され、「ジェンダー平等」と「世界平和」を掲げ、国際本部と連携を取りながら、日本支部独自の活動をも継続し、2021年に設立100周年を迎えました。
婦人平和協会は、1924年WILPFから、日本支部として認められ、戦後1952年、WILPF日本支部として承認され、現在に至っております。受賞は、この100年間、多くの先輩たちの活動が評価されたことによるものとうれしく思い、ささげたいと思います。今後も国際本部と連携しながら、日本支部として広島・東広島・川越・千葉地方支部とともに活動を継続していく所存です。本日は、ありがとうございました。
<顕彰> 池上清子氏
研究テーマ:開発途上国での母子健康手帳を使った母子保健の推進とその評価
とても名誉ある賞をいただくことになり、大変感激しています。
私は、長年、途上国の女児・女性たちの健康推進に努めて来ました。そんな中で、日本の母子健康手帳が保健分野における日本の国際協力の要の一つとして途上国で活用されていることに着目し、調査・分析を行ってより普遍的な価値を伝えたいと考え、バングラデシュの皆さまの協力をえて研究を行いました。その結果、母子手帳の普及により妊婦健診の受診率が向上し新生児死亡率が低減したことなどが明らかになりました。今回、こうした途上国の皆さんとの共同研究を評価していただいたことをとても嬉しく思います。
今まで私は、市民社会や国連機関でリプロダクティブ・ヘルス/ライツの分野に携わってきましたが、大きな励ましをいただき、これからさらに、多くの後輩たちとともに、途上国の女性・女児・思春期の若い女性たちが自らの力で自らの健康を守ることができるよう、力をつくしていきたいと思います。
<奨励> 元橋利恵氏
研究テーマ:日本におけるマザリングの包括的研究
この度は、大変栄えある賞を受賞させて頂きありがとうございます。現代社会において、生み育てがますます個人化され自己責任として捉えられるようになっていることに危機感を抱き、研究活動をおこなってきました。母親業などケアを担う人の声がきかれ、皆がケアしケアされることに関心をもてる社会の実現に資することができるように、今後とも研究活動に邁進して参りたいと思います。
私が研究活動を続けられたのは、先達のジェンダー研究者や女性の権利のために地道な活動をされてこられた先輩方、そして、私の母、友人たち、仲間からのケアの関係性があったからですが、平塚らいてう研究を読む中で、らいてうのカリスマと輝かしさの背景にもまた、お母様やお姉様、そして多くの仲間たちのケアがあったことを知りました。いつの時代であっても女性が知を育んでいくことがいかにケアとシスターフッドの輪によって可能となっているか、その尊さに思いを馳せずにはいられません。
【日本女子大学について】
日本女子大学は、日本初の組織的な女子高等教育機関として創立し、昨年120周年を迎えました。私立女子大学唯一の理学部を有し、文理融合の教育環境をもつ女子総合大学です。幼稚園から大学院までの一貫教育、さらに卒業生以外にも門戸を開くリカレント教育など、誰もが生涯を通じて学び、成長し続ける社会を創るための機会を提供しています。多様で非連続に変化する社会において、新しい明日を共に創る人材を育てています。詳しくは、
https://www.jwu.ac.jp をご覧ください。
▼本件に関する問い合わせ先
日本女子大学 入学・広報部 広報課
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