ESG四半期レポート:2022年第4四半期

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

シュローダーでは、企業とのエンゲージメントや実態調査など、サステナビリティへの取り組みを掲載したサステナブル・インベストメント・レポートを四半期毎に作成しています。本レポートでは、2022年第4四半期のサステナブル・インベストメント・レポートを構成する内容の一部をご紹介します。今回のテーマは、2023年のサステナビリティの展望、新興国における責任ある消費を促進するために投資家は何ができるのかについてです。

2023年のサステナビリティの展望:注目すべき5つのトレンド


 

アンドリュー・ハワード
サステナブル投資グローバル・ヘッド

 
1. 気候変動と政治の意思
シュローダーでは、2022年初めにScience Based Targets イニシアチブによって認定された、温室効果ガス排出削減目標を設定するなど、今後数十年の間にネットゼロに向けて移行することを約束しました。
私たちの気候変動移行アクション・プランは、そのロードマップの概要を示しています。
シュローダーは、私たちの声と影響力を使って、最もリスクの影響が大きいと考えられる企業とエンゲージメントを行い移行計画を策定するよう働きかけることに注力してきました。これからの1年間、シュローダーはこうした取り組みを強化していきます。

2. 自然資本
今日、私たちは毎年、地球1.7個分の資源を使用しており、自然資本の不足がさらに深刻化し、地球上の生態系の劣化が生み出す脅威が強まっています。
ある試算によると、毎年およそ10兆ドルの自然資本の価値が失われており、世界経済に隠れた負債が蓄積していることが明らかになりました。
自然リスクは、投資のリスクとリターンに不可欠な要素になりつつあるのです。そのため、シュローダーは2022年に初めて全社的な「自然のための計画」を発表し、これまでの行動をまとめ、自然損失の原因と影響に対処するための行動の今後の方向性を示しました。

3. 生活費およびその他の社会的ストレス
多くの国で生活費が上昇しています。2023年には圧力は緩和されるかもしれませんが、貧困について注視が必要であると考えています。家計の資金不足に対応できる財政の余裕を持つ国はほとんどなく、社会的ストレスはさらに強まる可能性があります。
COP27や生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)に向け、気候変動や自然が大きな話題となりましたが、今年は、人的資本管理、人権、ダイバーシティ&インクルージョンといった社会的課題により大きな焦点が当てられると思われます。これらは、私たちシュローダーにとって、アクティブ・オーナシップの中核となるテーマです。

4. アクティブ・オーナーシップとインパクト
投資先の企業や資産に対しエンゲージメントを実施する能力は、顧客に対し価値を創造するために必要不可欠なものであり、重要な手段となるでしょう。
私たちは2022年上旬にエンゲージメント・ブループリントを発表し、投資先企業への期待を示しましたが、今後はそれをベースとしていく予定です。
2022年に700以上の機関投資家を対象に行った当社独自の調査では、約半数(48%)が投資のインパクトを重視しており、2020年の約3分の1(34%)から増加していることがわかりました。この傾向は今後も続くと考えています。

5. 規制
規制はEUから世界の他の地域へと広がりつつあり、運用プロダクトが掲げる透明性と明瞭性に対する要求は当然ながら高まるものと思われます。
グリーンウォッシングは、透明性の重要性を強調しており、それを防止するのに必要な要素は、正直さ、透明性、一貫性です。例えば、COP15を前に、シュローダーは自然破壊からの回復と生態系保護のための包括的アクションを企業に求めていく国際的な連合体であるBusiness for Natureの、2030年からすべての大企業と金融機関に対して自然関連の影響と依存の開示を義務付けるよう求めるMake it Mandatoryキャンペーンに署名しました。


新興国における責任ある消費を促進するために、投資家は何ができるのか

新興国は、消費の負の影響が最も大きい地域です。ここでは、インパクト投資家が、よりサステナブルな未来へ向けて流れを変えるためにどのような貢献ができるかをご紹介します。
 

