【ニュースレター】事業の更なる深化のための「インパクト加重会計」

ヤマハ発動機株式会社

女性や子どもたちの水汲み労働からの解放は、「ヤマハクリーンウォーターシステム」の設置が生み出す代表的な価値の一つ

創出価値を「経済的効果」で測定・評価
 「ヤマハクリーンウォーターシステム(以下・YCW)」は、“緩速ろ過”という自然界の水浄化の仕組みを応用したコンパクトな浄水装置です。専門家によるオペレーションや大きな電力、特別な薬品等を必要とせず、住民による自主メンテナンスが可能なことから、水道設備のない新興国や途上国の小さな集落などで有効とされています。
 「安全な水」へのアクセスは、SDGsにも掲げられた重要な課題の一つ(目標6)です。現在も世界人口の26%にあたる約20億人が「安全に管理された飲み水を使用できていない」(ユニセフ/2020年)とされており、当社では国際機関やNGO、現地の日本大使館等と協力しながら積極的に「YCW」の普及・導入を進めています。
 “水が変われば暮らしが変わる”という思いを共有し、約20年間の活動で設置した浄水装置はアフリカや東南アジアに計50基。この実績に「社会課題への有効なアプローチとして内外から高く評価をいただいていますが、一方で経済効果が不明瞭だったり、どの程度の生活改善につながっているのかつかみにくいという課題がありました」と、当社海外市場開拓事業部の今井久美子さん。「事業継続の基盤を高めていくためにも、もう一歩踏み込んで創出している価値を定量化し、ステークホルダーの皆様にお伝えする必要があると考えました。今回試みた“インパクト加重会計”は、その一つの手法として非常に有効だと感じています」と話します。

 
約20年間の活動で、世界16か国に計50基設置されている「ヤマハクリーンウォーターシステム」

適切な「次なるアクション」の立案にも有効
 インパクト加重会計は、企業活動が環境や社会にどのような影響をもたらしたのか、そのインパクトを貨幣価値に換算して開示する取り組みです。「測定自体が難しいのですが、今回は浄水装置の設置で“どれだけ水汲み時間が削減されたか”、また“どれだけ下痢等が減少したか”という2点にフォーカスしてフレームワークを組みました」(今井さん)
 その結果は、2011年以降に設置した37基の総計で、およそ1,540万ドル。受益者は11か国合わせて約3万9,000人に及び、水汲み労働に割かれる時間や下痢などで仕事ができない時間が削減されたことで、期待される1人あたりの年間収入は5~8%改善すると算出されました。
 「この数字は、事業を進めている私たちの肌感覚としても妥当と感じました」と今井さん。受け継がれてきた“水が変われば暮らしが変わる”という担当者たちの思いも、あらためて裏付けられた格好です。
 「インパクトには一次的なものだけでなく、二次・三次的なものも存在します。算出された数字は、次なる適切なアクションについて考える機会にもつながっています」と今井さん。「人びとの生活の質向上をゴールに、さらにこの活動を深めていきたい」――。そう話してくれました。

 
1次インパクトの次に期待されるのは、子どもたちの就学機会の拡大や、
水に関わるビジネスによる収入増加といった2次的なインパクト

■クリーンウォーターシステムの展開
https://global.yamaha-motor.com/jp/profile/csr/impact-assessment/03/

■広報担当者より
近年、投資家の皆さんだけでなく、広く社会から「企業がどのような社会貢献をしているか」ということが問われるようになりました。私たち企業も財務指標だけでなく、重要な要件を連動させたさまざまな試算を行う必要があると感じています。「インパクト加重会計」は、ロジカルかつ納得性の高い有効な指標の一つとして期待されています。
 

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