【東芝デバイス&ストレージ】変換装置の高電圧化および小型化に貢献する高遮断耐量・高短絡耐量を有する6500V定格圧接型IEGTチップを開発

2026-6-15
東芝デバイス&ストレージ株式会社


変換装置の高電圧化および小型化に貢献する高遮断耐量・高短絡耐量を有する6500V定格圧接型IEGTチップを開発

 当社は、6500V定格において高い遮断耐量[注1]と短絡耐量[注2]を両立したトレンチ型第2世代IEGT[注3]チップを開発しました。今回開発した技術は、従来の4500Vと比べて6500Vへと高電圧化することで、同一出力電圧における素子の直列接続数の削減を可能にし、装置の小型化および簡素化に貢献します。なお、当社は直流送電システムやSTATCOM[注4]、産業用モータードライブ装置などの高電圧変換装置向けに、本チップを搭載した6500V定格の圧接型IEGT (PPI)[注5]を製品化しました。

 近年、地球温暖化対策の一環として再生可能エネルギー (以下、再エネ) の導入が拡大しています。これに伴い、発電地点と消費地の距離が離れているケースが増加し、長距離送電や大容量化を実現する技術として直流送電システムの導入が進んでいます。また、再エネ導入の拡大に伴い、電力系統の強化も進められており、STATCOMの導入も進んでいます。直流送電システムやSTATCOMなどの高電圧変換装置では、パワー半導体素子を直列接続して使用しますが、装置構成の簡素化や小型化のため、適用される素子の定格電圧を高め、直列接続数を削減することが期待されています。

 これまで当社は4500V定格のPPI製品を量産してきましたが、6500V定格においては、より高電圧での動作を求められることから、遮断耐量や短絡耐量を確保することが課題となっており、素子内部のキャリアー (電荷) の流れを制御する必要がありました。また、電圧をかけ続けるバイアス試験において、耐圧が変動する課題への対応も求められていました。

 今回開発した6500V定格IEGTチップ (図1) では、セル構造において、電位が不安定になりやすいフローティング領域を排除しショートさせた構造 (ダミーセルショート構造) を採用するとともに、ダミートレンチ間のメサ幅 (電流が流れる領域の幅) の最適化や、Pベース層直下へのNバリア層 (キャリアーの流れを制御する層) の導入を行いました。これにより、キャリアーの流れを最適化し、電流遮断時の電流分布を均一化することで、高電圧動作時においても安定した遮断特性および短絡耐量を実現しました。また、導通損失[注6]とスイッチング損失 (ゲートのオン・オフ時に発生する損失) のトレードオフを改善していることを確認しました (図2)。

 さらに、終端部には、電界を分散するガードリング層および半絶縁膜を用いた新たな終端設計を採用し (図3) 、6500V以上の耐圧を確保しています。また、半絶縁膜とシリコン界面のプロセス条件を最適化することで、従来見られたバイアス試験後の耐圧変動を抑制し、安定した耐圧特性を実現しました (図4) 。

 今回開発したチップは、試験電圧4500Vでの遮断試験と短絡試験を実施し、高電圧が求められる用途への対応が可能であることを確認しました。当社は、本チップを搭載した6500V/2000A定格の圧接型IEGT「ST2000JXH35A」をこのたび製品化しました。本製品を採用することで、直流送電システムの素子の直列段数を、4500V定格素子と比較して約33%削減[注7]でき、装置の軽量化および小型化に貢献します。今後も、高電圧変換装置向けの圧接型 IEGTの開発を進め、ラインアップを拡充していきます。

 本技術の詳細を、6月9日から11日までドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワーエレクトロニクスの国際展示会・国際会議「Power Conversion and Intelligent Motion (PCIM) Europe 2026」において発表しました。

図1. 従来構造 (左図) と今回開発したトレンチ型第2世代IEGT (右図) の素子構造比較

図2. 従来と今回開発したトレンチIEGTの導通損失 (VCE(sat) ) とターンオフ損失 (Eoff) の比較 (当社調べ)

図3. 今回開発したIEGTの終端構造

図4. バイアス試験前後の耐圧変動の比較 (当社調べ)

[注1] 遮断耐量 : スイッチング時に電流を安全に遮断できる能力。高遮断耐量 : 遮断試験電圧 VCC=4500Vにおいて評価。
[注2] 短絡耐量 : 短絡 (ショート) が発生した際に、素子が破損せずに耐えられる能力。高短絡耐量 : 短絡試験電圧 VCC=4500Vにおいて、最大短絡耐量 (tpsc) 10µs。
[注3] IEGT: Injection Enhanced Gate Transistor (電子注入促進型絶縁ゲートトランジスター) の略で、IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor) のエミッターの素子構造を最適化し、高耐圧化に伴う急激なオン電圧の増大を改善した素子のこと。
[注4] STATCOM: Static Synchronous Compensatorの略。自励式無効電力補償装置のことで、電力系統における電圧安定化と無効電力補償を目的とした装置。
[注5] PPI: Press Pack IEGTの略。IEGTチップを搭載した圧接型のパッケージ。
[注6] 導通損失 : 電流が流れている状態で発生する電力損失。
[注7] ±500kVの直流送電システムでの使用を想定し、各デバイスの定格に応じた動作電圧条件で比較。
6500V定格の素子を3000Vで使用する場合の必要な直列段数 : 334段
4500V定格の素子を2000Vで使用する場合の必要な直列段数 : 500段
直列段数が500段から334段になることで、約33%削減できると試算。当社調べ。

本チップを搭載した6500V/2000A定格の圧接型IEGT「ST2000JXH35A」の詳細については下記をご覧ください。
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/product/igbts-iegts/iegt-ppi/articles/6500v-press-pack-iegt-contributing-to-higher-voltage-and-size-reduction-for-dc-power-transmission-systems-and-industrial-motor-drives.html

* 社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。
* 本資料に掲載されている情報 (製品の価格/仕様、サービスの内容及びお問い合わせ先など) は、発表日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

* 東芝デバイス&ストレージ株式会社は株式会社東芝の100%子会社です。
以 上

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この企業の情報

組織名
株式会社 東芝
ホームページ
https://www.global.toshiba/jp/top.html
代表者
島田 太郎
資本金
20,086,900 万円
上場
東証プライム
所在地
〒105-8001 東京都港区芝浦1丁目1-1
連絡先
03-3457-4511

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