日本製鉄 市村産業賞を受賞 ~鋼橋・港湾設備のライフサイクルコスト縮減に貢献する塗装周期延長鋼CORSPACEⓇの開発~
1.市村産業賞の受賞内容
(1) 名称:市村産業賞 貢献賞
(2) テーマ:鋼橋・港湾設備の長寿命化に資する塗装周期延長鋼
(3) 受賞者:日本製鉄(株) 技術開発本部 鉄鋼研究所 材料信頼性研究部 課長 菅江 清信
日本製鉄(株) 厚板・建材事業部 厚板技術部 主幹 長澤 慎
日鉄総研株式会社 調査研究事業部 鉄鋼技術部 参与 専門部長 上村 隆之
2.開発技術「鋼橋・港湾設備の長寿命化に資する塗装周期延長鋼CORSPACEⓇ」の内容
(1) 開発の背景
重要な社会インフラである橋梁の多くは、高度経済成長期に建設され、老朽化が進行しています。老朽化した橋梁の補修・維持管理費用の縮減や少子高齢化に伴う労働人口の減少に対応可能な橋梁のミニマムメンテナンス化・長寿命化技術の構築が課題となっています。鋼橋の多くは塗装防食が施されていますが、塗装の傷部や部材鋭角部などの塗装欠陥部において鋼材の腐食が集中し、進展することから、塗装寿命が著しく短縮する問題がありました。そこで、塗装の弱点である塗装欠陥部の腐食抑制機能を有する新たな耐食鋼の開発に取り組みました。
(2) 開発技術の概要
大気環境の塗装欠陥部の腐食は薄い水膜中で進みます。独自に考案した腐食計測手法により、大気環境の塗装欠陥部の腐食は、水溶液が乾燥する過程で、溶け出した鉄イオンと塩化物の化学反応により酸性化した濃厚な塩化物を含む水溶液中で進行することをはじめて解明しました。本知見を基に、酸性溶液で鉄が溶け出る反応を遅らせる元素を鋭意探索し、鋼材に微量のSn を添加することで、溶け出したSn イオンにより鉄の溶解反応を抑制し、塗装欠陥部の塗膜剥離面積を従来鋼に対して半減させる塗装周期延長鋼CORSPACEⓇを開発しました。
(3) 開発技術の特徴と効果
塗装周期延長鋼CORSPACEⓇは、従来鋼に比べて塗装欠陥部の塗膜剥離面積を半減し、橋梁の塗装塗り替え期間を約2倍に延長します。従来鋼であれば100 年間で3回必要とする塗り替えを1回に削減でき、橋梁のライフサイクルコストを大幅に低減可能です。塗替え回数の削減により塗料製造に伴うVOC 排出も抑制できることから、地球環境負荷の軽減にも繋がります。塩害の厳しい沿岸部だけでなく、融雪塩散布する積雪地域などを中心に国内広く、50 橋超に採用され、また港湾クレーン等にも展開されています。塗装周期延長鋼CORSPACEⓇは、今後も国土強靭化や東日本大震災の復興に貢献し、持続的な社会の実現と安心安全な社会構築に大きく寄与します。
日本製鉄は、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にも合致した活動(「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」)を通じて、これからも社会の発展に貢献していきます。
(参考)
◆開発技術に関する技術レポート https://www.nipponsteel.com/tech/report/nssmc/no400.html
◆製品紹介ページ https://www.nipponsteel.com/product/plate/list/06.html
お問い合わせ先:総務部広報センター 電話03-6867-3419