9・10月は台風による太陽電池発電所の被害に注意!

独立行政法人製品評価技術基盤機構

~大雨、強風に備え、被害を最小限に~

    独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、電気事業法に基づく電気工作物※1の事故情報データベースを用いて、2019年度から2021年度の3年間に発生した台風による電気事故※2を分析しました。その結果、全国の自家用電気工作物※3における台風起因の事故は、9月と10月に集中して発生しており、中でも太陽電池発電所の被害が一番多いことが明らかになりました。

 

 


 近年においては、大型の令和元年東日本台風(台風19号)、令和元年房総半島台風(台風15号)による甚大な被害が確認されました。今秋は大型で強い台風が発生するという研究報告もあり、特に太陽電池発電所の設置者及び事業場の保安業務を行っている主任技術者等におかれましては、被害を最小限にするための予防点検や事前対策を行うなど、早期の段階で台風に備えておくことが大切です。
 
  • 台風接近前の事前対策として
①最新の気象情報の確認
②強風による被害が想定される場合
・太陽電池パネルを固定する金具や、架台の接合部のボルトが緩んでいないかどうか点検してください。
・キュービクルや配電盤の扉はしっかりと閉じるなど、設備の管理状況を確認してください。
・巡視等により、太陽電池パネル、架台、集電箱、パワーコンディショナや受変電設備など屋外電気設備の破損や部品の外れがないかどうか確認してください。飛散が懸念される電気設備や部品は飛ばないように固定したり、電気設備以外の建物の屋根材、農業用ビニールシート等も飛散しないよう、補修・補強等の対策を講じてください。
③大雨による被害が想定される場合
・集電箱、パワーコンディショナ、キュービクル等の屋外電気設備を点検し、外郭に亀裂や破損など隙間がある場合には、雨水の浸入を避けるため、穴を塞ぐなどの措置をとってください。
・電気設備が浸水しないように構内及び周辺の側溝や排水口の掃除を行い、水はけを良くしてください。
・電気設備の周辺にある崖や法面が豪雨によって土砂流出するおそれがある場合には、補強工事や防護壁の設置、排水ルートの確保などを検討してください。崖や法面に崩壊の兆候が見られる場合には、土地所有者・管理者、自治体へ通報してください。
 
  • 台風通過後の事後対応として
①電気設備の臨時点検の実施
・台風通過後は、速やかに設備の臨時点検を行い、異常の有無を確認してください。
・電気事故又はその疑いがある場合には、当該地域を管轄する産業保安監督部に報告してください。
・太陽電池パネル、集電箱、パワーコンディショナが水没・浸水した場合やケーブルが断線した場合、漏電や感電する恐れがあります。
②迅速な応急処置の実施
 設備の被害が認められた場合は、できるだけ速やかに応急処置(破損した電気設備の撤去、銅線が露出し  
た電線の保護等)を行ってください。
③被害が生じた設備の修理・改修の実施
・被害が生じた設備は安全が確認されたのち、適切に修理・改修を行ってください。
・架台の強化や、設置位置をこれまでより高い位置に変更する、排水ルートの改善等が考えられます。
(※1)発電、蓄電、変電、送電、配電または電気を使用するために設置する工作物のこと。
(※2)電気関係報告規則第3条及び第3条の2に掲げる電気事故。感電死傷事故、破損事故、物損事故(電気工作物の破損等により第三者の物件に被害を与えた事故)、波及事故(需要設備等で発生した事故が原因となり、電力会社の配電線及び配電線から受電している第三者のビルや工場等の電気設備を停電させる事故)などがあります。
(※3)主に大規模マンション、ビル、オフィス、工場等、電気を多く使用する施設で用いられる、高圧(600V以上)で受電する工作物を指します(電気事業で用いられるものを除く。)。

 
  • 台風による電気事故の分析結果
1.台風起因の事故発生状況
 全国の自家用電気工作物における台風起因の事故は、2019年度から2021年度の3年間で45件報告されています。発生月別に見ると、9月と10月に集中しており、全体の約93%に相当する42件の事故が発生。例年、台風が多く観測される時季に、関東地方や東北地方を中心に事故が起こっていたことが分かりました(図3)。
 設備別に見ると、発電設備※3(太陽電池・風力・水力発電所)での事故が多く、そのうち37件と、太陽電池発電所が最も被害を受けています。その内訳(事故種類)を見ると、太陽電池パネル、架台、パワーコンディショナなどの破損事故/物損・破損事故が33件(全体の約73%)を占めています(図4、図5、図6)。
 
 
 
 


