近畿大学農学部と姫路市が新しい野菜による山間地農業の振興に挑戦 お正月野菜「チョロギ」の超短期栽培技術の開発に成功

近畿大学

近畿大学農学部(奈良県奈良市)農業生産科学科花卉(かき)園芸学研究室は、兵庫県姫路市とともに、姫路市莇野(あぞの)地区の農業振興に取り組んでいます。新しい野菜の導入による山間地農業の振興を目指して、おせち料理に用いられるシソ科の野菜「チョロギ」の新たな生産体系を構築し、栽培期間を約半分に短縮することに成功しました。 本研究に関する論文が、令和6年(2024年)1月24日(水)、園芸学分野の学術誌"The Journal of Horticultural Science and Biotechnology"(ザ ジャーナル オブ ホーティカルチャラル サイエンス アンド バイオテクノロジー)にオンライン掲載されました。 【本件のポイント】 ●近畿大学農学部と姫路市が、山間地農業の振興を目指し、チョロギの生産体系を構築 ●発根苗を利用した栽培で、収穫までの期間を約4カ月に短縮することに成功 ●短期栽培でもチョロギ塊茎に含まれるオリゴ糖のスタキオースの量は変わらないことが明らかに 【本件の背景】 チョロギは、日本では野菜として知られ、主にハレの日の食材としておせち料理に利用されていますが、中国では薬用植物として位置づけられ、高い機能性が認識されています。チョロギ塊茎に多量に含まれるオリゴ糖のスタキオースは、腸内環境を整える機能を持っており、日本でも日常の食材としてさまざまな食品への利用が期待されます。 一方、チョロギは栽培に手間がかからないため、農業振興に有用な作物であるといえますが、栽培期間が長く、収穫までに7~8カ月を要することが課題です。 【本件の内容】 近畿大学農学部の研究チームは、チョロギのスタキオース含量を維持したまま、栽培期間を劇的に短縮する栽培法の開発に取り組みました。 塩類濃度の低い培養液での挿し木において、培養液への酸素供給を組み合わせることにより、通常、2週間程度を要するところ、わずか1週間程度で根を出させる新技術を開発しました。これにより、チョロギのウイルスフリー苗を効率良く生産することが可能となりました。また、植え付け時期を変えた実験では、通常4月頃に塊茎の植え付けを行うところ、発根苗であれば9月の定植であっても十分な塊茎の生産が可能であることを明らにしました。さらに、この栽培方法によって得られたチョロギのスタキオース含量は、従来の栽培方法と変わらないことを確認しました。 これらの結果により、従来の栽培方法よりも大幅に作付け時期を遅らせ、わずか4カ月という短い期間でチョロギを収穫することが可能となりました。この新技術を活用することによって、各地域の主要な作物の裏作としてチョロギの生産が容易になり、より身近なものとして栽培することが可能になります。 【論文情報】 雑誌名:The Journal of Horticultural Science and Biotechnology     (インパクトファクター:1.918@2023-2024) 論文名: Evaluation of yield and tuber functionality in short-term cultivation of Chinese artichoke using propagated cuttings (挿し木によるチョロギの短期栽培における収量と塊茎の機能性の評価) 著者名:池本真優1*、山崎彬1,2、大西徹3、石上太一2、福滿仁2、大池数馬2、井上清4、上垣浩一1,3,5、細川宗孝1,2,5※ *筆頭著者、※責任著者 所属 :1 近畿大学大学院農学研究科農業生産科学専攻、2 近畿大学農学部、3 近畿大学大学院農学研究科応用生命科学専攻、4 姫路市、 5 近畿大学アグリ技術革新研究所 URL :https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14620316.2024.2304559?src=exp-la DOI :10.1080/14620316.2024.2304559 【研究代表者のコメント】 細川宗孝(ほそかわむねたか) 所属  :近畿大学農学部農業生産科学科 職位  :教授 学位  :博士(農学) コメント:姫路市莇野地区でも農業の高齢化が進み、放棄地が増えています。新しい野菜を新しい技術で作ることで、産地づくりを進め、新規産業の種を播きたいと思い、姫路市との共同研究を始めました。チョロギは全く癖のない食味でどのような料理にも使えます。また、健康機能性の高い食材でもあり、今後は様々な加工が期待されます。チョロギの形を貝に見立てて「山の潮干狩り」と題するイベントが地域の高齢者によって始められ、ご家族連れや子供達が楽しそうに芋掘りをしています。一つの作物によってアイデアの連鎖反応が起こる面白さを感じています。 【関連リンク】 農学部 農業生産科学科 教授 細川宗孝(ホソカワムネタカ) https://www.kindai.ac.jp/meikan/2167-hosokawa-munetaka.html 農学部 農業生産科学科 助教 山崎彬(ヤマザキアキラ) https://www.kindai.ac.jp/meikan/2736-yamazaki-akira.html 農学部 応用生命化学科 教授 上垣浩一(ウエガキコウイチ) https://www.kindai.ac.jp/meikan/2138-uegaki-koichi.html 農学部 https://www.kindai.ac.jp/agriculture/ ▼本件に関する問い合わせ先 広報室 住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1 TEL:06‐4307‐3007 FAX:06‐6727‐5288 メール:koho@kindai.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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