【大阪大学】万博で量子を"体感"する! 「純国産」量子コンピュータに来場者がクラウドアクセス可能に! 【企画展:8/14~8/20 @万博会場】



大阪大学量子情報・量子生命研究センター(QIQB)は、4月13日に開幕した大阪・関西万博での企画展「エンタングル・モーメント ―[量子・海・宇宙]×芸術」(会期:8/14~8/20)に出展し、量子コンピュータ*¹2台を使った来場者体感型イベント・展示を行います。このイベントでは、来場者が量子コンピュータにクラウドで接続し、簡単な操作法を学んでいただくことができます。また、量子ビットが最大にもつれた状態「エンタングル・モーメント」を実現し、芸術家とのコラボレーションにより来場者に量子もつれ(エンタングル)*²の世界を体感いただけるような展示を行います。一般の方にはなじみの薄い「量子」の世界を、多くの人に「体感」していただける貴重な機会です。設置する量子コンピュータの1台は初の純国産量子コンピュータです。現在日本で稼働する3台の量子コンピュータには海外製造品が一部使用されています。量子コンピュータを自製する技術を日本ですべて保持し、また主要部品すべてを国産でそろえた「純国産型の量子コンピュータ」の開発が望まれてきました。今回、共同研究を行う株式会社アルバックならびにアルバック・クライオ株式会社が開発した希釈冷凍機*³が大阪大学に設置されたことで、初の純国産量子コンピュータが誕生します。キュエル株式会社開発の新型制御装置*⁴、理研から提供される新型超伝導量子ビット*⁵チップの導入により、一刻も早い稼働を目指しています。




◆企画展「エンタングル・モーメント ―[量子・海・宇宙]×芸術」と開催イベントについて
 企画展「エンタングル・モーメント ―[量子・海・宇宙]×芸術」は、2025年の「国際量子科学技術年*⁶」宣言を記念して大阪・関西万博会場で開催されるもので、量子のミクロの世界、私たち生命を育む海洋と地球、そして広大な宇宙という3つのテーマを、科学・技術・芸術のコラボレーションを通じて多くの方に体感していただく企画です(主催:内閣府、文部科学省)。
 今回、この企画展に大阪大学QIQBに設置している量子コンピュータ「3号機*⁷」「純国産機」を使ったイベントを出展します。
 「純国産機」では、来場者に量子コンピュータの操作法や仕組みを学んでいただくことができます。会場に置かれた通常のコンピュータから、来場者が量子コンピュータにアクセスし操作することができます。コンピュータから命令を送ると、その命令はオープンソースソフトウェアOQTOPUS*⁸で変換され、インターネットを伝って大阪大学へと送られ、それに基づいて制御装置から制御信号が生成されます。その信号が希釈冷凍機の中を走り、量子ビットへと到達する様子をわかりやすく紹介します。
 「3号機」は万博会場からの操作を行い、量子ビットが最大にもつれた「エンタングル・モーメント」を実現します。多摩美術大学情報デザイン学科・久保田晃弘教授とのコラボレーションにより、実機を用いた量子コンピュータアートの展示と、チップ上での量子もつれ(エンタングル)状態を体感できるようなアートイベントです。多数の量子ビットをエンタングルさせるには量子コンピュータとしての性能を引き上げていく必要があります。4月から8月にかけてその性能が向上していく様子も企画展では公開します。

■企画展「エンタングル・モーメント ―[量子・海・宇宙]×芸術」詳細
【会 期】 2025年8月14日(木)~8月20日(水)
【時 間】 10:00~20:00 (入場は閉館の30分前まで) ※変更の可能性あり
【場 所】 大阪・関西万博EXPOメッセ「WASSE」
【対 象】 一般・小学生から大人まで
【主 催】 内閣府、文部科学省
【共 催】 総務省、経済産業省
【プロデューサー】 森山朋絵(東京都現代美術館/大阪芸術大学)
【コ・プロデューサー】 安藤英由樹(大阪芸術大学)、大谷智子(大阪芸術大学)
【企 画】 瀬戸勇紀、吉岡佑真、大西将徳
【メインビジュアル・展示グラフィック監修】 永原康史
【編集ディレクション】 楠見春美
【展示コーディネーション】 莇貴彦(CG-ARTS)、林秀夫(CG-ARTS)
【詳細リンク】 https://www.qst.go.jp/site/entangle-moment/
※量子コンピュータのイベント詳細は、QIQBのWebサイトにて順次公開予定です。
 https://qiqb.osaka-u.ac.jp/

