デロイト トーマツ調査、業績連動報酬にESG要素を反映する企業、52%に倍増
TOPIX100企業が対象。短期インセンティブ、中長期インセンティブそれぞれへの反映割合についても前年比大幅増に
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村 研一)は、2021年度(2021年4月~2022年3月期まで)有価証券報告書を分析し、業績連動報酬へのESG要素反映状況について調査した結果、短期または中長期のインセンティブのいずれかにESG要素を反映する企業の割合が2020年度の24%から倍増し、52%となったことがわかりました。短期インセンティブ、中長期インセンティブそれぞれへの反映について内訳を見た場合、短期インセンティブでは前年度の15%から27%に増加し、中長期インセンティブへの反映割合では前年度の15%から35%にそれぞれ増加しています。ただし、短期インセンティブについては英国のFTSE100企業、米国のS&P500企業と比較し依然低い水準となっています。
また、ESG要素を反映している企業においても単に「ESGの取り組みを反映」といった記載に留まったり、反映方法が不明確な例があり、具体的なESG指標の開示やESG指標の反映割合の開示などに課題が見られます。
調査結果の概要は以下の通りです。
【日・英・米における業績連動報酬へのESG要素反映状況についての調査結果】
環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を役員報酬における短期または中長期のインセンティブのいずれかに連動させている日本の企業割合は、2020年度の24%から 2021年度52%に大幅に伸びた。(図1)
【調査結果へのコメント デロイト トーマツ グループ パートナー 村中 靖】
ESGに対する企業の取り組みが活発化する中で、役員報酬を通じて役員の行動にもESGを意識させ、持続可能な企業経営にコミットさせていく事例が増えている。2021年度の有価証券報告書に関する調査では、日本における中長期インセンティブへのESG要素反映割合は前年度と比較して2.2倍(24%⇒52%)の結果になり、英国・米国の進捗より勢いがある状況だ。日本企業は他社が動きだすと急ピッチで追随する傾向にあり、ESG指標の採用状況は、先行する英国と並ぶ日も近いと考えている。
一方で、ESG連動型の業績連動報酬において日本が英国より手本になれるかというと、まだ課題も多い。今回の調査では、役員報酬にESG要素を反映させる企業であっても、実際の評価項目や評価方法が開示されておらず、不透明な日本企業が半数と目立った。スコアカードを用いて具体的な指標や反映割合(ウエイト)を示すことが多い英国と比べると、日本はまだ投資家等のステークホルダーに対して十分な開示ができていない。これでは、ESGに配慮していると表現しているにも関わらず実態が不透明な、いわゆる「ESGウォッシュ」であると言われてもおかしくない状況だ。経営者がESG戦略を着実に実行できているか、報酬(諮問)委員会等を通じて、ESGに関する目標設定やパフォーマンスが適切に評価されているのかといった情報を、企業は十分に開示する必要がある。加えて、様々なステークホルダーとの対話を通じて、得られたフィードバックを企業経営に反映していくことが重要だ。そのためには、ESG要素を報酬にどのように紐づけているか、投資家の目線にたって、自社の開示レベルを引き上げていくことがまず求められる。