2015年5月19日
<国境なき医師団(MSF)とDNDiが5月11日スイス、ジュネーブで発表したプレスリリースの和訳です。>
国境なき医師団(MSF)とDNDiは、緊急の国際医療ニーズに向け
生物医学研究開発(R&D)基金ならびに機構の設立を働きかけています
[ジュネーブ、スイス - 2015年5月11日] 国境なき医師団(MSF)、Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)など、著名な国際医療専門家集団*が、エボラ出血熱、抗菌薬耐性などの新しい感染症および製薬市場で顧みられない多くの疾病に対する革新的な医薬品や治療法の不足を解消するために、国際的な医療研究開発(R&D)基金ならびに機構の設立について働きかけました。この働きかけは、今週の世界保健総会(WHA)および6月のG7サミットを前に、これらの公衆衛生上の課題が政治的に注目されていることに呼応したものです。
本日(5月11日)、PLOS Medicineに発表された記事において専門家たちは、研究開発のギャップを埋める昨今の提案は非常に断片化しており、研究開発のプロセスにおいては、手ごろな価格、アクセス、効率性の問題に適切に対処できていない、と論じています。この記事の著者には、MSFとDNDiの専門家のほか、欧州、中国、インド、南アフリカの公的または民間研究機関、政府官僚、非政府組織、学術グループが含まれています。
DNDiの最高責任者であるベルナール・ペクール(Bernard Pecoul)医師は、次のように述べています。「西アフリカの危機が1年以上も続いているのに、エボラ出血熱の治療法やワクチンは実験的な域を出ず、新しい抗菌薬の開発は進んでいません。他の顧みられない病気については、診断、治療、ワクチンが時代遅れであったり、高価であったり、あるいは実在しないかです。このようなギャップを埋めるために様々な取り組みが議論されていますが、そのこと自体が、緊急に必要とされる新たな医療技術の確保に向けた、研究開発促進の努力を、さらに断片化してしまう恐れがあります。統合されたアプローチが極めて重要です。」
著者らは、慢性的な研究開発への投資不足に悩む、すべての疾病分野に対応する「傘の骨組み」となる基金ならびに機構を提案しています。このような「基金の蓄え」は、既存の資金提供ルートを補い、政府だけでなく他の資金提供者からの長期的で持続可能な支援を確保すると期待されます。所有および監督するのは世界保健機関(WHO)などの政府間機関と緊密に連携した政府であるべきで且つ民間ならびに慈善組織や市民社会のステークホルダーとしての関与も必要です。世界エイズ・結核・マラリア対策基金(the Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)、Gavi‐ワクチン同盟、(Gavi‐The Vaccine Alliance)、 UNITAIDなど、発展途上国における治療ならびに予防プログラムの普及を目的とした既存の多国間基金がモデルとして想定されます。
国境なき医師団(MSF)必須医薬品キャンペーンの最高責任者であるマニカ・バラセガラム(Manica Balasegaram)医師は、次のように述べています。「現在の誤った研究開発システムは、独占や高値に依存し、商業市場パラダイムの枠外にいる人々を考慮していません。必要なのは、これを是正する公的なリーダーシップです。疾病ごとの研究開発基金ならびに機構を無秩序に寄せ集めるのではなく、ニーズに基づいた革新に集約してこそ、患者に医薬品や治療を公正に施すことができるのです。」
著者らは、提案された基金や機構が、研究開発における優先順位の決定、監視、調整に対して独立したアプローチを取り、オープンナレッジイノベーション、公正なライセンス供与、製品の最終価格を、研究開発コストから切り離すという原則に従う必要があると論じています。
PLOS Medicineの記事:
この記事に関して言及する場合はオープンアクセスジャーナルのPLOS Medicineと記載してください。その場合は無料です。
http://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1001831
*著者のリスト:
Manica Balasegaram, Access Campaign, Medecins Sans Frontiers, Geneva, Switzerland
Christian Brechot, Institut Pasteur, Paris, France
Jeremy Farrar, Wellcome Trust, London, UK
David Heymann, Centre of Global Health Security, Chatham House, London, UK
NIrmal Ganguly, Jawaharial Institure of Postgraduate Medical Education & Research, Puducherry, India
Martin Khor, South Centre, Geneva, Switzerland
Yves Levy, INSERM, Paris, France
Precious Matsoso, Department of Health, Pretoria, South Africa
Ren Minghui, Department of International Cooperation, China National Health and Family Planning Comission, China Ministry of Health, Beijing, People’s Republic of China
Bernard Pecoul, Drugs for Neglected Diseases initiative, Geneva, Switzerland
Liu Peilong, Department of Global Health, School of Public Health, Peking University, Peking, China
Marcel Tanner, Swiss Tropical and Public Health Institute, Basel, Switzerland
John-Arne Rottingen, Norwegian Institute of Public Health, Norway, University of Oslo, Norway, Harvard T.H. Chan School of Public Health, Boston, Massachusetts, USA
下記の著者にコメントを求めることは可能です:
Manica Balasegaram, Bernard Pecoul and John-Arne Rottingen
お問合せは以下の広報担当者にお願いします:
Sian Bowen (DNDi-Geneva): Mobile: +41 79 932 42 68. sbowen@dndi.org
Ilan Moss (DNDI- North America): Mobile: +1 646 266 5216 imoss@dndi.org
Michelle French (MSF Access Campaign): Mobile +1 646.552 4600 michelle.french@newyork.msf.org
【DNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative】:1990年代後半、発展途上国の現場で医療活動に従事していた国境なき医師団のチームは、顧みられない病気に苦しむ患者を治療できないことに苛立ちを募らせていました。患者の治療に使用する医薬品の効果がなかったり、強い副作用があったり、あるいは製造中止になって使用ができないなどの問題があったためです。そこで、国境なき医師団は、1999年に受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、患者のニーズを重視して、顧みられない病気に対する治療薬の研究開発(R&D)に取り組むための革新的な組織の設立に充てることに決定し、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利財団として2003年7月に正式に発足しました。DNDiはヨーロッパを中心とした多くの政府機関および私設財団から資金援助を受けて活動しています。www.dndi.org/
【DNDi Japanについて】
DNDi Japanは、2003年に日本の活動を開始し、2009年に特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。www.dndijapan.org/
- 本件に関するお問合わせ先
-
DNDi Japan
DNDi Japan 広報担当:松本眞理
160-0023:東京都新宿区西新宿8-14-24西新宿KFビル704
TEL:03-4550-1195 FAX:03-5937-6977
E-mail:mmatsumoto@dndi.org