◆クラウド接続される量子コンピュータについて
 今回クラウド接続する量子コンピュータは2台です。いずれもQIQBに設置されています。
① 2023年12月より稼働している「3号機」
② 開発中(2025年4月時点)の「純国産機」

<「3号機」について>
 2023年3月27日、理研にて国産量子コンピュータ初号機が稼働しました。次いで、同年10月5日に富士通株式会社が理研と共同して2号機の開発に成功し、同年12月22日、QIQBで3号機が稼働しました。QIQBの3号機は、希釈冷凍機を除いて、ほとんどの構成部品(低温マイクロ波ケーブル、低温増幅器、低雑音電源、磁気シールド、チップパッケージ、制御装置、超伝導増幅器、超伝導ケーブル)を国産で揃えています。理研から提供された超伝導量子ビットチップは64量子ビットが搭載されており、この規模の超伝導量子コンピュータを開発し保有しているのは日欧米の大学では大阪大学しかありません。

・「大阪大学に設置した超伝導量子コンピュータ国産3号機のクラウドサービスを開始」
 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231220_1

 大阪大学は制御装置ならびにソフトウェアの開発で稼働に貢献しました。その後も開発を進め、2025年3月にはオープンソースソフトウェアOQTOPUSを公開し、このソフトでのクラウド接続・運用を開始しています。

・「世界最大規模!量子コンピュータ・クラウドサービス向けの基本ソフトウェア群をオープンソースとして公開・運用開始」
 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2025/20250324_1

<「純国産機」について>
 現在、日本国内で稼働している量子コンピュータの初号機、2号機、3号機はすべて、一部に海外製造品を使用しています。量子コンピュータを自製する技術を日本ですべて保持し、また主要部品すべてを国産でそろえた「純国産機」の誕生が望まれていました。
 今回、共同研究を行う株式会社アルバックならびにアルバック・クライオ株式会社が開発した希釈冷凍機がQIQBに設置され、キュエル株式会社が開発した新型制御装置も設置されました。これは、日本初の純国産量子コンピュータとなります。量子ビットは理研から提供されます。これは、国産3号機に用いられていた64量子ビットチップを拡張した144量子ビットチップです。万博での使用の際にはそのうちの一部となる数十量子ビット程度を配線します。量子ビットチップとの接続確認が完了すれば、OQTOPUSをインストールし、クラウドからのアクセスが可能になります。8月14日からの企画展までに安定稼働を実現します。

◆用語解説
*1 量子コンピュータ
 量子力学の原理に従って動作する量子ビットを情報の最小単位として計算を行うコンピュータ。従来のコンピュータにはない量子重ね合わせや量子もつれを利用することで、分子中の電子状態などの量子的な振る舞いを効率的にシミュレーションすることや機械学習、素因数分解など、さまざまな問題を高速で解けると期待されている。
・参考:
●大阪大学 究みの StoryZ「量子コンピュータの実用化は2030年?」
 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2023/nl89_research02
●あなたと量子~"新鋭"のスペシャリテ~
 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/feature/specialite_002n
●量子コンピューターの実用化で、高度な社会問題を解く。実機にアクセス可能、確かな手応えが大阪大学に。
 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/feature/specialite_002n

*2 量子もつれ(エンタングル)
 量子もつれした状態とは、二つの量子ビット(粒子や光子、超伝導回路などで構成される)のうちの一方の状態を観測した際に、もう片方がその量子ビットの状態と必ず逆の状態が現れるような強く相関した状態のことで、古典力学や古典電磁気学では説明できない状態。

