弘前大学(青森県弘前市)理工学研究科の浅田秀樹教授(同大宇宙物理学研究センター長)らの研究グループは、音における「うなり」と類似の現象が、複数の巨大ブラックホール連星由来の重力波の観測で起こり得ることを理論的に示し、新たな観測予想を与えました。この研究で予想される「重力波うなり」が将来の観測で見つかれば、「未知のナノヘルツ重力波の起源が『インフレーション』なのか『巨大ブラックホール連星』なのか」という宇宙物理学における重要課題に対する答えに迫れることになります。本研究成果は査読付き雑誌『Journal of Cosmology and Astroparticle Physics』へ2025年10月15日(欧州中央時間)に掲載されました(論文の筆頭著者は同大大学院生)。
■本件のポイント
・弘前大学大学院生らの共著論文が、評価が高い国際査読誌に掲載されました。
・巨大ブラックホール連星に関する新しい観測法を理論提案しました。
・宇宙初期のインフレーション仮説(未解明の現象)の検証にも関連します。
■本件の概要
『Journal of Cosmology and Astroparticle Physics(略称JCAP)』は、当該分野において高い評価を受ける(インパクトファクター値が5.9)査読付き雑誌です。今回、弘前大学・理工学研究科の浅田秀樹教授(宇宙物理学研究センター長)らの研究グループの成果(論文の筆頭著者は同大大学院生)が、JCAPに掲載されました(欧州中央時間、2025年10月15日)。さらに、JCAP編集部が当該論文を掲載論文のうちでも重要なものとして選出し、同日、プレスリリース(英文)が世界のメディア向けに発信されました。
【URL】
https://www.eurekalert.org/news-releases/1101471
本研究成果と先行研究との決定的な違いは、新しい観測可能性を提案したことです。これまで、宇宙初期のインフレーション期に発生した重力波と巨大ブラックホール連星由来の重力波を区別するのが大変困難だと考えられていました。ここで、「重力波」とは、アインシュタインの一般相対性理論に基づいて、時間と空間の歪みが伝わる現象です。2015年に米国の研究グループが重力波の直接検出に成功し、その2年後にノーベル物理学賞が3名の当該研究者に授与されています。今回の論文は「ナノヘルツ重力波」とよばれる、波長が数光年(つまり、地球から近くの恒星までの距離に匹敵する)にも及ぶ非常に長い波動を研究対象とします。
本研究は、音における「うなり」と類似の現象が、複数の巨大ブラックホール連星由来の重力波の観測で起こり得ることを理論的に示し、新たな観測予想を与えました。本研究で予想される「重力波うなり」が将来の観測で見つかれば、「未知のナノヘルツ重力波の起源が『インフレーション』なのか『巨大ブラックホール連星』なのか」という、宇宙物理学における重要課題に対する答えに迫れることになります。
▼本件に関する問い合わせ先
弘前大学
住所:青森県弘前市文京町1番地
TEL:0172-39-3012
FAX:0172-37-6594
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/