大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、ストレスによる毛髪への悪影響の軽減を目的に、様々なヘアケア研究に取り組んでいます。今回、ボタンピエキスが、ストレスの一つである酸化ストレスにより低減する、毛髪のハリ・コシに関与する因子の遺伝子発現を増やすことを新たに見出しました。今回の研究成果により、日常的にストレスを受ける毛髪に対して、ボタンピエキスがその悪影響を軽減し、強い黒髪を維持する可能性が示唆されました。
日常生活において、紫外線、染毛などの化学的ストレス(酸化ストレス等)や、摩擦、熱などの物理的ストレス、精神的ストレスなど、毛髪は様々なストレスを受けています。当社はこれまで、酸化ストレス等が原因で起こる、毛髪への悪影響の一つである「白髪」に対して、マイトリガーゼの発現を高める成分であるボタンピエキスなどによる白髪改善効果を確認してまいりました(※1)。また、この酸化ストレスは白髪のほかにも、毛髪の成長を妨げたり、頭皮の炎症、毛髪のハリ・コシ低下などを引き起こしたりする原因として知られています。当社はさらに、ボタンピエキスの「毛髪のハリ・コシ低下」に対する作用を確認するため、毛髪のキューティクルに存在する「ケラチン関連タンパク質5(KAP5)」(※2)に今回着目しました。
【研究成果】
1.ボタンピエキスは酸化ストレスにより低減する因子の一つ、「ケラチン関連タンパク質5(KAP5)」関連遺伝子の発現を増加させる
2.ボタンピエキスに、ブラックリバースペプチド1・タウリンを組合せるとさらに発現を増加させる
■研究概要:ストレスによる毛髪への悪影響の一つ、「毛髪のハリ・コシ低下」に関与する因子に対する作用を確認
当社はこれまで、毛髪への悪影響の一つである「白髪」に対して、マイトリガーゼの発現を高める成分であるボタンピエキスとブラックリバースペプチド1の組み合わせによる白髪改善効果を確認してまいりました(※1)。
今回の研究では、ボタンピエキスの「毛髪のハリ・コシ低下」に関与する因子に対する作用を確認するため、毛髪のキューティクルに存在する「ケラチン関連タンパク質5(KAP5)」に着目し、その関連遺伝子の発現を評価しました。このKAP5関連遺伝子は、キューティクルが作られる場所である
毛根部での発現量が低減すると、そこから生えてくる毛髪のハリ・コシなどが低下することや、酸化ストレスによって発現量が低減する可能性が報告されています1,2)。
そのため、この因子の遺伝子発現を増やすことが、ストレスによる毛髪への悪影響を軽減し、強い毛髪を維持するためのアプローチの一つと考えました。
■研究成果:ボタンピエキスは酸化ストレスにより低減する因子の一つ、「ケラチン関連タンパク質5(KAP5)」関連遺伝子の発現を増加させる
毛根部を構成する細胞群の一つ、毛包上皮細胞を用い、各成分がKAP5関連遺伝子の一つであるKAP5.1遺伝子の発現に与える作用を評価しました。
その結果、ボタンピエキスにKAP5.1遺伝子の発現を有意に増加させる作用があることを初めて見出しました。さらに、ブラックリバースペプチド1、タウリン(※3)を組合せることで、ボタンピエキスの作用が有意に高まることを確認しました(図2)。
■まとめ
今回のヘアケア研究では、毛髪への悪影響の一つである「毛髪のハリ・コシ低下」に着目し、ボタンピエキスが酸化ストレスにより低減することが知られている因子の一つ、KAP5関連遺伝子の発現を増やすことを新たに見出しました。また、ボタンピエキスに、ブラックリバースペプチド1・タウリンを組合せるとさらに発現を増加させることも確認しました。ボタンピエキスを始め、これらの成分は日常的にストレスを受ける毛髪に対して、その悪影響を軽減し、強い黒髪を維持する可能性が示唆されました。
当社は、生活者の豊かな暮らしのアップデートが実現できるよう、今後も「生えるを科学、大正製薬のヘアケア研究」をモットーに、毛髪悩みを科学的に解明し続けるヘアケア研究を続けてまいります。
参考文献
1) 相馬勤ら. Fragrance journal. 2010;38(2):27-32.
2) 江浜律子ら. J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 2018;52(1):16-23.
【補足】
※1:
マイトリガーゼ:Mitochondrial Ubiquitin Ligaseの略称。ミトコンドリアの形態制御や品質管理などに関わる因子。毛包を構成する毛包上皮細胞において、マイトリガーゼの発現低下が、白髪などの髪のエイジングにつながると示唆されている。
ボタンピエキス:ボタン科・牡丹の根の皮から抽出されたエキス。過去に実施した素材スクリーニングにより、毛包上皮細胞のマイトリガーゼの発現を高めることを見出した。
◇マイトリガーゼの発現を高める成分ボタンピエキスに関する過去のリリース:
2021年3月15日発表リリース
MITOL発現促進作用による白髪抑制の可能性 -牡丹(ぼたん)由来エキスに毛包のミトコンドリア機能を高める作用を発見-
https://www.taisho.co.jp/company/news/2021/20210315000746/
ブラックリバースペプチド1:毛髪の色の素となるメラニンの生成促進や、酸化ストレスを低減させる作用が知られているペプチド。白髪の改善に有用であることが示唆されている。
◇マイトリガーゼの発現を高める成分ボタンピエキスとブラックリバースペプチド1に関する過去のリリース:
2021年7月15日発表リリース
世界初、毛髪アンチエイジングに作用する新たな成分の組み合わせをネイチャーラボ社との協業で発見-「MITOL活性化成分:ボタンピエキス」×「ネイチャーラボ社:ブラックリバースペプチド1」-
https://www.taisho.co.jp/company/news/2021/20210715000804/
2022年7月13日発表リリース
「ボタンピエキス」×「ブラックリバースペプチド1」の白髪改善効果を新たに臨床試験で確認
https://www.taisho.co.jp/company/news/2022/20220713001056/
2022年10月24日発表リリース
ボタンピエキスとブラックリバースペプチド1の組み合せによる白髪改善メカニズムを新たに解明-世界最大級の化粧品技術研究発表会「国際化粧品技術者会連盟学術大会」で発表-
https://www.taisho.co.jp/company/news/2022/20221024001136/
2022年12月13日発表リリース
白髪改善(および黒髪の維持)研究の成果を世界最大級の毛髪学会で発表
https://www.taisho.co.jp/company/news/2022/20221213001185/
※2:
KAP5:ケラチン関連タンパク質5(Keratin associated protein 5)。毛髪の表面を覆うキューティクルを構成する分子の一つで、毛髪のハリ・コシに重要な因子。キューティクルが作られる場所である、毛根部での発現量が低減すると、そこから生えてくる毛髪のハリ・コシなどが低下することが報告されている1)。
※3:
タウリン:毛髪のハリ・コシ向上のための成分の一つ。その効果は、毛髪内部への作用によるものと考えられているが、今回は、毛髪表面のキューティクルに対し、毛髪のハリ・コシを左右するKAP5への作用に着目した。