ジョナサン・フレッチャー
エマージング株式ファンドマネジャーおよび
エマージング・サステナビリティリサーチ ヘッド

現在のグローバルの消費パターンは全体として持続不可能であり、気候変動、生物多様性の損失、汚染の原因となっています。
人口の増加と経済の発展に伴い、日常的な商品やサービスの生産と消費に使用される素材の量は急速に増加し、私たちが地球上で生活するために必要な天然資源を枯渇させています。

新興国は、消費の負の影響が最も大きい地域です。しかし、インパクト投資を通じて、よりサステナブルな未来に向けて流れを変えることに貢献する企業に投資することが可能です。その方法をご紹介します。

何が必要なのか?
よりサステナブルな未来、つまり経済成長が環境の悪化に依存しない未来を築くには、先進国、新興国を問わず、世界中で消費パターンを変える必要があります。
私たちは、消費全体を減らすだけでなく、有害なものから責任ある消費へとシフトする必要があります。森林への害を減らし、炭素排出量を減らし、プラスチック包装を減らし、リサイクルによって廃棄物を減らす必要があります。
インパクト投資家は、このシフトにおいて重要な役割を担っています。
新興国は、無責任な消費による影響を最も痛感することになるでしょう。
気候変動など、天然資源の過剰消費による影響は、発展途上国に偏っているだけでなく、廃棄物を処理するインフラが未発達または不足していることが多く、結果として汚染や健康被害が発生しています。

インパクト投資:企業レベルでのポジティブな変化の推進
新興国におけるプラスチックおよび電子機器廃棄物の問題に取り組んでいる2つの企業を紹介します。なお、銘柄の紹介はあくまで例示であり、売買を推奨するものではありません。

ケーススタディ:ATRenew
会社紹介:ATRenewは、「All Things Renew」の略で、すべての遊休品に第二の人生を与えることをミッションとしています。中国で中古家電のリサイクルや下取りサービスを促進するプラットフォームを運営し、デバイスのライフサイクルを延長するために流通させています。

その影響:回収から再販まで、電子製品の再商品化を促進し、電子廃棄物を適切に処理する組織と提携することで、プラスの影響を与えています。製品のライフサイクルを延長する取り組みを通じて、二酸化炭素排出量を削減すると同時に、高品質の電子製品に対する消費者の需要を満たすことを目指しています。
2021年には、3,120万以上の製品が同社のプラットフォームを通じて取引され、中古携帯電話の再利用だけで、46万4,000トンの二酸化炭素排出量を削減したと推定されています。
 

ケーススタディ:クラビン
会社紹介:主に食品産業向けの、紙、板紙、段ボール包装製品のブラジルの大手メーカーです。同社は、林業からパルプ、最終製品まで垂直統合されており、これらの製品と余剰パルプを国内および89カ国の海外市場へ販売しています。

その影響:同社の最終製品は、化石燃料を使用した製品の代替品であるだけでなく、使用される原料はすべてサステナブルな方法で調達されたもので、100%がFSC(Forest Stewardship Council)完全認証、かつ43%が保護区に分類されている自社の森林から、またはFSC基準を満たす第三者からのものです。
同社が管理する森林は、大気中から490万トン相当のCO2を吸収し、SDGsの目標15「森の豊かさも守ろう」の12個のターゲットのうち、2つ目の「あらゆる種類の森林の持続可能な管理の実施を促進する」に直接貢献しています。


2022年第4四半期
エンゲージメント

 



2022年第4四半期
株主の議決権行使

弊社は、我々には株主の議決権を行使する義務があると考えています。従って、議案を評価した上で、株主に対する受託者責任のもと、議決権を行使します。シェアブロッキング等の理由により制限が設けられていない限り、全ての決議において投票しています。
今四半期は保有する企業が開催したうち約97%にあたる1105回の株主総会において議決権を行使しました。
 


2022年第4四半期
エンゲージメントの進捗状況


このセクションでは、1年前(今回の場合、2021年第4四半期)に企業へ行った提案に対しての進捗状況を 「達成」、「ほぼ達成」、「ある程度の変化」、「変化なし」、 「改善の必要なし」に分類することにより評価します。
 


過去3年間における提案の有効性

 



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