円偏光発光色 緑や青に自由自在 らせん形状の極小ガラス容器による簡便な制御技術を確立--大阪工業大学

大阪工業大学

大阪工業大学(学長:井上晋/大阪市旭区)応用化学科の平井智康准教授・坂井飛成(化学・環境・生命工学専攻博士前期課程1年)、台湾の国立陽明交通大学(学長:林奇宏/新竹市東区)の李明家准教授、東京工業大学(学長:益一哉/東京都目黒区)の早川晃鏡教授らの国際研究グループは、らせんの形をした極小ガラス容器に蛍光分子と溶媒を入れるというシンプルなアイデアで、緑から青色まで自在に円偏光発光(CPL)の発光色を制御する技術を確立しました。 【本件のポイント】 ●らせん形状の極小ガラス容器に分子や溶媒を入れるシンプルなアプローチで、緑色から青色のCPLが得られる ●固体粉末での利用が可能である ●次世代ディスプレイや量子コンピュータへの応用が期待される  光の振動の方向が偏った光を偏光と呼びます。更に光の振動が右あるいは左方向に円を描きながら進行する偏光のことを円偏光と呼びます。太陽の光や蛍光灯の光には右回りと左回りの円偏光が同じ割合で含まれています。一方、分子などを利用して右回りと左回りの円偏光のうち、どちらかに偏った光を発光させる現象のことを円偏光発光(CPL)と呼びます。CPLを示す材料は3次元ディスプレイや量子コンピュータへの応用展開が期待されます。これまでCPLを示す材料には高価であるキラル※1な構造からなる分子が必要とされてきました。また、CPLの色を変化させるためには、その都度キラル分子を作る必要がありました。  研究グループでは独自の手法で調製した、らせん形状の極小ガラス容器にアキラル※2な蛍光分子と溶媒を入れることでCPLが観測されることを明らかにしました。更に、溶媒の種類(水、メタノール)及びその混合比を変えることでCPLの発光色を緑から青色まで自在に変化させることに成功しました。  本研究成果より、(1)安価なアキラルな分子を利用してCPL材料の開発が可能になります。また、(2)らせん形状の極小ガラス粉末容器に蛍光分子溶液を入れる技術のため、ガラス容器の中に溶液が含まれた固体粉末としてCPL材料を取り扱うことができます。  本研究は、国立研究開発法人エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のムーンショット型研究事業(JPNP18016)及び燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業(JPNP20003)、JSPS科研費(JP22K05245)により推進され、このほど米国化学会(ACS)の化学系トップオープンアクセスジャーナルである「JACS Au」に掲載されました。更に''supplementary cover''として採択されました。 URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacsau.3c00390   用語説明: ※1キラル  右手と左手の関係のように、鏡に映った像を重ね合わすことができない性質をもつ分子のこと。 ※2アキラル  キラルとは逆に、鏡に映った像を重ね合わすことができる分子のこと。 論文情報 論文名 Controlling Circularly Polarized Luminescence using Helically Structured Chiral Silica as a Nano-Sized Fused Quartz Cell(和訳:らせん構造を有するキラルシリカを微小石英セルとして利用した円偏光発光の制御) 著者名 坂井飛成 1、Tsz-Ming Yung 2、牟礼知輝 1、黒野直樹 1、藤井秀司 1、中村吉伸 1、 早川晃鏡 3、Ming-Chia Li 2、平井智康 1 1 大阪工業大学工学部 応用化学科 2 国立陽明交通大学(台湾) 3 東京工業大学 物質理工学院 材料系 雑誌名 JACS Au DOI 10.1021/jacsau.3c00390 公表日 2023年9月15日(オンライン公開) ▼本件に関する問い合わせ先 学校法人常翔学園 広報室 石村、上田 住所:大阪市旭区大宮5丁目16番1号 TEL:06-6954-4026 メール:Koho@josho.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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