(※3)太陽電池発電所、風力発電所、水力発電所等で電気を発電するために設置する電気工作物。太陽電池パネル、風力タービン、水車などの装置と、関連するPCSや発電機等の設備のこと。
(※4)強風によってパネルと架台が破損した等、同一の事故の中で複数の機器が破損した場合、パネル(強風)、架台(強風)それぞれを1件としてカウントしています。
 

2.台風起因の事故被害状況
 2019年度から2021年度に発生した台風起因の事故45件について、台風の特性(大雨による被害、強風による被害)別に被害状況を見ても、太陽電池発電所が最も被害を受けていたことが分かります(図7)。
いわゆる「風台風」と「雨台風」では、被害状況にも違いが見られます。令和元(2019)年は、この特性の異なる2つの台風が相次いで上陸。風台風の「令和元年房総半島台風(台風15号)」では強風に伴う送電線の鉄塔倒壊や配電線の損傷などによる停電被害が、雨台風の「令和元年東日本台風(台風19号)」では豪雨に伴う河川氾濫による浸水被害等が発生しました(図8)。
 
 

 

3.台風起因の事故事例
・令和元年房総半島台風(風台風)の事例  事故発生年月 2019年9月(関東地方)
【被害の状況】太陽電池発電所、電気工作物の破損等による物損
太陽電池発電所の太陽電池パネル約200枚が強風により破損した。また、その一部が発電所構外へ飛散した。※6
【事故の原因】
台風通過時に、太陽電池パネル及び架台等の支持物が設計基準を上回る強風を受けたことで、太陽電池パネルが架台から外れて破損し、飛散したものと推定される。
(※6)パネル等が飛散した場合、他者に被害を与える可能性があることから、電気関係報告規則第3条及び第3条の2に掲げる電気事故として当該管轄する地域を管轄する産業保安監督部に報告する必要があります。
 
・令和元年東日本台風(雨台風)の事例  事故発生年月 2019年10月(関東地方)
【被害の状況】太陽電池発電所、電気工作物の破損
太陽電池発電所の太陽電池パネル・支持物(約80kW分)及びパワーコンディショナが構内法面の土砂崩れによって損壊した。
【事故の原因】
台風の豪雨によって構内の法面で土砂崩れが発生し、崩れた土砂が太陽電池パネル・支持物及びパワーコンディショナを押し流すなどして破損事故に至ったものと推定される。
 
・雨台風の事例 事故発生年月 2021年9月(関東地方)
【被害の状況】太陽電池発電所、電気工作物の破損
太陽電池発電所のパワーコンディショナのインバータ冷却ファン内部へ水分が浸入し、ファン内部で地絡を発生させた。
【事故の原因】
台風の豪雨によって屋外収納盤の天面から雨水が内部へ浸入し、更に収納盤内部に設置されたパワーコンディショナ本体の天井部換気口を介してインバータ冷却ファン内部にも水分が浸入したため、ファン内部で地絡が発生した。
 

■事故を防ぐためのポイント
4.台風起因の事故を未然に防ぐために
未然防止に有効と考えられる対策を以下に示します。
台風起因の事故を未然に防ぐためには、台風の特性(大雨と強風)に応じた対策を講じることが重要です。設置者及び事業場の保安業務を行っている主任技術者等におかれましては、これから台風による事故のリスクが高まる時期を迎えるにあたり、未然防止に係る取組の強化をお願いいたします。
 
  • 台風接近前の事前対策
被害を未然に防止するため、台風期前までに、設置者各々の責任において、太陽電池パネルの飛散等による被害防止のための万全な対策が必要となることから、経済産業省は以下の点を周知しています。
 
・太陽電池発電設備が電気設備の技術基準、発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令に適合していることを確認すること。
・太陽電池発電設備の架台・基礎などが必要な強度を有している事を確認し、また構造、強度に影響する接合部にゆるみや錆、破損がないことを確認すること。
・太陽電池パネルの架台への接合部にゆるみや錆、破損がないことを確認すること。
・電力ケーブルやケーブルラック取付部に、ゆるみや破損がないことを確認すること。
・柵や塀、遠隔監視装置などが、健全な状態に維持されていることを確認すること。
太陽電池発電設備の点検後、対策の要否を判断し、必要に応じて、基礎のコンクリートの増し打ち、基礎・架台・太陽電池パネルの接合部補強などの飛散被害を防止する対策を行うこと。
 
出展:経済産業省「事業用太陽電池発電設備に対する台風期前の点検強化の周知依頼について」及び「一般用太陽電池発電設備に対する台風期前の点検に係る周知について」
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2020/06/20200601.html
 
