FIRE特集:世帯収入630万、子育て30代の「夫婦FIRE」

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FIRE特集:世帯収入630万、子育て30代の「夫婦FIRE」
夫400万、妻230万の年収からはじめて2人の子育てもしながら30代で1億2,000万円の資産を形成!

「FIRE」とは資産運用による「経済的自立」「早期リタイア」を意味しますが、不動産をたくさん持っている人や、高収入な人だけの話でしょと思われるかも知れません。しかしグミ&パン夫妻は「平均的な収入があれば誰にでも『FIRE』ができる」を実践して、その様子を『夫婦でFIRE』という一冊の著作にまとめました。

夫400万、妻230万の手取り年収からスタートし、子ども2人を育てながら、30代で1億2,000万円の資産を築きました。FIREに向かう道のりと、達成して変わった人生について伺います。

自分たちの目的や価値観を発見する

「夫婦生活は長い会話である」という格言がありますが、どんな会話があるのでしょうか。好ましくない例では、会話すれば喧嘩ばかりとか、仮面をかぶった上辺だけの会話などを続ける夫婦もいます。逆に、お互いの気持ちや考えを察し合い、理解し合う会話を続ける夫婦もいるでしょう。グミ&パン夫妻は「喧嘩することも多かったですが、FIREをきっかけにお互いの考えを理解し合うようになったと思います」という夫婦です。

夫であるパンさんは未来志向で、ロジックや客観性を重視する性格。一方で妻のグミさんは現実への適応性が高く、日々の幸せを積み重ねた先に将来が続いていると考える性格です。「投資は学生時代からやっていましたが、最初は夫婦で取り組むのが重要だとは思っていませんでした。しかしFIREを目指し、将来に向けて資産を増やしたいと考えたとき、貯金や運用資産の多寡を考えると、支出の見直しや普段の給与収入が大切になります」とパンさん。つまり夫婦の協力の必要性を感じました。

パンさんから最初にFIREの話を聞いたグミさんは「普通に貯金をしたり、宝くじでも買ったりしたらいいんじゃない、くらいの理解でした」。その意識の差に対し、パンさんは家庭における支出の引き締めや、投資の有利さを説いたわけではありませんでした。「なぜ目指すかの理由づけが妻にも必要だと思いました。つまりどういう人生に幸せを感じるかのヒアリングですよね」。夫婦がFIREの取り掛かりにしたことは、何に豊かさを感じるのかを探りあうことでした。

「まず、理想の生活を自由にイメージすることです。そのために断捨離を行いました」。そうすることで残ったものが自分たちにとって本当に大切なもの、何にお金を使うと幸福度が上がるのかを洗い出したのです。「それまでは何でそんなものを集めているのかと、疑問に思ったり、喧嘩の原因になったりするお金の使い道もありました。でも断捨離を通じて、深く話し合うことで、相手の価値観を突きつめました。お互いに本当に好きなもの、それに伴う出費は幸せにつながるのだと、正当な支出として理解できたのです」。

また「死ぬまでにやりたいことリスト」を作り、それを何歳位で実現させるか、準備すべき必要資金を描いた「タイムバケット」を作成。さらに自分や相手の資質を知れる分析ツール「ストレングスファインダー」を行いました。

「お互いの得意、不得意を考慮して役割分担をしながらFIREを目指せます。成果を確認し合うことができますし、夫婦で励まし合えるのは大きいです。自分を理解し、相手を理解し、相手を尊重して自分も大切にする」(パンさん)
お金や日常の行動を、自分たちの目的や価値観に紐づけて考えるようになったそうです。 

理想の生活を描き出した結果、「お金」を適切に投資に回し、「時間」を夫婦の価値観の理解や収入を増やす行動により多く使えるようになりました。将来訪れる夫婦と子どものライフイベント、それに資産額や年間収支を図示した「ライフプラン表」も作成。人生でどのくらいお金が必要か、想定される生涯収入と支出、投資で補う額を一覧にしました。家族の幸福にとってどのタイミングでお金を使うのがよいかが一目瞭然になります。

シンプルな投資から始める

夫婦の価値観の擦り合わせ、支出や収入の整理ができたところで、『夫婦でFIRE』の最後は投資について語られます。投資の目安として「4%ルール」が有名です。資産の4%の年間収益(譲渡益、配当金、分配金など)で生活をするという考え方です。つまり運用資産の4%以内の年間支出で生活できるようになれば、FIREが達成できるといわれています。

グミ&パン夫妻の場合、年利3%で運用、生活費33年分の資産額を基準にしました。そして年間の生活費を360万円に設定し、360万円×33年分≒1億2,000万円くらいの資産を目標にしました。

「平均点をとるのは投資経験ゼロの素人でも可能です。投資はやるかやらないかが一番重要です」とパンさんは書いています。本書にはその手順や注意点が、分かりやすくまとめられています。

そして2021年に夫婦はFIREを達成しました。

「途中経過にしか過ぎないと思っていますので、私たちのFIRE達成は静かで地味なものでした。ただ自分が自由に使える時間が増えて、子どもと過ごす時間を大切にしています」とパンさん。

一方でグミさんは「経済的に安定を得たことで、目指す幸せに向かって集中できるのがありがたいと感じています」。自分達の設定した目標に向かいつつ、淡々とした日々が流れているようです。

「計画性があったら、もっと違った夢を描いて人生を歩めたかも」と晩年になってあなたは後悔するでしょうか。それともFIREを目指す中で、資金計画以外にも自分や家族の望む人生の価値観を考えるでしょうか。それがすべてではないかも知れませんが、FIREを目指す過程で根拠のある夢や理想を掲げることができます。「自分が何をしたいのか? どう生きたいのか? そのために何をすれば良いのか? FIREは生きたい人生を生きるための手段でしかありません」。グミ&パン夫妻の言葉に人生の指針をもらった気持ちになります。

グミ&パン
大学時代に同じサークルで知り合い、付き合い始める。卒業後、約3年間の遠距離恋愛をへて結婚。30代後半で現在、2人の娘と首都圏近郊で4人暮らし。妻に子どもと一緒に実家(地方)の近くに住みたいという思いが強くあったため、Uターンして転職するのではなく、セミリタイアを目指すように。FIREという言葉自体を知ったのはその後だったが、結果的に目指していたのがたまたまFIREだった。

グミ(妻)
大学卒業後に「医療・保健・福祉」関連の仕事に従事。学生時代までは優等生タイプだが、お金にはまったく興味がなく、計算が大の苦手。結婚当初は浪費癖があり、貯蓄はあまりなかった。

パン(夫)
唯一合格した大学へ入学後、パチスロ三昧で留年。株式投資もパチスロで稼いだお金で開始。技術職の仕事に従事後は1日12時間労働を約7年続けた。
 
「夫婦でFIRE」(フォレスト出版)

ブログ:家族で育てる資産の木
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Words:TOMOHIRO TSUCHIYA
Illustration: Takashi Koshii


取材日:2023/2/3

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