*3 希釈冷凍機
 質量数が異なる2種類のヘリウム(ヘリウム4とヘリウム3)が混合されている状態で生じる吸熱効果を利用して、10ミリケルビン(約-273℃)まで温度を下げる冷凍機。

*4 制御装置
 量子コンピュータは大きく分けて、量子ビットチップ、希釈冷凍機、制御装置、そして、ソフトウェアから構成される。制御装置はソフトウェアからの命令に基づき、量子ビットが理解できる信号に変換する装置を指す。超伝導量子ビットではマイクロ波によって操作・観測されるため、制御装置はマイクロ波信号を処理する装置となる。

*5 超伝導量子ビット
 超伝導材料を用いた電子回路上で、ジョセフソン接合というトンネル接合素子を用いて量子ビットを実現する量子コンピュータの方式。量子ビットの「0と1」を表すエネルギー差のスケールが小さいため、10ミリケルビン(約-273℃)まで冷却して、熱雑音を抑える必要がある。

*6 国際量子科学技術年
 1925年、ハイゼンベルグが発見した行列形式の量子力学の理論に始まりまとめられた新たな物理学である「量子力学」が誕生してから、今年で100年を迎えた。2024年6月7日、国連は2025年をユネスコの「国際量子科学技術年(IYQ)」とすることを宣言した。阪大QIQBはIYQの日本で最初の公式パートナーに就任している。
 https://qiqb.osaka-u.ac.jp/newstopics/pr20250128
 量子力学誕生100年を迎えた「量子」をテーマにした、4月14~20日の第66回科学技術週間における学習資料「一家に1枚 量子と量子技術~量子コンピュータまでの100年!~」をQIQB副センター長の山本俊教授が監修代表を務めた。
 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01496.html
 https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2025/04/01003

*7 3号機
 2023年3月27日、理研にて国産超伝導量子コンピュータ初号機が稼働し、同年10月5日に富士通株式会社が理研と共同して2号機の開発に成功、同年12月22日、QIQBで3号機が稼働した。

*8 OQTOPUS
 オープンソースソフトウェア(OSS)とは、ソースコードが公開されており、誰でも自由に利用できるソフトウェアのこと。従来コンピュータではLinuxを初めとしてさまざまなOSSが根幹を支えている。量子コンピュータのソフトウェアには、ユーザーがプログラミングしやすくするもの、量子ビットの制御を担うもの、クラウドでジョブの管理をするもの、さまざまなものが必要になり、ほとんどの量子コンピュータクラウドでは根幹部のコードは公開されていない。OQTOPUSは量子コンピュータ・クラウドサービスに必要となる基本ソフトウェアを一括して提供するものであり、世界最大規模の量子OSSとなる。

◆特記事項
 量子コンピュータ「3号機」「純国産機」の研究開発は、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)、科学技術振興機構(JST)ERATO「中村巨視的量子機械プロジェクト(研究総括:中村泰信)」、同 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)、同 ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標6、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期 「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」によって実施されました。

【根来教授のコメント】
 阪大に設置された量子コンピュータは多くの国内企業の技術が結集されたものです。そのような最先端のマシンの性能を最大限に引き出して、その実力ならびに仕組みを一般の市民にお伝えできたらと思っています。
 量子コンピュータや量子もつれ(エンタングル)は非常に複雑なものですが、自分でアクセスして大規模に動いているまさにその瞬間を目撃することで、より深い理解が得られるのではないかと考えています。アートの専門家と協力しながら、より多くの来場者にエンタングルを感じていただけるようなイベント・展示にしたいと考えており、そのためにも8月まで性能向上に努めていきたいと思います。



(関連記事)
・大阪大学QIQBが「国際量子科学技術年(IYQ)」の日本初の公式パートナーに就任【量子力学のはじまりから100年】(2025.01.29)
 https://www.u-presscenter.jp/article/post-55494.html


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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組織名
大阪大学
ホームページ
https://www.osaka-u.ac.jp/
代表者
西尾 章治郎
上場
非上場
所在地
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-1

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