その他、以下の①~③が台風接近前の事前対策として想定されます。
 
①  最新の気象情報の確認
気象庁・自治体・防災機関等から最新の気象情報を入手し、現地の状況把握に努めてください。
 
②  強風による被害が想定される場合
・太陽電池パネルを固定する金具や、架台の接合部のボルトが緩んでいないかどうか点検してください。
・電気設備(キュービクルや配電盤)の扉はしっかりと閉じるなど、設備の管理状況を確認してください。
・巡視等により、太陽電池パネル、架台、集電箱、パワーコンディショナや受変電設備など屋外の電気設備の破損や部品の外れがないかどうか確認してください。飛散が懸念される電気設備や部品は飛ばないように固定したり、電気設備以外の建物の屋根材、農業用ビニールシート等も飛散しないよう、補修・補強等の対策を講じてください。
 
③  大雨による被害が想定される場合
・集電箱、パワーコンディショナ、屋外電気設備(キュービクルなど)を点検し、雨水の浸入が発生の恐れがないか確認をしてください。外郭に亀裂や破損など隙間がある場合には、雨水の浸入を避けるため、穴を塞ぐなどの措置をとってください。
・電気設備が水没、浸水しないように構内及び周辺の側溝や排水口の掃除を行い、水はけを良くしてください。
・電気設備の周辺にある崖や法面が豪雨によって土砂流出するおそれがある場合には、補強工事や防護壁の設置、排水ルートの確保などを検討してください。崩壊の兆候が見られる場合には、土地所有者・管理者、自治体へ通報してください。
 

 
  • 台風通過後の事後対応
①  電気設備の臨時点検の実施
台風通過後は、速やかに設備の臨時点検を行い、異常の有無を確認してください。
外観に異常が認められない場合であっても、設備内部で異常が発生している可能性があります。また、設備の絶縁状態についても異常がないか確認を行ってください。
・太陽電池パネル、集電箱、パワーコンディショナが水没・浸水した場合やケーブルが断線した場合、漏電や感電する恐れがあります。その場合、事業場の保安業務を行っている主任技術者等に太陽電池パネルと接続箱の切り離しについて御相談ください。
・電気事故※もしくはその疑いがある場合には、当該地域を管轄する産業保安監督部に報告してください。(※電気関係報告規則第3条及び第3条の2に掲げる電気事故)
 
②  迅速な応急処置の実施
特に台風通過後は、太陽電池パネル、架台等の破損、集電箱・パワーコンディショナの雨水の浸入や接続しているケーブルが断線している恐れがあります。
設備の被害が認められた場合は、できるだけ速やかに応急処置(破損した電気設備の撤去、銅線が露出した電線の保護など)を行ってください。
 
③  被害が生じた設備の修理・改修の実施
・被害が生じた設備は安全を確認したのち、適切に修理・改修を行ってください。
・対策としては、架台の強化や、架台や設備の設置位置をこれまでより高い位置に変更する、排水ルートの改善等が考えられます。
 
※作業の際は、事業場の保安業務を行っている主任技術者等や第三者(公衆)に対する感電・怪我等の二次被害の発生に十分留意してください。特に電気設備に浸水を確認した場合は漏電により感電するおそれがあります。水没や浸水を確認した場合は、不用意に近づかないでください。


(参考リンク)
※「2023年度夏季の自然災害に備えた電気設備の保安管理の徹底について」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2023/05/20230531-2.html
※「建築物における電気設備の浸水対策」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/shinsuitaisaku.html
※「災害・防災関連情報」(経済産業省関東経済産業局)
https://www.kanto.meti.go.jp/saigai_kanren/index.html
※「台風接近前の飛来物対策のお願い」(中部近畿産業保安監督部)
https://www.safety-kinki.meti.go.jp/denryoku/2020/hiraibutsu.html
※「台風情報」(気象庁)
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#5/23.685/120.015/&elem=root&typhoon=all&contents=typhoon
※「太陽光発電システムの水害時の感電の危険性について(ver.02)」(太陽光発電協会)
https://www.jpea.gr.jp/news/533/
 
 
  • 参考情報
詳報公表システムをご利用ください
独立行政法人製品評価技術基盤機構は、2022年1月から「詳報公表システム」の運用を開始しています。これは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)を一元化した国内初のデータベースで、2020年度からの事故情報を順次公開しています。詳報公表システムは、電気事業者をはじめ、どなたでもご自由にお使いいただけます。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能です。
 
詳報公表システム >> https://www.nite.go.jp/gcet/tso/kohyo.html
 


NITE 電力安全センターについて
 NITE電力安全センターは、経済産業省(原子力発電設備等以外を所掌)からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の工事、維持及び運用における安全を確保するため行政活動)を技術面から支援するために、2020年4月、電気保安業務の専従組織として発足しました。現在、NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、電気保安の維持・向上に資するさまざまな業務に取り組んでいます。
 
NITE電力安全センターの業務紹介 >>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html

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