日本製鉄 第9回「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞 ~鋼橋・港湾設備のライフサイクルコスト縮減に貢献する塗装周期延長鋼CORSPACEⓇの開発~
「ものづくり日本大賞」は、日本の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献してきた「ものづくり」を、着実に継承し、さらに発展させていくため、経済産業省、文部科学省、厚生労働省および国土交通省の4省連携により、2005年に創設され、今年で9回目を迎えます。
受賞案件の概要につきましては、以下の通りです。
1.開発の経緯
社会経済活動を支える社会インフラの一つである橋梁の多くは、高度成長期に建設され、老朽化が進行しています。老朽化した橋梁の補修・修繕費用の縮減、将来的な少子高齢化に伴う維持管理に携わる労働力人口の減少に対応可能な、橋梁のミニマムメンテナンス化・長寿命化技術の構築が課題となっていました。
橋梁の多くは塗装防食が施されており、老朽化の主要因のひとつは塗装欠陥部からの腐食です。日本製鉄は、塗装の弱点である塗装欠陥部の腐食機構の解明を行い、塗装欠陥部において高耐食性を維持することにより塗装周期を大幅に延長することを可能とする耐食鋼材の開発を進めてきました。
2.受賞技術の内容
普通鋼の腐食は、アノード・カソード反応により進行します。日本製鉄は、塗装欠陥部の腐食解明に取り組み、水膜の乾燥過程における塩化物イオンの濃縮によるpH低下に伴い腐食が加速することを解明しました。更に、低pH環境において、鋼中に微量のSn(スズ)を添加することで、鉄のアノード反応(溶解反応)と同時に溶出するSnイオンによって、その後の鉄の溶出を抑制することを見出し、普通鋼に比べて、塗装欠陥部における鋼材腐食量、塗装剥離面積を約半分に抑制できるCORSPACEを開発しました。
図1:塗装欠陥部の腐食機 図2:ラボ加速試験結果
CORSPACEは既述の特性を有することから、同一の塗装・架設環境下で普通鋼に比べて塗装周期を約2倍に延長することが可能です。その結果、普通鋼であれば100年間で3回必要となる塗替え塗装を1回に削減でき、ライフサイクルコストを大幅に縮減可能としました。また、塗替え回数削減により、VOC排出抑制に寄与することで環境負荷を軽減できます。
図3:橋梁適用時のライフサイクルコスト 図4:適用事例(気仙沼湾横断橋)
3.開発の効果
CORSPACEは、沖縄県など塩害の厳しい環境、融雪剤散布を行う東北・北陸などの積雪地帯、将来的に塗装塗替足場の設置が困難となるような道路・鉄道跨線橋などを中心に国内50橋超採用されています。更に、岸壁クレーン、アンローダー等の港湾設備への適用も進めています。CORSPACEは、橋梁や港湾設備等の鋼構造物のミニマムメンテナンス化、長寿命化、塗装周期延長による環境負荷低減によって、持続的な社会の実現と安心安全な社会構築に大きく貢献しています。
日本製鉄は、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にも合致した活動(「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」)を通じて、これからも社会の発展に貢献していきます。
(参考)
◆開発技術に関する技術レポート
https://www.nipponsteel.com/tech/report/nssmc/no400.html
◆製品紹介ページ
https://www.nipponsteel.com/product/plate/list/06.html
お問い合わせ先:総務部広報センター 電話03-6867-3419